第三十一話 秘密を知っても優しいまま。俺が迎えた温かい未来。
前回までのあらすじ
よっ!合崎未来と入れ替わってる川島玲斗だ。前回、前々回に引き続き、今回も俺目線の話になってる。この間未来に「あらすじが雑ー!」って言われたけど、お前と違ってなれてないから仕方ないよな?とりあえず今回で俺目線の話は終わりだから、俺の話を参考にして次回からの未来目線の物語を見てくれ。それじゃあ本編行ってみよう。
未来は俺の顔で女子達にニッコリ笑って手を振った。
「はうっ」
「尊いっ」
鼻血を吹きながら女子は倒れてしまった。
あの野郎!!
未来は目を点にして「え?」と言っている。
色々注意されたときに丁度霧やんが戻ってきた。
未来に顔を触られて顔をしかめる様子を見て思った。
帰ったらぶん殴ろっ!
て。
羨ましいやつめ。
未来はなぜか霧やんを先に家に帰して、どこかへ向かい出した。
◇◆◇
俺の家ー!?
何でだ?
どうしてだ!?
母さんと軽く会話してから家に入って未来が向かった場所。
それは……。
俺の部屋ー!!
「あら玲斗、おかえ――」
「ごめんあとにして!」
「あらまぁ」
まずい、部屋にはアレが……!
すぐさま階段を登って、すぐにドアを開けようとした。
ドアノブを掴んで動けなくなった。
何で止まるんだよ。
動け、動け!
見られるんだぞ?
未来に自分の汚いところを。
いいわけないだろ。
開けないと。
――隠したままでいいのか?
そんな迷いがあった。
――カチャ
引き出しが開く音が聞こえた。
ああ、もう駄目だ。
「手紙……?」
諦めよう。
未来に軽蔑されることくらい分かってる。
後回しにしたことが今になっただけだ。
しばらくしてから俺はドアを開けた。
――バン!
「未来!!」
「…………」
俺は未来と開いた引き出しを交互に見て血の気が引いた。
「未来……」
覚悟を決めたものの、目の当たりにするとキツいな。
未来は俺をまっすぐに見て訊いた。
「ねぇ玲斗。これどう言うこと?」
「…………」
「言って」
正直に言うしかない。
軽蔑されることも、ひっぱたかれることも覚悟してドアを開けなかったんだ。
正直に言おう。
「…………未来は、自分のことを超絶美少女って言うけど、実際その通りだ」
今まで認めるのが癪で、否定してきたことを急に全肯定しだした俺に、未来は驚きを隠せないといった様子だった。
「正直、顔面偏差値は高いし、誰にでも分け隔てなく接するから当然モテる。だから俺は入れ替わる前までは、いつもお前が登校する時間よりも早く登校してラブレターを回収してた」
「何で?」
「…………」
未来は俺に力強く歩み寄って胸ぐらを掴んだ。
そして、思いっきりブンブンと揺らした。
首が取れるんじゃないかってくらい揺らした。
「玲斗のせいで中二まで彼氏できなかったじゃん!!何してくれてんだよぉぉおおお!!」
ん!?
いや待て。
「いやキレるとこそこ!?」
「嫌がらせか貴様!嫌がらせだろ!!」
「お、落ち着け」
「これが落ち着いてられるかぁぁあああ!!」
◇◆◇
――数分後
「改めて聞くけど、何で私へのラブレターをこっそり盗ったの?」
「…………」
未来は落ち着いた様子で言った。
なんて言えばいいんだろう。
最初は嶺音のためだった。
でも、途中から自分のためになったし……。
送った人の靴箱に返すのをやめたのは、単純に一回バレたからだ。
それからは靴箱に戻すのはやめた。
でも、人の思いを捨てることはできなかった。
それがこんなことになるなんて……。
「れい――」
「き、嫌いにならないでくれるか?」
「ねぇ、どうしたの?今日気持ち悪いくらいに女々しいけど」
「答えてくれ」
俺が言うと、未来はこれ見よがしにため息をついた。
未来の大人びた対応が強すぎる。
「何で私が玲斗を嫌うと思うの?」
「……え?」
「私、知ってるよ。玲斗が理由もなくこういうことする人じゃないって。嫌がらせじゃないことは分かってるから」
ああ、そうだったな。
お前は簡単に人を突き放さないし、軽蔑もしない。
理由を聞いて、ちゃんと向き合ってくれる。
分かってたのに、怖くて踏み出せなかった。
ずっとそれを忘れてた。
「………………未来に誰かと付き合ってほしくなかった」
「それって……」
さすがの未来にも俺の気持ちが伝わったようだ。
俺は覚悟を決めて顔を上げた。
「好きだ」
未来は何も言わない。
でも怖気づくな。
怖がるな。
未来なら受け止めてくれるから。
「他に好きな人がいることは知ってる」
「え?」
「ごめん、斎藤との話、聞いてた」
「ちょっ、まっ」
「伝えたかっただけだから、こっ酷く振ってくれ」
「玲斗氏、ちょっとまっ」
「早くしてくれ!期待はしてないか――」
「待てやぁ!!」
未来がクソデカい声を出して言った。
未来の顔を見ると、少し怒ってるみたいだった。
「私の好きな人、目の前にいるから!」
一瞬思考が停止した。
「…………………………ファ?…………ファァァアアアアアッ!?」
未来は俺の叫びを聞いてすぐに耳を塞いだ。
うるさそうだけど、そんなの気にしてる場合じゃない。
落ち着け。
よく考えろ。
「いやいや、絶対同情だから。一時の同情に興奮するのは良くない。きっと二日付き合ってから『ごめん、あれ嘘』って言われるに違いない。未来が俺のことを好き?ないない。絶対にない。絆されるな俺。あの未来だぞ?あの未来が俺のことを好きなわけ……。でも本当だったら超嬉しい。いやいや、騙されるな俺。冗談だ。そうだ冗談。未来は冗談が好きだからな。絶対冗談だ。うん、ジョークジョーク。今日はエイプリルフール。あれ?今は九月だったような。いやいや、マイナス五したら四月だ。あれ?エイプリルフールって一日の午前までだったような。いや、気にするな。今日はエイプリルフールだ、エイプリルフール。うん、そうだよな。やっぱちょっとガチだったり……。いやよく考えろ。未来は決して俺が好きとは言っていなかったぞ。目の前、目の前……。あ、空気か。自分を生かしてくれている空気が好きってことか。うん、そうだな。未来は空気が好き、未来は空気が好き」
「玲斗」
「未来は空気が好き。未来ライク空気」
「玲斗、聞いて」
「いやいやいやいやいや。そぉんなわけないよな〜」
「聞け」
未来は俺をビンタした。
「ヒドイ……」
思ったより高音が出た。
ちょっと落ち着いた俺は未来を見た。
未来はまっすぐと俺の目を見ていた。
吸い込まれそうなくらい真剣な目。
「私は、玲斗が好きなの。今日はエイプリルフールじゃないし、ジョークでもない。私が好きなのは空気でもないんだよ。目の前にいるあなたが、玲斗が好きなの」
あ、もう駄目だ。
俺の意識はそこで途切れた。
◇◆◇
――バン!
俺はドアを勢いよく開けた
「未来!!」
「…………」
未来は俺をゴミでも見るような目で見た。
「玲斗、これなに?」
未来の手には、俺が回収したラブレターだった。
本気で軽蔑したような顔をしている未来には何も弁解できない。
当たり前だ。
嶺音に頼まれたとは言え、やっちゃ駄目なことだから。
「ねぇ、答えてよ」
未来は俺に手紙を投げつけてきた。
「あんたのせいで、人からの好意に気づけなかったじゃん」
「ご、ごめっ」
「ふざけないでよ!!」
本気で怒ってる。
俺が、怒らせたんだ。
こんな俺には未来に告白する権利もない。
「ごめん……っ、ごめんっ!」
――私、知ってるよ。玲斗が理由もなくこういうことする人じゃないって。嫌がらせじゃないことは分かってるから。
どこかから未来の声が聞こえてきた。
――私は、玲斗が好きなの。今日はエイプリルフールじゃないし、ジョークでもない。私が好きなのは空気でもないんだよ。目の前にいるあなたが、玲斗が好きなの。
そうだった……。
この未来は違う未来だ。
俺が想像してた未来とは違う未来。
夢なのか。
そうだな、未来はこんな風に怒らない。
気がつくと、目の前の未来は優しい顔をした未来に変わっていた。
しゃがみ込んでいた俺を立たせて、微笑みかけてきた。
『もう大丈夫だね』
「……ああ」
やっぱり未来はあったかいな。




