第五話 恋かと思ったら命がけ!?秒で刺される乙女ゲーム!!
前回までのあらすじ
やあみんな!合崎未来だよ!なんやかんやあって入れ替わった私と川島玲斗!学校での授業を終えて、同居することになった私達は玲斗の家に行ってお母さんに同居を許可してもらったの!部屋の案内も済ませて早速同居開始!ゲームを一緒にやることになったけど、とんでもないカセットばっかり!玲斗はどのカセットを選ぶのか!?
私は再びタンスに手を突っ込んだ。
そして、四枚一気にカセットを取り出した。
おー、これは……。
「『キラキラプリティ学園Ⅰ!〜世界が滅びようとあなたを離さない〜』『ドS王女とドN王子様の政略結婚』『あなたといるとトゥインクルトゥインクル〜あなたと奏でる恋のメロディー〜』『お前を殺す』とか?」
「ネーミングセンスをどうにかしろ!!最後のやつに関しては何だ!さっきまでキラキラとか言ってたのに殺害予告されたんだけど!?」
「これも乙女ゲーだよ」
「嘘だろ!?」
『お前を殺す』に関してはお母さんが買ってきたやつなんだよね。
どれもお気に召さないみたいだしな。
「じゃあ、適当に取ってみて」
私はカセットの入った棚を指さして玲斗に言った。
玲斗は渋々カセットの山の中に手を突っ込んでガサガサと探り始めた。
他のカセットは何があったのかな。
「これでいいか」
玲斗がカセットを引き抜いた。
「『渋顔ゴンザレス』……」
「……どれやる?おすすめは『キラキラプリティ学園Ⅱ!〜愛するあなたといつも一緒!〜』と『あなたといるとトゥインクルトゥインクル〜あなたと奏でる恋のメロディー〜』だけど……」
「………………後者で」
私はテレビの前のソファーに玲斗を座らせて、ゲームにカセットを差し込んだ。
テレビをつけて、コントローラーを玲斗に持たせて私もソファーに座った。
『あなたといるとトゥインクルトゥインクル〜あなたと奏でる恋のメロディー〜』
テレビからタイトルコールが聞こえてくる。
この物語は全クリしたけど最近やってないからな。
どんなのだったかな。
玲斗は最初からSTARTを押した。
プロローグが終わり、本編に入った瞬間イケメン男子イラストがドアップで写った。
『おいブス。起きろyo』
『え?あ、あなた誰?』
『こっちのセリフだze。お前が俺にぶつかってきたんだro?』
『えっ?ご、ごめんなさい!』
《えっ?この人っ!顔がすごく綺麗!》
『何ジロジロ見てんだyo』
《そう考えると、口が悪いのも許容できるかも》
『無視すんなyo』
《い、いじけた顔きゃわっ!!》
【トゥインクル】
私と玲斗は冷めた目でテレビの画面を見ていた。
そぉ〜いえばこんな感じだったなぁ〜。
クソゲーだったことを思い出した。
「あっ選択肢」
「ここで!?」
〘あなたなんか嫌いよ〙
〘あなたなんか大好き〙
「「あなたなんか大好き!?」」
あなたなんか大好きって単語聞いたことないんだけど!!
何が起きたの!?
というかいきなり選択肢でてきて好きか嫌いかの二択しかないってどういうこと!?
おかしいだろ!
「ど、どうする?」
「と、とりあえず上じゃない?」
玲斗は上を選択した。
『あなたなんか嫌いよ!』
主人公が言った。
『何でそういう事言うんda!もういいyo!殺してやru!』
『お願い!やめて!』
『お前が悪いんda!』
『やめて!いや!いやぁあああああ!!』
【notトゥインクル……】
嘘やん。
一個選択肢ミスっただけでこんなことになる?
主人公が死んだんだけど。
玲斗はRetryを押して逆の選択肢を選んだ。
『あなたなんか大好き!』
『えっ?いきなり何だyo?そんな事言われても困るze』
『何で……刃物なんて……。いやっ!やめてぇぇえええ!!』
【notトゥインクル】
「「どうしろっていうんだーー!!」」
「待って。これ下を連打すれば……」
玲斗はそう言って下ボタンを連打した。
すると、画面に変化が現れた。
〘あなたのことが普通〙
「あんま変わってねぇじゃねぇか!!」
「まぁまぁ、一回試してみよ?ものは試しっていうし」
玲斗は渋々その選択肢を押した。
さて、どうなるか。
『あなたのことが普通』
『何を言うんda?そんなこと言われたら悲しくなるだro?』
《えっ?ツンデレタイプ?可愛い!!》
『普通っていうのは嘘!ちょっぴりタイプかも……』
『ちょっぴり?ちょっとの愛なんていらないyo!』
『なっ、何?何をするつもりなの?いやぁぁあああ!』
「二度とするかこんなクソゲー!!」
玲斗はテレビの電源を切りながら叫んだ。
私どうやってこんなクソゲーをクリアしたんだ?
私は『あなたといるとトゥインクルトゥインクル〜あなたと奏でる恋のメロディー〜』のサイトを見た。
「嘘でしょ?」
「何?」
「これでクリアらしいよ」
「バッドエンドしかない乙女ゲーとか……。絶対サイトミスってるだろ。見せろ」
玲斗は強引に私の腕を自分の顔の前まで持って言った。
「あってるぅぅぅううう!!」
疑われてたのか。
心外だな。
まぁ、分かるよ。
選択肢一個で終わる乙女ゲーとか滅多にないもんね。
というかこれしかないんじゃない?
トゥインクルに関しては一回しかしてないし。
「やめようか」
「そうしたほうがいいな」
私はゲームからカセットを抜いた。
全クリ以前の問題だろう。
「なぁ、未来」
「何?」
「お前の部屋も見せろよ」
「え〜。面白いもの何もないよ?」
「別にいい」
玲斗は私の部屋に何かあると思ってるみたいだけど、本当に何もないんだよな。
まぁ、見せるくらいならいいけど。
私は玲斗を連れて自室に来た。
ドアを開けると、そこは本だらけの部屋だった。
「本当に少女漫画ばかりだな」
玲斗は私の部屋をまじまじと見て言った。
私の部屋にある本は大体が少女漫画だ。
これが見たかったのか?
「ん?」
玲斗が手にとった本はさっきのゲームの書籍化したやつだった。
「これ書籍化してんの!?」
「あー、うん。あのゲーム、クソゲーすぎて逆に人気出て」
「えぇ……」
その本は古本市で五十円くらいで売られてたんだよね。
いくらクソゲーで人気でも、飽きられる時は飽きられる。
「読む?」
「誰が読むかバカ」
ことごとく私にバカと言いたいらしいな。
こやつは。
「オォウ……アイムミライアイサキ……」
「うわぁぁああああ!!」
玲斗は慌てて私の口を塞いできた。
ほぉう、自分がバカにされるのは嫌なのか。
私は不敵に笑ってやった。
「やめろ!英語は本当に無理なんだよ!!」
「リーディングブックしたり……」
「マ・ジ・で!!……ん?」
玲斗は何か知ってる本を見つけたのか、本棚の近くに行った。
玲斗が手に取った本はお母さんもお父さんも大好きな本だ。
「これ、『キミセカ』じゃん」
「へぇ、知ってるんだ。三十年くらい前に出た本だけど」
「うちの親も好きなんだよ。読んだことはないけどな」
「へ〜」
『キミセカ』はどこにでもある、いたって普通の異世界小説だ。
当時はどこか儚さを含んだ文章や物語構成に魅了され、人気が出たらしい。
そして何より当時の大人気イラストレーターである楓夏菜さんが挿絵を手がけたのも人気の理由だ。
「ねぇ、玲斗。『キミセカ』診断やってみてよ」
「え?まぁ、いいけど」
私はスマホで『キミセカ診断』と調べた。
ヒット数がえげつないほどあるけど、公式のやつでいいか。
私はそれをタップして、玲斗に渡した。
普通の診断サイトと何も変わらないような質問に玲斗は素早く答えて結果を出した。
オーリスタイプ……。
「プッ」
思わず吹き出してしまった。