表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転落事故で入れ替わり!  作者: 春咲菜花
入れ替わり生活編
9/34

第九話    Gとのバトル勃発!?全てがカオスの晩御飯!!

前回までのあらすじ

はろ〜!合崎未来だぜ!私はなんやかんやで孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わり、同居まで始めた猛者だよ!玲斗とは乙女ゲームとか人生ゲームとかして遊んだりする関係になったんだけど、私がご飯を作ろうとしたら不安そうな顔したんだよ?肉じゃがを出したらすごい顔してさ、失礼すぎると思わない!?信じられないよ!

「肉じゃがです」

「は?肉じゃが?これが?」

「こういう肉じゃがもあっていいと思う」

「紫色の肉じゃがが?」


私の作った料理のこだわり。

それは、絶対にきれいな色にすることだ。

きれいなはずなのに玲斗は何でそんな顔をしているのか。

お母さんにも同じ顔をされたことがある。

味も見た目もいいのに、なぜかキッチンを出禁にされた。


「ほら、召し上がれ」

「………………いただきます」


すごく間が空いたのは気のせいかな?

玲斗は恐る恐るといった形で口まで肉じゃがを運んだ。


「見た目に反してうまい!食欲わかない色だけど」

「顔面から食わせてやってもいいけど?」


そう言って私が不敵に笑うと、玲斗は一瞬怯えたような顔をした。


「冗談に聞こえない」

「本気だよ」

「うあぁ」


玲斗は「うまい」といいながらもおぼつかない手で箸を持ち、肉じゃがを口まで運んでいる。

色だけじゃん。

色だけ。


「あのさ、肉じゃがが紫色なのもツッコミどころ満載なんだけど、米が青色ってどういうこと!?」

「水に着色料を入れただけだよ。白米ってのも……ね」

「だけじゃねぇんだよ!白米でいいんだよ!青米じゃねぇか気持ち悪い!」

「あれだね、デンプンに反応してる寿司薬だね」

「指示薬だよバーカ。握るな。で、その指示薬の名前は?」

「フェノールフタレイン溶液!」

「pHを調べんな!ヨウ素液だよ!お前がBBA溶液と間違えたやつな!」

「死ね!」

「言ったなお前、今死ねって言ったな!」

「言ったけどなにかぁ??」


玲斗は箸を置き、ため息をついてから私をじっと見た。

なんだろう。

自分の顔が綺麗すぎて固まったりしてるのかな?


「死ねっ!」

「唐突!」


いきなり死ねって言われたよぉ。

泣いちゃうよぉ。

玲斗は改まった様子で私に問いかけた。


「……なあ、ひとつだけ聞いていい?」

「なに?」

「なんでそんなに色にこだわるわけ?」

「美しい食卓は心の栄養になるんだよ。アートってやつ?」

「腹の栄養にはならねぇし、アートで人の胃袋色付けようとすんな」


そのとき、食卓の周りをなにか黒い物体が素早く通り過ぎた。

私は硬直した。


「今の……見た?」

「え?何かいた?」

()が……いる!」

「は?」


奴はこっちに戻ってきた。

やっぱりいる。

そんなに嫌ってわけじゃないけど、か弱い女子でも演じるか。


「いぎゃぁぁっぁぁぁぁぁああああああ!!!!」

「おわぁぁぁぁぁああああ!!何がいるっていうんだよ!離れろ!」

「無理無理無理無理無理無理!!」


私はわざとらしい演技で、椅子ごと後ろに倒れそうになりながら、玲斗の背中にしがみつく。


「お前の悲鳴で心臓止まるかと思ったわ!だから何がいたんだよ!!」

「黒くて細長くて足が六本くらいあるやつ!!壁とか色んなところに張り付くやつぅぅぅうう!!」

「ハエ?」


馬鹿玲斗!

勘が悪い!

使えない!

男のくせに!

心の中で玲斗をボロッカスに言いながら、私はやつを警戒した。


――カサッカサカサカサカサ


ここは叫ぶべきかな。


「いぎゃぁぁっぁぁぁぁぁああああああぁぁああああああぁぁああ!!」

「うぼぉぉぉぉぉおおおわぁああああああ!!」


玲斗が光の速度で私を押しのけて部屋の角へ逃げた。

私はその様子にかえって冷静になることができた。


「玲斗?」


玲斗は顔を背けた。

冷や汗びっしょりの玲斗の顔は真っ青だ。


「G苦手なの……?」


私がそう聞くと、玲斗はカタカタ震えながら頷いた。

まるで今にも泣きそうな顔だ。


「……お、お前……そんなに近くにいても平気なのか……?」

「いや……別に平気ってわけじゃないけど……相手が焦りまくってたら冷静になれるっていうか……」

「Gはそれでなんとかなる問題じゃねぇんだよぉぉぉおおお!!」


玲斗は壁にぴったり背中をくっつけながら、こっちを見るでもなく目線を泳がせていた。

まるでこの世の終わりを見たかのように。


「そ、そんな目で見るなよ……男のくせに情けないとか思ってんだろ?」

「うん!でも大丈夫!私は軽蔑したりしない。だって私はジェンダー平等の社会を目指してるから!!」

「嘘こけ!ハッキリ『うん』って言ったあとでジェンダー平等ほざくな!」


腹立つな。

また今度偽物のGのおもちゃでも買ってくるか。

私は台所の下からスプレーを取り出した。

赤と黒のパッケージ。

見るからに強そうなG専用兵器。


「ほら、これでシュッとすればいいから」

「お前実は平気だろ!」


何でバレた。


「てか無理!俺そういうのほんと無理!」

「男のくせに」

「おいジェンダー平等支持者。そもそも、お前にそいつを殺す強さがあるのか?」

「え?何言ってんの?私、紫の肉じゃがを作るような女だよ?強いに決まってるじゃん」

「自覚あったのな!?」


私はため息をついて、スタスタと食卓方面へ戻った。

そして奴が逃げ込んだと思われるあたりへ音を立てずにそっと近づく。


「行くよ……」

「が、頑張れ……!」


後ろから小さく聞こえる自分の声。

自分に応援されるって、こんなにも複雑な気持ちになるんだ。


――シュッ


「うぎゃああああぁぁああ!!逃げた逃げた!まだ生きてる!!」

「どこどこどこどこ!?」

「そこそこそこ!テーブルの下!!」


私はすかさず追撃した。

カサッと音がして、Gは冷蔵庫の裏へ逃げ込んだ。

まだ生きてるの!?


「しぶといなぁ……」

「すげえ……お前……勇者かよ……」

「今さら?」

「惚れそう」

「うわっ、きっしょ!今それ言う!?私、今殺意MAXでスプレー構えてるのに!?ドMなの!?」


玲斗がGにビビりすぎて正気を失ってる。

女々しい私を見てるのきついな。

中身は玲斗だけど。


――カサカサカサ


「ぴぃやぁぁあああああああ!!」


玲斗は部屋の角から離れて、私の背中に隠れた。

Gは冷蔵庫の裏から部屋のカドに逃げたのだろう。


「邪魔!!」


玲斗が邪魔すぎる。

そしてドタバタの末、ようやくGは成仏した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ