第六話 助けてくれは聞きません!!私とあなたの入れ替わり生活!!
前回までのあらすじ
やっほっほ〜い!みんな!超絶美少女の合崎未来だよ!なんやかんやあって学園の人気者の孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わって同居まで始めた私!!家の案内も終わって乙女ゲームを一緒にやったんだけどバッドエンドしかないから飽きちゃったんだ。そこで玲斗がわたしの部屋も見たいといい出して、流れで「君が世界を救うなら」という小説のキャラクター診断をすることになったの。玲斗はオーリスタイプ!玲斗が引き当てたオーリスはどんなキャラなの!?
オーリスタイプ……。
「プッ」
「なんかやべぇやつか?」
玲斗は笑った私を見て、眉をひそめながら聞いてきた。
オーリスは色んな意味で人気なのだ。
ギャップ萌えする人が多数発生したキャラクター。
玲斗は首を傾げた。
私は本棚から『キミセカ』を取り出して、オーリスの自害シーンの挿絵を見せた。
「オーリスは暗殺者。オーリスは魔法学園でヒロインと出会い、恋に落ちる。ヒロインは幼馴染、いわゆる悪役令嬢にいじめられてたんだよね。で、ヒロインのためにヒロインを悪役令嬢を暗殺したんだよ。でも、心優しいヒロインは悪役令嬢を愛していたから、心を痛めてしまう。結局、自分の行いは間違っていたことに気づき、ヒロインを悲しませてしまったと自責して毒を飲んで死ぬキャラ」
「散々じゃねぇか」
「お似合いだね」
「はっ倒すぞ」
オーリスはヒロインのことになると周りが見えなくなるけど、普段は冷静な人物なんだよね
そのギャップに萌えた人が多かった。
「このキャラクターは今のギャップ王子の玲斗にぴったりだね」
「誰のせいだよ!」
「ちなみに私はアルトだったよ」
私はさっきの本をしまって、別の巻を取り出して、アルトの死亡シーンを見せた。
玲斗は渋い顔をした。
「……そいつは?」
「アルトはヒロインのいる国の隣国の王太子。アルトは留学先のアスクレイン王国の魔法学園でセシリアと出会い、想いを寄せる。ヒロインとヒーローが相思相愛だと知り、悪役令嬢の死亡後に騒ぎに乗じて自国に帰る。ヒロインは黙って国に帰ったアルトに怒るが、アルトは国に戻る途中で山賊に襲われて命を落とす。ヒロインは遅れて駆けつけたけど、アルトは瀕死だった。瀕死のアルトを見て、ヒロインは涙を流した。アルトはそこで想いを伝えるけど、奇跡なんて起きずに結局死ぬキャラ」
「死ぬキャラ多っ!!」
◇◆◇
――次の日
「おーはよっ!未来!」
「おはよう愛華!」
「おい愛華。いい加減未来離れしろよ?」
「嫌だね〜!未来と私は一心同体!離れるなんてとんでもない!ところで、何で未来の家からクールイケメン男子の川島くんが出てきたの?」
愛華と千佳が玲斗の姿をした私をみた。
実は、私と玲斗が家から出たタイミングが、愛華と千佳が私の家の前を通ったタイミングと被っちゃったんだよね。
「万事休す!」
「どしたの急に」
おっと、思わず言ってしまった。
我慢を覚えなければ。
玲斗からのブリザードが私に向かってくるからね。
「…………」
来てたー!!
思っきしブリザードしてたぁぁあああ!!
「えっと……。じ、実は俺の両親が未来の両親と友達なんだよな」
「それが何で未来の家から出てくる話になるんだよ」
「玲斗の両親が出張に行くから、私の家で引き取ることになったんだよ。ほら、私って実質一人暮らしだし」
玲斗が困った私をみかねて言った。
ナイス玲斗!!
口実もバッチリじゃん。
「てことで、よろしくな。愛華、千佳」
「え?何で私らの名前知ってんの?」
ヤベッ。
はい来た〜!
ブリザードが来た〜!
何で私にだけピンポイントでブリザードぶつけれるわけよ!
意味わかんないんだけど!
「ク、クラスメイトだろ?名前くらいは覚えてるよ」
「へぇ、律儀だね〜」
「サンキュー」
「……玲斗ってそんな喋るんだな」
やめて千佳。
それを言ったらブリザードがくるから。
「安心して喋れそうだったからな」
「警戒心強いんだ〜」
セーフ!
ガチ危ない!
「ねぇ、これを機に私達友達にならない?」
「友達……?」
愛華と千佳と玲斗が友達……。
勝手に決めて大丈夫なのかな。
私は玲斗を見た。
玲斗は少し考えてから私に近づいてきた。
「いいんじゃない?二人はいい人だし、玲斗も友達になったら?」
「やったぁ!孤高の王子様と友達になったよ!千佳!」
「よかったな」
愛華と千佳はルンルンで歩き出した。
私は玲斗と二人の後をついて行った。
「ねぇ、どういうつもり?」
私はこそっと玲斗に聞いた。
「こいつらはお前の友達だろ?一緒にいたいだろうし、俺もこいつらなら信用できる」
意外と優しいところもあるんだな。
それに、何だか私の友達と玲斗が友達になってくれて嬉しいな。
「何ニヤニヤしてんだ。気色悪い」
「玲斗の口の悪さはなんとかならないの?」
「お前の頭の悪さに比べたらマシだろ?」
「英語できない玲斗に言われたくない」
私達はそんな会話を繰り広げながら学校に向かった。
◇◆◇
「えっ!?孤高の王子様の川島くんに……!友達ができてる!!」
教室を開けた瞬間に入ってきたセリフはこれだ。
孤高の王子様って、誰が言い出したんだろう。
ちょっと似合わないかも。
「おっはよ〜!」
私のフリをした玲斗が大きな声で挨拶をした。
昨日の夜にできないとか言ってたくせに、できてるじゃん。
「あー、愛華、千佳、未来!おはよ〜」
中身が玲斗の私に駆け寄ってきたのは友達の花乃だ。
愛嬌があって天然なこの子は私の癒しである。
「ねぇねぇ、なんで未来達は孤高の王子様と登校してきたの?」
「川島と未来が同居した」
「千佳っ!!」
玲斗が弾かれたように千佳の肩を掴んだ。
おっと、いきなり下の名前呼びとは大胆な。
「同居?」
花乃が目を光らせた。
あー、ややこしいことになったな。
花乃は私と同じで、少女漫画や乙女ゲーが大好きなのだ。
「誤解を生むような発言は遠慮して!花乃!違うからね!?」
玲斗は焦りながらも口調を私っぽくして千佳と花乃に叫び散らかしている。
意識高いなぁ。
「え?そうなの?」
「話聞けよ!!」
千佳の発言に対して玲斗はキレッキレのツッコミを入れた。
おっと素が出たぞ!
私はそんなにキレッキレなツッコミはできない。
「川島くん!!」
「ハイ」
「詳しく!!」
「……ご、誤解されてるみたいだけど、俺と未来はそんな関係じゃねぇよ」
ちょっと嘘でもつこうかと思ったけど、玲斗から少しブリザードが来たからやめた。
マジで寒いからやめてほしい。
「誤解?」
「そうだよ!千佳が変なこと言ったけど、実際は私と玲斗の両親が友達で、玲斗の両親が長期出張に行くからうちに泊めてるだけだよ」
「え?そうなの?」
千佳がキョトンとした顔で玲斗に問いかけた。
「聞けよ!!」
おっと素が出たぞ。
私はそんなにキレッキレなツッコミはしないぞ?
全く何をしているんだか。
「れ、玲斗〜?そうだよね〜?私達は仕方なく同居してるだけで、別に自分達の意思はないよね〜?」
「え?うーん、どうだったかな〜?」
私はわざとすっとぼけた。
実は言うと、孤高の王子様と呼ばれている玲斗とは少し前から話してみたい気はしてたんだよね。
二年生の時も割と噂になってたし。
三年生で同じクラスになったのは予想外だったけどね。
ていうか気づかなかった。
同居を提案した理由はそれが四割で、言い訳で言ったやつが六割だ。
「え?何その含み!気になるじゃん!川島くん!!」
「お、おい!」
玲斗が焦ったように花乃に手を伸ばした。
大丈夫かな?
セクハラで捕まらないといいけど。
花乃は肩に触れられていることも気にせず、私の肩を強く掴んだ。
「詳しく教えて!!ネタにするから!!」
「ネタって何だよ!ネタって!」
「え〜、未来ってばとぼけないでよ〜。知ってるでしょ?私がアレなこと……」
花乃はわざとらしく含みのある言い方をした。
玲斗は対応に困って私の方をチラチラ見ている。
私は不敵に笑うだけで助け舟は出さない。
BBA溶液を散々バカにしてきた罰だ。
「み、未来……」
玲斗が私を肘で突いて助けを求めてきた。
私はニヤリと笑って玲斗を見た。
玲斗は全てを察して真っ青になっている。
さてと、そんな可哀想な玲斗を横目にお茶でも飲むかな。
私は持ってきていたペットボトルの蓋を開けて、お茶を飲み始めた。
「あ〜、アレね。オッケー、分かってるよ」
「ブーッ!!」
「川島!?」