第七話 テスト点数結構やばめ!!私とあなたの大戦争!!
前回までのあらすじ
こんちわ〜す!合崎未来だよ!私はなんやかんやあって学年内で孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わって同居まですることになったんだよね!乙女ゲーやキャラクター診断もして距離を縮めた?のかな?それで、よし入れ替わり生活頑張るぞ!って気合を入れたらまさかの玄関で友人と幼馴染に遭遇!?何とかその場を乗り越えたけど、次に待ってたのは玲斗の知ったかぶりだったんだよ!!
「ブーッ!!」
「川島!?」
知ったかぶりがえげつなさ過ぎて思わずお茶を吹いてしまった。
「ゲホッ!ゲホッ!」
やばい、変なところにお茶が入った。
私は小さく咳きながら床を拭いた。
「本当に分かってるの?忘れちゃったの?」
「嘘〜!未来ってアレ追ってなかったっけ?」
愛華からの追い討ちに玲斗は冷や汗をかき始めている。
なんて言うべきか迷ってるのか。
私も色んな意味で冷や汗をかいている。
玲斗、頼むから変なこと言うなよ。
「…………あー、うん!あのすごいやつだよね」
「ゴホッゴホッ!」
「川島?」
小さくしていた咳が面白さのあまりデカくなってしまった。
小さくしなければ。
「もー、どれのことか分かってないならいいなよ〜。ほら、私が作家だってこと」
「知ってたよ!!」
「グハッ!!」
「川島ー!!」
玲斗……。
汗ダラダラになりながら無理矢理笑っても無駄だよ。
知ったかぶりすぎる!
ひーっ!
面白すぎるー!
――キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン
あ、もう席に座らないと。
私は玲斗の席に座った。
先生が教室に入ってきた。
何だ?
あの分厚い封筒の束。
「ホームルーム始めるぞ」
「朝の挨拶をします。起立」
学級委員の声かけで、みんなが一斉に立った。
「礼。着席」
「今日は先週やったテストが返ってきた。机の上を問題用紙だけにしろ」
あっ、そぉ〜いえばそうだったよぉ〜な。
やばい、理科がやばい。
私は玲斗を見た。
玲斗もこちらを見ていた。
そして、口パスで何かを私に伝えてきた。
『まんべんなくみてやるからあんしんしろ』
「できるかぁぁああああ!!」
私は思わず立ち上がって叫んでしまった。
クラスメイト全員の視線が私に刺さる。
やって……しまった……。
玲斗が顔を伏せて震えている。
玲斗さん!?
あなた絶対笑ってますよね!?
あなたのせいですよ!?
「か、川島……?どうした……?」
「い、いや……。そ、空の鳥が!」
「鳥?」
「一緒に飛ぼうと誘ってきたんですが、できるわけなかったの……で……」
先生やクラスメイトは「ん?」って顔をしている。
「……bird(鳥)」
「ブフォッ!!」
私が英語で鳥と言うと、玲斗は思っきし吹き出した。
「ブッ……。何それ……」
誰かが言うと、教室中が笑い声で溢れた。
せ、セーフ?
いや、アウトか。
「川島。お前どうしたんだよ」
「変な川島くん」
「全くだ」
そう言いながらもみんなは大爆笑している。
ごめん玲斗。
また孤高の王子様の名に傷をつけちゃった。
まぁ、いいか。
元に戻ったら玲斗が何とかするだろ。
「じゃ、テスト返すぞ〜」
先生は番号順でテストを配り始めた。
一番である私の答案はもちろん一番最初に渡された。
私ではなく玲斗に。
そして、半分に折って見えないようにされた答案を玲斗はゆっくりと開いた。
「ブッフォ!!」
「合崎!?」
先生が心配したような声で玲斗を呼んだ。
あいつ笑いやがったぞ。
玲斗は他の教科も見ようと震える手で一番上にある答案を一番後ろに回した。
「ブハッ……ククッ……」
マジであいつよぉ!!
玲斗を見ていたら、先生が私の目の前にやってきた。
私は玲斗の答案を受け取ると、すぐさま開いた。
理科は九十五点か。
いや、問題は英語だ。
私は一枚答案をめくった。
「ブハッ!!」
「川島?」
「何でもありません……」
私はもう一度英語のテストの答案を見た。
「グフッ」
英語十五点……。
やばい。
笑いそう……。
◇◆◇
――放課後 未来の家
「てめぇ!!おいこらてめぇ!!なぁに人の答案見て笑ってんだおい!!」
「いやいや、それは玲斗氏も同じじゃん。でも、まさか私の理科の点数に負けるなんて。ブッフォ……いや、笑ってない笑ってない。咳だから……グフッ」
「思いっ切り笑ってんじゃねぇか!!」
私は爆笑しながら玲斗と話していた。
駄目だ、まともに話せる気がしない。
玲斗の英語のテストの点数は十五点、私の理科の点数は二十五点。
私が勝っているのだ。
玲斗は私の顔を不機嫌そうに見ている。
「ブハッ!もう駄目!!だははははははははは!!」
「笑うな!!」
しばらくしてからツボから抜け出した私はソファにぐったりと寝転びながら天井を見上げた。
「……あー、笑った笑った」
「お前、本当にいい性格してるよな」
「ありがと」
「皮肉だバーカ」
玲斗はキッチンに行き、冷蔵庫から麦茶を取り出した。
麦茶をコップに注ぎながら私を見た。
「でもまあ、未来が理科で25点取るとはな。明日隕石でも降るのか?」
「失礼。ていうか、英語で十五点って何?舐めてるの?」
私が言うと、苦虫を噛み潰したような顔をした。
よほど英語が嫌いなことは分かったが、点数になるととんでもねぇな。
「うるせぇよ。英語なんて日常で使わねぇだろ」
「十五点は使う使わない以前の問題だよ。玲斗言ってたよね?BBA溶液は基礎だって」
「BTB溶液な?まぁ、言ったな」
玲斗の指摘が突き刺さる。
またやってしまった。
「それはいいとして、英語なんて文法覚えるだけでしょ?何でできないの!?」
「お前だって理科は覚えるだけだろ!!なんで分かんないんだよ!」
「理科なんて人生で使いませーん!私は科学者になるつもりはないから!」
「俺だって外国行く予定ねぇよ!」
玲斗がついに声を荒げた。
いや、元々荒げてたか。
私は一息ついた。
「玲斗、落ち着いて。冷静に話し合おうよ!」
「元はと言えばお前が始めた物語だけどな」
「大丈夫、たとえ玲斗の英語の点数が十五点でも、玲斗の価値は何も変わらないよ!」
「死ねボケカス」
「ひっど!」
「……でもさ、未来」
玲斗は少し黙ってから言った。
やけに真剣な表情だ。
ハッ、まさか……!
こくは――
「お前が理科で二十五点ってのは、正直驚いたんだよ」
うん、知ってた。
玲斗に限って私に恋するなんてないって知ってた。
「急に何?」
「だって、お前理科苦手って言ってたじゃん」
「うん、それなのにこの点数。すごくない!?」
私は自慢げに言ってやった。
これは誇れるぞ!
玲斗に勝ったんだから!
「カンニングでもしたのか?」
「してないよ!カンニングは!」
「カンニングは?」
「あっ」
口を滑らせた私に玲斗は不敵な笑みを浮かべた。
背中に冷や汗が伝う。
「何をした?」
わぁ、私の美人すぎる顔が近くにあるぅ。
いい匂いするぅ。
私はハッと我に返った。
「選択肢問題はシャーペンを転がして決めました!グエッ!」
玲斗は私の頭のてっぺんを強くチョップした。
玲斗は笑顔で私に詰め寄った。
その手には答案があった。
答案を見せながら笑いかけてきている玲斗は怖い。
ブリザードが来てるし。
「通りで選択問題だけが合ってるわけだ。お前の運がここまでいいとは思わなかった」
「玲斗さん?大丈夫!英語の十五点は衝撃的すぎて笑ったけど、点数なんて一時的なものだし!」
「いや、励まされても……。まぁ、俺も英語は壊滅的だから、一緒になんとかしていくぞ」
「りょーかい!」
玲斗はなぜか立ち上がって二階に上がった。
話は終わったのかな。
――ドタバタ ゴッ!
「あぁぁぁぁあああああ!!」
なにか二階から断末魔が聞こえたような。
しばらくしてから戻ってきた玲斗はボロボロだった。
何があったのやら。
玲斗の手にはたくさんの問題集があった。
「勉強するぞー!」
やけに気合の入った声で言う玲斗は楽しそうだ。
「お、おー!」
――ピーンポーン
「あっ、誰か来た」
私は立ち上がって玄関に向かった。
誰が来たんだろう。
玲斗がハッとしたように急いで私の方に走ってきたけど、もう私は玄関を開けてしまった。
「お、おい!」
「え?あなた誰?」
やってしまったぁ〜。