表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転落事故で入れ替わり!  作者: 春咲菜花
騒がしい日常編
50/58

第四十七・五話  八方美人は報われない!?川島玲斗の過去と未来!!

前回までのあらすじ

やあ、みんな。川島玲斗の兄の川島翠だよ。前回までは合崎未来ちゃん視点で話が進んでいたけど、今回は俺視点の物語が書かれているよ。体育祭編も振り返りながら見てね。

弟はいつも暗い顔をしていた。

無愛想で、いつもつまらなそうで、俺も父さんも母さんもずっと心配していた。


「玲斗ー、飯だぞ」

「…………」


こりゃ、また何かあったな。

俺はドアの鍵を、ポケットの中に入っていたヘアピンを使って開けた。


――ガチャ


「玲斗、飯だぞー」

「うわぁぁあああ!!」


ベッドに座っていた玲斗は、すごい勢いで壁にぶつかった。

夜なのに電気もつけずに何やってんだコイツ。

俺は電気をつけて玲斗に近づいた。


「なんでカギ開けれるんだよ……」

「天才だからな。……お前、なんかあっただろ。兄ちゃんに話してみ」

「…………幹太くんの好きな人が、僕を好きだったみたいで、幹太くんに嫌いって言われた……」


あー、そういう系か。

突然の話になるが、川島家にはかなりの美形の遺伝子が流れているらしい。

どんな容姿の人と結婚して子供を作っても、子供は整った顔で生まれてくる。

大量に食べても太らないし、変顔をしたって様になる。

どっかで相当強い遺伝子を持った美形がいたんだろう。

だから、親戚は俺達一族を「目潰しの一族」と呼んでいる。

なぜそうなったかは分からない。

美形は何かと都合がいいこともあるが、同性からはひがまれてしまう。


「あいつが俺の好きな人を取った」

「美形だからって調子乗るな」

「八方美人の偽善者」


俺も色々言われた。

特に嫌だったのは、自分の趣味を本気で否定された時だ。

俺は昔から可愛いものが好きだった。

それを大人数から馬鹿にされた時は辛かった。

時代の変化もあり、趣味を馬鹿にされることは無くなったけど、ひがみが消えるわけじゃない。

玲斗はまだ幼く、周りに否定されると傷つくのは当然だ。


「誰が誰を好きでも、関係ないのにね」

「…………」

「玲斗はその子に何かした?」

「何もしてない。話したこともない」

「じゃあ、それをちゃんと伝えな。まっすぐ目を見てさ」


玲斗は首を振った。

ああ、コイツは諦めてるんだ。

誰かと仲良くしようと頑張ることも、誤解を解くことも。


「そう言ったって誰も信じてくれない。今までずっとそうだったもん」

「兄ちゃんはいいな。いつも楽しそうで、周りに誰かがいて」


それから玲斗はどんどん冷たい目をしていくようになった。

家でも、多分学校でも。

笑うこともなくなったし、必要最低限のことしか話さない。

いつからか、俺自身も諦めていた。

玲斗の気持ちを晴らすことを。


◇◆◇


だから、体育祭を母さんと見に行った時に、目を見張った。

玲斗が楽しそうに友達と喋っているのを見て。

借り物競争で女の子に連れられて困惑している姿、楽しそうにクラスメイトを応援する姿。

そこには俺の見たことのない玲斗がいた。


「やめろ!孤高の王子様って言うな!!」

「いいじゃん。孤高の王子様。私は.......ぐふっ。いいと思......ぶふつ」

「未来ぃぃい!!テメェ!笑ってんじやねえぞ!!」


未来……?

今玲斗を未来って言った?


「入れ替わってなかったら殴ってる!」


俺は玲斗を見た。

他人の体にいるから、表情豊かで楽しそうなのか?

思わず笑みが溢れた。

いや、違うな。

玲斗の中に入っている女の子は、きっと玲斗と真逆の人間なんだろう。

玲斗はそういう子が苦手だったはず。

玲斗は長い間、いつメンを作らなかった。

でも、きっとこの子達がいつメンなんだな……。


「あ、兄貴......」


玲斗が青ざめながら言った。

俺は小さく微笑んだ。

あのな、玲斗。

お前が変わったように、俺も変わったんだよ。


「玲、おまつ、ええ.......」

「待て兄貴、これには事情が.......」

「玲斗の不埒者!!女の子と入れ替わるなんて!!」

「えぇええええええ!?俺別に何もしてないじゃん!!」

「私はあなたをそんな子に育てた覚えはないわよ!!」

「未来ぃぃいい!!お前のせいだろ!?」

「はぁ!?玲斗がデカい声で言ったんじゃん!」

「俺は悪くねぇ!!」

「いや悪いよ!?十ゼロで玲斗が悪いよ!?」


楽しそうに未来ちゃんと言い争う玲斗は、本当に楽しそうだ。


◇◆◇


その後、俺は未来ちゃんの家に行った。

母さんから誰かと同居していると聞いていたけど、まさか未来ちゃんの家だったとは。

未来ちゃんは元気で、ノリが良くて、嫉妬深い女の子だと分かった。

本当に玲斗とは真逆だし、あんまり好かなそうな子だ。

俺は玲斗が気絶したあと、部屋を貸してもらって、女装を脱ぐことにした。

「女装は脱ぐのが大変なんだよ。瑠輝くんに手伝ってもらいたいな」そう言うと、単純な未来ちゃんは素直に瑠輝くんを貸してくれた。

瑠輝くんは警戒してたけど。


「あの、翠さんは玲斗を心配してるんですか?」

「どうして?」

「……体育祭の時、玲斗を見てホッとした顔してたから」


瑠輝くんの声が、少し柔らかくなった。

俺はウィッグを外した。

玲斗と瑠輝くんの部屋はシンプルで、玲斗が使っているであろう棚には、ワークや参考書が置いてある。


「心配?そりゃそうだ。今の姿からは想像できないかもだけど、あいつは昔からひとりで抱え込んで、自責の念に駆られていた。母さんも父さんも、俺もどうしたらいいか分からなくて」

「…………」

「正直、諦めてたんだ。玲斗の気持ちを取り戻すことを。でも、今日の玲斗を見て、ようやくありのままでいられる場所を見つけたんだって思った」


瑠輝くんは優しく微笑んだ。


「そうですね。あいつは変わりました。俺達、感情を知らない玲斗も知ってるんです。学校でもいつも無表情で、何考えてるか分からなくて、孤高の王子様なんて呼ばれてました」


こ、孤高の王子様……。


「でも、未来と入れ替わってからよく笑うようになったんです。翠さん、玲斗が変わったの……未来のおかげですよ」


俺の脳裏に、楽しそうに笑う玲斗と未来ちゃんの姿が浮かんだ。

確かに、玲斗が明るくなったのは未来ちゃんのおかげだ。

でも、あの子の周りにいた人達が温かかったから。

それもあるだろう。

そして、玲斗が人と向き合う勇気を出したこと。

これが一番の理由だ。


「未来ちゃんみたいな子が、玲斗の殻を少しずつ溶かしてくれた。……瑠輝くん、あなたも玲斗の大事な友達だ。玲斗がこんなに笑顔を見せてくれるようになったの、あなた達の存在が大きいんだと思う」


瑠輝くんは照れたように笑った。


「うわぁぁあああああ!!」


俺達は未来ちゃんの色気もクソもない悲鳴に、弾かれたようにドアの方を向いた。


「大丈夫ですかー!!大丈夫ですかー!?」


俺と瑠輝は顔を見合わせた。

そして、困ったように笑った瑠輝くんと、俺は一階に戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ