第八話 人生ゲームで人生決定!?地獄行きの玲斗の人生!!
前回までのあらすじ
やっぴ〜!合崎未来だよ!カクカクシカジカで、学年の人気者の川島玲斗と入れ替わった上に同居まで始めた私!いろんなゲームとかをして距離を縮めてたんだけど、お互いの苦手教科のテストの点数が悪すぎて、勉強する気になってたの!でも、インターホンが鳴って思わず私が出ちゃったの!どうしよう!?
私は玄関を開けた。
「え?あなた誰?」
やってしまったぁ〜。
そこにいたのは私の姉だった。
私と玲斗の血の気が引いた。
お姉ちゃんは少し考えるような仕草をしてから笑った。
「もしかして未来の彼氏!?」
「…………」
私は玲斗を見た。
玲斗は眉間にシワを寄せて、渋い顔をしている。
もう一度お姉ちゃんに向き合った私は決意を固めた。
「……はい!俺は未来の彼氏です!」
「おい!!」
「え〜!?本当!?」
「誤解です〜!!」
◇◆◇
玲斗はお姉ちゃんには伝えてもいいと判断したのか、事の発端を細かく話した。
「つまり、どこぞの映画の「入れ替わってる〜!」と同じ感じになってるのね?」
「お姉ちゃん、それコンプラ的に大丈夫?」
「平気でしょ〜」
お姉ちゃんは簡単に信じてくれたらしい。
私は身を乗り出してお姉ちゃんに顔を近づけた。
「何で帰ってきたの?」
「ここも私の家なんだけど?」
「知らん。彼氏に振られ……ダッ!」
「失礼なこと言わない」
お姉ちゃんは私の頭を思いっ切り叩いて、笑って言った。
そういえば、お姉ちゃんも暴君なの忘れてたな。
私は玲斗の方を見た。
あ、あの顔はデリカシーのなさに引いてる顔だな。
気にしないでおこう。
「で、なんでいるの?」
「お父さん達に頼まれたんだよ。おばあちゃんが入院したからたまに未来の様子を見に行ってくれって」
お姉ちゃんは玲斗を見て微笑んだ。
ん?
惚れたのか?
「玲斗くん」
お姉ちゃんは玲斗を手招きして近くに呼び寄せた。
そして、元私の耳に口を近づけて何かを話し始めた。
目の前でこういうことされるとモヤッとするな。
分かるかな?
目の前でコソコソされるのはちょっと嫌。
お姉ちゃんが玲斗の耳から口を離すと、玲斗の顔は真っ赤になっていた。
玲斗が赤くなる話……?
「エロ本の語り合い?」
「地獄に落ちなさい」
「マジで死ね」
「えぇ……」
流石に言い過ぎだよ。
泣くぞ。
「それじゃあ、私はもう帰るわね。玲斗くんがいるなら私は必要なさそうだしね」
お姉ちゃんは荷物を持って立ち上がった。
確かに玲斗がいるなら私が心配っていうのはなくなるもんね。
「じゃ、帰りまーす!あっ、未来。あの事、いつか話しなさいね。じゃ〜ね〜」
お姉ちゃんは笑って家から出ていった。
私は天を仰いだ。
「余計なお世話だよ」
「さて、未来。俺はお前とやりたいゲームがある。人生ゲームだ」
玲斗はどこから持ってきたのか分からない人生ゲームを私の前に置いた。
今の流れは勉強する流れだろ。
「一人でやって」
「んな無茶な。頼む!一回でいいからやってみたかったんだよ!」
その言葉から察するに、玲斗は一度も人生ゲームを人とやったことがあるのだろう。
私は半ば強引に人生ゲームをやらされる羽目になった。
「私から行くよ」
私はルーレットを回した。
止まったのは六だ。
コマを六マス進めた。
「なになに、小学生優等生コースか普通コースか……。私は優等生コース」
玲斗も六が出て、一緒の選択が出てきた。
「同じ方行っても面白くないし、逆行くわ」
玲斗は私とは逆の方にコマを動かした。
私はルーレットを回した。
また六か。
「なになに、百万円拾って交番に届けたらお礼に半分もらう。五十万獲得」
「ん?」
私はお金のトレーから十万を五枚取った。
次は玲斗の番だ。
玲斗はルーレットを回した。
「三マス……。二十万円つぎ込んだ競馬に負けた!?二十万円払う!?一千も持ってないんだが!?」
「借金だね」
「やっぱこの人生ゲームおかしい!小学生がが競馬やってるよ」
「やれー、そこだぁ」
「させぇぇええ!!じゃねぇ!おかしいだろ!」
玲斗、二十万借金。
私、五十万獲得。
「続けようか」
◇◆◇
――二十分後
私、百万二千五百円獲得。
玲斗、三十七万四千五百五十円借金。
「……」
「……」
「いや、おかしいだろ!!」
「負けを認めなよ。お前は、負けたんだ」
「腹立つ言い方すんな!」
玲斗の言葉に、私は腕組みして眉をひそめた。
「負けるもんか!まだゲームは終わってないし!」
「でも、あと十マスだよ?どうせ負けるのに、借金ばっかり増やしてどうするの?」
私はそう言いながらルートを回した。
四が出たから、四マス進める。
「えっと、過去に買った車を見つけた。価値が上がった車だったから売ったら百万円もらう」
私がお金のトレーから百万円を抜き取っている間に、玲斗はルーレットを回した。
五が出た。
「最高級靴で犬の糞を踏んだあげく、驚いてスマホをドブに落とす。その中に入っていた五千円も行方不明……」
「ブフッ」
スマホの中に入っていた五千円が行方不明とは。
多分五千円払えということだ。
本当に玲斗の人生は山山山山山谷谷谷谷谷ありの人生だな。
「……借金まみれが最高級靴履いてんじゃねぇよ!!」
「ラスト〜」
私はブチギレる玲斗をスルーしてルーレットを回した。
六マス。
「あっ、上がり」
「クソが!」
玲斗がルーレットを回した。
玲斗もゴールした。
結果
私、二百万二千五百円獲得。
玲斗、 三十七万九千五百五十円借金。
「大勝利!未来様の圧勝でございました〜」
私はソファにふんぞり返り、腕を組んで勝者の余裕を見せつけた。
玲斗はトレーに残った札を恨めしそうに見つめていた。
「絶対インチキだ……。俺の人生が借金まみれなわけがない……」
「安心して。現実だから」
「性格悪すぎるだろ」
玲斗が睨んでくるけど、負け犬の目には何の効力もない。
むしろ可哀想で笑えてくる。
さっきから「インチキ」だの言われているけど、私は何もしていない。
負け犬の遠吠えだ。
「あっ、そろそろご飯作らないと」
私は不意に時計を見て呟いた。
玲斗はその呟きを聞き逃さずに、不審そうなものを見る目をした。
「おい、お前の料理は食えるものになるんだろうな」
「ん?何?喧嘩売ってる?」
「……」
否定も肯定もしないって……。
私そんなに信用ならない?
そりゃあ、昨日は出前だったから私の料理知らないもんね。
私はドヤ顔で言ってやった。
「安心して!私の腕っぷし、見せてあげるよ!」
◇◆◇
食卓に用意された私が作った食事。
それに向かって冷ややかな目を向ける玲斗。
「……これは何だ」
玲斗が言った。
「肉じゃがです」
「は?」