第五十二話 またまたいじける玲斗さん!!とんでもハプニングが起きちゃった!!
「いやぁ、カンニング疑惑も無事に片付いたし、平和な日常が帰ってきましたな」
私は教室で呑気に足を組んで、椅子にもたれかかって言った。
霧やんもだいぶスッキリしたような顔をしている。
あの一件以来、私や霧やんの心はだいぶ軽くなった。
懸念すべき問題もなくなったし。
……玲斗がやさぐれていることを除けば。
「やっぱお前らデキてるだろ」
「また玲斗がめんどくさくなってる」
霧やんが私の横で体操座りしていじけている玲斗を見て、呆れたように言った。
あの一件に関しては玲斗を巻き込む必要はなかったから何も言わなかったんだけど、こうなるとは思ってなかった。
霧やんは落ち込む玲斗の頭を突いて遊んでいる。
「未来、どうする?」
「安心させるべきじゃない?」
「俺がやるの?これは未来がやるべきじゃない?」
えぇ……。
だって、私が玲斗を慰めたら今度は霧やんがいじける可能性あるもん。
絶対やなんだけど。
「未来、頼むよ〜」
「はぁ、どうなっても知らないよ?」
私は立ち上がって、体操座りする玲斗の前に行った。
玲斗は一向に私の方を見ない。
話をする気がないのかな。
「玲斗、何回言ったら分かるの?私は霧やんの顔も声も性格も全て好きじゃないから」
「あ、慰めるってそっちの方法?普通は『そんなことないよ。玲斗が世界で一番好きだから』とか言うところだろ」
「やだよ恥ずかしい」
「恥ずかしいのもやってやれよ。愛があるならできるだろ?」
「彼女いない暦=年齢は黙っててよ」
「まだ十四歳なんですけど!?」
そうそう、私達は十月三十一日をもって十三歳を卒業し、晴れて十四歳になったのだ。
だとしても双子の私に負けてる時点で終わりでは?
そう思ったけど口には出さなかった。
私なりの優しさだ。
さて、玲斗をもっと慰めないと。
「霧やんの悪いところ十個言えって言われたら言えるよ?何ならやろうか?」
「やるな?絶対やるなよ?玲斗?」
霧やんは玲斗に視線を送った。
玲斗は少し目を輝かせて「悪いところ十個……?」と言っている。
おっとこれはかなりいいアイディアだったのでは?
「玲斗ー!?頼む!これ以上俺のメンタルと尊厳を傷つけるようなことはしないで!!」
「はっ、そんなもん元からないでしょ」
「あってないようなものだからな」
「酷い!!」
そうは言うけど、私に玲斗を慰めろって言ったの霧やんだからな。
私はどうなっても知らないっていったし、自己責任だな。
「勉強しない、厨二病で痛々しい、成績が悪い癖に気に留めない、すぐに調子に乗る、人の楽しみに取っておいたプリン食べる、常識がない、たまに鏡の前でカッコつけてる、好きな人教えてくれない、ウザい、最近太ったのにポテチ食べるのやめない」
私が言い終えると、少し沈黙が流れた。
「ぶふっ」
その沈黙を破ったのは玲斗だった。
霧やんを慰めもせずに一番最初に口から出たのは、吹き出す音だった。
元気になったのか、そのまま笑い転げている。
「ぎゃははっ!霧やんの厨二病ってそこまで進行してたの!?鏡の前でカッコつけるって……腹いてぇよ!!」
「おのれ玲斗め……」
「この間お風呂の中ですごいキメたような声でイケナイ太陽歌ってたよね」
「未来!!」
恥ずかしそうに顔を赤くして私に文句言う霧やん。
非常に面白かったな。
お風呂で歌ったら外に丸聞こえだって知らないで、カッコつけながら「イケナイ太陽なーなーなーなななーななー」って言ってるの。
霧やんは私を睨みつけている。
でも、口パクで「カンニング」って言うとすぐに頬を引きつらせてやめた。
「で、元気になった?」
「おう!めっちゃ元気!そんなにスラスラ悪口でてくるってことは白だな!」
どんだけ信用ないねん、私達。
ていうかチョロいな。
「今なら教室走り回れる!」
玲斗はそう言って教室を走り始めた。
次の授業は体育で、教室には人がいない。
みんな先に外に行っているのだ。
「玲斗ー、走るのはいいけど昨日ワックスがけがあったみたいだから滑らないようにしてよー!」
「分かって――」
玲斗が何かをいいかけた時、玲斗は滑った。
かなり盛大に。
フラグ回収早っ。
そして、最悪なことに玲斗が滑ったのは窓際だった。
「危ないっ!!」
「うわっ!!」
玲斗はなんとか窓に直撃する前に止まろうと、両手を前に突き出した。
ふう、あれならなんとかなるだろう。
――ガッシャーン!!
窓ガラスが割れる音が響いた。
玲斗は真っ青になって、その場から動けなくなっている。
……何が起きた?
私と霧やんは急いで廊下を見た。
そこには、レールから外れた窓ガラスだったものがあった。
ガラスは粉々である。
「あちゃー、やっちゃったか」
「他人事だな!!」
「他人事ですもの」
「未来」
霧やんが私の制服の袖を引っ張った。
あー、そっか。
「じゃ、玲斗。後は頑張って」
「は?」
私と霧やんは猛ダッシュで教室から出た。
「何の音だ!!」
「いや、先生っ!これはちがくて……」
「あーいーさーきー!!」
「先生ーー!!」
遠くから玲斗と担任の声が聞こえる。
まぁ、私達は何もしてないし。
玲斗の自業自得だな。
私達は知らなかった。
この日の晩ご飯担当が玲斗であること。
そして、私達は玲斗を見捨てたことを深く後悔することになるとを。




