第四十七話 「行けたら行く」の大戦争!?しっかり兄の川島翠さん!!
前回までのあらすじ
やっぴー!合崎未来だよ!!体育後、みんなで乙女ゲームをしていた平和な我が家に玲斗の浮気相手襲来!!でもその正体は川島玲斗のお兄さんの、川島翠さんだったの!それに気づかなかった私はブチギレ!誤解は解けたけど、霧山瑠輝こと霧やんに茶化されてGのおもちゃを玲斗の顔面にぶん投げちゃった!!玲斗はそのまま気絶。やらかしちゃった☆
私達は玲斗をリビングに運んで、ソファーに寝かせた。
翠さんは女装を脱ぐために二階に行っている。
霧やんはそれの手伝いだ。
何かと面倒らしい。
私は自分の顔を覗き込んだ。
さすが私ー。
マジで絶世の美女じゃん。
あれ?
前髪になにかついてる?
私は前髪に目を近づけた。
その時、玲斗が目を開けた。
「みらっ」
「うわぁぁあああああ!!」
わたしは思いっきり玲斗の顔をぶん殴った。
顔は私のものだけど、中身は玲斗だから、痛みはもろ玲斗に向かう。
玲斗は再び脱力したように気絶した。
「大丈夫ですかー!!大丈夫ですかー!?」
私が騒ぎすぎて、上から着替えを終えた翠さんと霧やんが降りてきた。
そして、玲斗の顔を見るなりギョッとした顔をした。
「未来ちゃんの顔がー!!」
「わあ、可哀想。未来の顔」
「俺を心配しろ!!」
玲斗が飛び起きた。
私達は一瞬起きていたことに驚き、目が点になった。
「なんだ軽症か」
「心配して損した」
「解散解散」
「非情すぎる」
玲斗は頭を抑えて起き上がった。
そして、翠さんを見るなり、礼儀とかお構いなしで指をピシッと突き刺した。
「なんでいるんだよ!兄貴!」
「なんでって、未来ちゃんに呼ばれたから来たのよ」
玲斗は私をすごい形相で見た。
え?
え?
知らないんだけど。
私が首を傾げると、翠さんはスマホを取り出して私とのトーク画面を見せてきた。
『翠さん、今週中に来れますか?』
『行けるよーん♪なんなら今日行っちゃう』
『またまたご冗談を。家の位置を送っておくので、来れそうなタイミングで来てください』
『おーけー!』
あー、これかー。
これはさっき私が翠さんとした会話だ。
こんなにすぐに来るとは思ってなかったから。
「こんなすぐ来るとは……」
「未来、覚えておけ。翠は『行けたら行く』を守るタイプの人間だ」
あー、「行けたら行く」かぁー。
その言葉には嫌な思い出しかない。
小学生の時、友達に遊びに誘われて、予定が分からなかったから「行けたら行くね」と言って、行けそうだったから集合場所に行ったら、誰もいなかった。
「行けたら行く」といって集合場所に行ったら、「あ、マジで来たんだ」「来ると思ってなかった」「未来は来るタイプなんだ」と酷い言われようだった。
その他にも「行けたら行く」と言ったら「来る気ないなら行きたくないって言ってよ!それ腹立つだけなんだけど!」とブチ切れられた。
それから私は「行けたら行く」を使わなくなった。
「『行けたら行く』は本当に行く人ー」
「「「はーい」」」
手を挙げたのは私含めて三人。
玲斗、翠さん。
あれ?
霧やんは?
「え?みんな行くの?」
「吊れ」
「殺せ」
「裏切り者」
「みんな嘘つきに容赦なさすぎない!?」
玲斗は霧やんを羽交締めして、翠さんがハリセンを出してきた。
仲良いなこの兄弟。
てか、なんで翠さんはハリセンの位置知ってるんだ?
「イ゙ヤ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
――ゴッ
翠さんはハリセンの開いている方ではなく、まとまっている方の角で霧やんを殴った。
うわぁ、痛そうな音が響いたなぁ……。
これはよほど行けたら行くと言って来なかった人に恨みがあると見た。
「で、なんで未来は翠を呼んだわけ?」
「さっきVtuberの話になったでしょ?翠さんはデザイン科で、ファッションデザインとイラスト専攻でしょ?だったら手を貸してもらえないかなーって」
「いいよいいよ〜!未来ちゃんの頼みならなんでも聞いてあげる〜!私の妹になる予定なんだし♡」
そう言いながら、翠さんは私を抱きしめて頬擦りした。
マジで距離近いな。
中身は女性みたいなもんだし、嫌悪感は湧かない。
「翠!!」
「あら、玲斗?嫉妬かな?」
「うるせぇ!未来に触るな!減る!」
「減らねぇよ」
ガラにもなく鋭いツッコミをしてしまった。
なに?
玲斗は頬擦りごときで私のHPと頬を抉り取られてるとでも思ってるの?
「てか、お前らいつ連絡先交換した?」
「え?体育祭の途中」
「おい校則違反野郎」
「ちっげーよ」
こいつ失礼すぎる。
私達の学校はスマホの持ち込みを許可されていない。
だから私が拘束違反をしたと思っているのか。
「翠さんが連絡先が印刷された紙を渡してきたの。お姉ちゃんの連絡先をそれで教えてくれって」
「おいクソ兄貴。お前、最初から誰かナンパするつもりだっただろ」
翠さんが思いっきり目を逸らした。
あ、私に渡すためにコンビニとかで印刷してきたのかと思ったけど、最初から持ってたのか。
「そ、そんなことより!Vtuberのデザインは何人分必要なの!?」
翠さんは話を変えるために、私の手を握って訊いてきた。
玲斗が「おい」と言うけど、険悪になってイラスト描かないなんて言われたら困る。
「えっと、三人です」
「あら?三人で活動するの?」
「そりゃそうですよ」
さっきから黙っていた霧やんが私と玲斗を両手で抱き寄せた。
「俺達は親友だからな」
それを聞いた翠さんは大きく目を見開いた。
そして、ゆっくりと玲斗を見た。
「…………そうか」
目を細めて笑う翠さんの姿はおふざけが好きな、性別不詳の人ではない。
弟を思いやる兄の顔だ。
「あ!おい霧やん!!お前ゲームセーブしたか!?」
「え!?あ、してない!!」
「データ飛んだでないか!?」
「うわぁあああぁあああ!!」
二人が再び騒ぎ出し、落ち着いた雰囲気は消えて行った。
わたしはなんとなく翠さんの方を見た。
「ほら見ろ消えてるじゃねぇか!」
「やらかしたぁああああ……」
翠さんは嬉しそうに二人の様子を見ていた。




