第三十七・五話 未来と俺の破局の危機!?慰めてくれる友人の出番!
前回までのあらすじ
体育祭で俺、川島玲斗は合崎未来と恋人であると宣言をしたことによって、未来に「ちょっと嫌い」と言われてしまった。死にたい思いを抱える俺は、未来から遠く離れた場所に座り込んでいた。
「うわぁ、なんか玲斗が倒れてるよ」
「……れた」
「え?」
「未来に振られたぁぁぁああああ!!」
俺がすがるように嶺音に言うと、「よっしゃ!」とガッツポーズをした。
この野郎、人が悲しんでいるのに。
なんだろう、俺と未来の周りに気遣いができる優しいやつはいないのか?
「で、何があったわけ?」
「……借り物競走で、俺達がカレカノだって後悔しただろ?」
「うん」
「実は未来は反対してたんだよ」
「じゃお前が悪いな」
「俺が悪いけどさぁ〜」
嶺音は体育座りで座り込む俺の頭をポンと叩いて、俺の横に座った。
そして、嬉しそうに笑った。
「メシ食おうぜ。久しぶりにさ」
「…………」
「気分転換っていうか、一回何もかも忘れて腹を満たそうぜ」
「……そうだな」
嶺音はふっと笑って、弁当を包んでいる布を取って弁当を開けた。
俺も同じように未来が作ってくれた弁当を開けた。
「ぶはっ!なんだお前……!その弁当……!すっげえ色!だはは!!」
未来の弁当はいつも通りイカれた色をしている。
米はピンク、唐揚げは紫、ポテサラは緑、ポテトは赤、他のものにも色がついている。
初見だと食欲が湧かない色だ。
「え?合崎さんってもしかして料理下手!?」
「いや、料理は上手いんだよ。色がおかしいだけで」
「上手くてもこれはねぇだろ!だはははは!!おもしれぇ!」
嶺音は腹を抱えて笑い転げている。
確かに未来の弁当はカラフルだ。
「味はうまいんだって!」
「でも見た目が完全にアウトだろ!この唐揚げなに?毒持ってそうなんだけど」
「唐揚げだっつーの!」
「ポテサラは信号機みたいだし。通っていいって言われてるみたい。このポテト怒ってんの?今の合崎さんと同じじゃん」
「お前、俺の心をさらに傷つけたいのか?」
俺が箸を持つ手を止めると、嶺音はニヤリと笑って肩を叩いた。
「いや〜悪い悪い。……でもさ、合崎さん、一生懸命作ってんだろ?」
「……当番だけどな」
「まぁ、いいじゃん。お前愛されてるじゃん」
「は?どこが?」
「だってこの弁当、お前の好きなものばっかじゃん」
確かに言われてみればそうだ。
唐揚げも、ポテトも、全部好物だ。
入っている野菜だって、苦手なトマトはなく、ブロッコリーや小松菜の胡麻和えばかりだ。
「でも未来、俺のこと嫌いになったって……」
「ちょっとだろ?」
「ちょっとって、もう終わりじゃね?」
「アホかよ。ちょっとはちょっとだよ。合崎さん、本気で嫌いならはっきり『別れよ』って言うだろ」
…………確かに!!
思えばそうだ。
嶺音は豪快に自分の弁当をかき込んだ。
その弁当は普通に茶色と白のまともな色合いだ。
……俺の弁当と並べると余計に未来のセンスがぶっ飛んで見える。
「なぁ嶺音」
「ん?」
「俺、やっぱ未来のこと好きなんだわ」
「知ってる」
「知ってる?」
「うん。久しぶりにあったけど、お前ずっと顔に書いてある」
嶺音はにやけながら自分の弁当に入っていたタコさんウインナーを頬張った。
「……なんでお前はそんなに余裕あんの?」
「余裕じゃねぇよ。彼女いねーし」
「……」
「傷心の友達を慰めてるんだろ?正直、こうしてお前とメシを食えてるの嬉しいんだよ」
その言葉に少し胸が熱くなった。
嶺音は相変わらず笑ってるけど、その笑い方はさっきより柔らかい。
「だから、落ち込んでメシが食えなくなるようなことすんなよ?」
「……うわ、なんか惚れそう」
「やめろ!気持ち悪い!」
「ははっ」
笑い合ってるうちに、弁当の紫の唐揚げも、赤いポテトも、少しは普通に見えてきた。
いや、嘘だ。
やっぱり普通じゃねぇ。
でも、こうして誰かと食べると、不思議と一人で食べるよりも美味しいんだな。
「なぁ嶺音」
「ん?」
「……俺、やっぱ未来にちゃんと謝った方がいいよな」
「当たり前だろ。あんな可愛くて気が使えそうな子、テキトーに扱ったら一発アウトだぞ」
「テキトーに扱ったつもりはねぇんだけど……」
「でも結果は『ちょっと嫌い』だろ?」
ぐうの音も出ない。
嶺音は最後の米粒まで綺麗に平らげると、豪快にペットボトルの水をあおった。
でも……。
「……そっか。まだ間に合うか」
俺がぽつりと呟くと、嶺音はくくっと笑った。
その顔は恋敵を見るものではなかった。
友人の俺をちゃんと見ていた。
「間に合うどころか、まだスタート地点だろ。お前らこないだ付き合ったばっかみたいだし。喧嘩なんて付きもんだろ」
「……確かに」
紫色の唐揚げをひとつ口に放り込む。
見た目は完全に食欲を削ぐのに、味は相変わらず絶品だ。
「なぁ嶺音」
「ん?」
「俺、やっぱ未来にちゃんと謝った方がいいよな」
「だからさっきからそうしろって言ってんだろ?女子って、言葉に敏感なんだぞ」
「……俺、余計なこと言ったかな」
「余計なことしか言ってねぇよ。反省しろ」
「お前容赦ねぇな!?」
嶺音は大笑いしながら水筒を煽り、喉を鳴らした。
「でもさ、謝るだけじゃ駄目。ちゃんと好きだって伝えろよ」
「……」
「お前には、顔にデカデカと書いてあるけどな。『俺は合崎未来が好きです』って」
「え?そんなに?」
「うん。そんなに」
俺と嶺音は顔を見合わせて笑った。
謝ろう。
ちゃんと未来に謝って、大好きだって伝えよう。




