第三十話 背中を押されて覚悟を決めます!誰にも渡したくない未来の隣。
前回までのあらすじ
こんにちは?合崎未来と入れ替わってる川島玲斗です。今回もたくさんのすれ違いを乗り越えて、告白を成功させた俺目線の話だ。告白するまでだいぶ時間がかかったし、返事をもらったときは本当に心臓が止まるかと思ったな。とりあえず、今回もヘタレと言われている俺が告白に至るまでの話だ。
俺は二階に上がって未来の部屋に手をかけた。
「未来は、忘れててもいい」
部屋の中で未来と安斎が話していた。
「でも、俺はずっと覚えてた」
「……え?」
何の話だ?
よく掴めない。
「名前を笑われても何も言えず、悔しくて情けなかった俺を、未来が庇ってくれた。……ずっと前のことなのに、俺は今でもずっと、鮮明に覚えてる」
名前を笑われる?
庇う?
そういえば安斎は未来の幼馴染だったような。
「未来が、俺の名前を守ってくれたあの日から……俺は未来のことが――」
待て待て待て。
俺ですらまだ言ってないのに、安斎に先を越されるのか?
「ずっと、ずっと好きだった」
「…………」
未来の声が聞こえない。
考えているのか?
頼む、断ってくれ。
こんなことを願う俺はいていな人間なんだろうな。
「ごめん千佳。私、好きな人がいるの」
「……え?」
思わず声が漏れてしまった口を慌てて抑えた。
好きな人?
安斎は悲しそうな声で言った。
「知ってた」
◇◆◇
俺は急いで一階に戻って、ソファーに頭をうずめて唸った。
「何?駄目だったの?何とかいいなさいよ」
村瀬が追い打ちをかけてくる。
こいつの辞書に「労る」「慰める」はないのか?
「安斎が――」
「しっかり喋りなさいよ」
「ちょっと恵麻ちゃん……」
「安斎が未来に告白してたんだよ!!」
村瀬と立花が全力で目を逸らした。
こいつら絶対知ってただろ!
霧やんは笑いながら訊いてきた。
「みっ、みらっ、未来はなんて……?ブフッ」
「他に好きな人がいるんだとよ」
村瀬立花ペアは呆れたような顔をしだした。
霧やんはさらにツボったらしく、腹を抱えて笑い出した。
「まさかお互いに鈍感だったなんて!!」
「恵麻ちゃんこれどうする?」
「どうするもこうするも、二人の決意が固まるのを待つしかないんじゃない?」
村瀬達がなにか話してるけど、何も入ってこない。
「もう駄目だ終わりだこの世の終わりだ」
「ねぇ、せめて句読点は付けようよ。物語読んでる人が読みづらいでしょ」
「メタいこと言うな!!」
村瀬達の頭の辞書をアプデしてやりたい。
あまりにも失礼で容赦がなさすぎる。
「もういい!!」
俺は勢いよく立ち上がって拳を握りしめた。
「俺!未来と距離を置く!!」
「「「は?」」」
「未来の恋を応援するんだ!!」
俺が一人で燃えている横で呆れたように俺を見上げる三人の姿を、俺は見ていなかった。
「逆効果だって何でわからないのよこの馬鹿」
「あらまぁ」
「玲斗最高すぎ!!」
◇◆◇
――数日後
「ねぇ、いつも未来のところでご飯食べてたよね?何で私達のところにいるの?」
「俺はしばらく未来に近づかないから、今日から安斎と立花のところで食う」
立花は呆れたようにため息をついて立ち上がって「後は二人で話してて」と言ってどっかへ行った。
ちょっとぉぉぉおお!!
なんで安斎と俺を置いていくんだよぉぉぉおお!
安斎は立花の後ろ姿に一瞬視線を送ったあと、淡々と弁当の蓋を開けた。
「……何、黙々と食べてるんだよ」
「だって、弁当は温かいうちに食べたいし」
「冷えてるだろ、どう考えても」
「気持ちの問題」
「なにその理屈」
なんてどうでもいいやりとりをしてるけど、俺の内心は嵐だった。
隣に安斎がいる。
それだけで頭が大爆発しそう。
だってこいつ、未来に告白してるんだぞ!?
男として意識しないわけがない。
恋愛感情じゃないからそこは勘違いするなよ?
「……で?」
「は?」
安斎が箸を止めてこっちを見た。
目が真剣すぎて、無意識に姿勢が正しくなる。
何なんだこの圧。
「何で未来を避けてるの?」
うっ。
……来た。地雷踏んだ。
ここでヘラヘラするのも失礼だし、変に真面目に答えるのも気恥ずかしい。
でも、安斎の目が「逃がさない」って言ってる。
「……応援しようと思って」
「は?」
「だから、未来には好きな人がいるって言ってたし、俺が近くにいるとややこしいかなって思って……」
安斎はじっと俺を見て、小声で言った。
「なんか、似てる」
「いや似てないし!」
「俺も『未来のために』って言って気持ちを押し込めてた時期あった」
「やめてくれ、それは今の俺に刺さる!」
「でも、ちゃんと見てないと、すれ違うだけ」
「ぐぅぅ……」
殴りたく……はならないけど、胃に悪い。
「まあ、俺はもう告白して爆死済みだから。次は川島の番」
「そんなバトンリレーいらねぇよ!」
安斎はマイペースに弁当を食べ続けながら、淡々と言った。
慌てる俺とは真逆だ。
「……未来の隣、空けたままでいいの?」
「…………」
その一言で、心臓が跳ねた。
その隣は、俺にとって一番居心地のいい場所だった。
それが他の誰かのものになるのを許すのか?
……嫌だ。
「安斎、お前ってさ、ちょっといい奴だな」
「知ってる」
「知ってるんかい!!」
「でも、いつまでもウジウジしてたら何も始まらない。一歩踏み出すかどうかは川島次第だけど、よく考えなよ」
確かにスタートすら切れてないのはどうなんだろう。
よし、帰ったら伝えよう。
俺の気持ちを。
「ありがとな、安斎」
俺が言うと、安斎は顔を上げて眩しそうに俺を見た。
決心がついた俺は未来のところに行こうと弁当を持って、屋上を出た。
「…………恋敵に塩送ってどうすんだよ……。馬鹿だな、俺」
◇◆◇
なぜ霧やんと未来は映画館に来てるんだろう。
告白しようと帰ったら二人で出かけて……。
怪しい。
ていうか「キラキラプリティ学園Ⅰ!〜世界が滅びようとあなたを離さない〜」が映画化されてるとか……。
やったことはないけどやばいやつのイメージしかない。
だって「あなたといるとトゥインクルトゥインクル〜あなたと奏でる恋のメロディー〜」が駄目だったんだぞ?(五話参照)
あれは酷かった。
――二度とするかこんなクソゲー!!
と叫んだ記憶がある。
◇◆◇
――五十分後
いい話!!
やばいめっちゃ泣ける。
疑って申し訳ない!!
……にしても、二列先にいる二人が地味にいい感じなの腹立つな。
俺は手に持ってるMサイズの食べ終わったポップコーンの入れ物を霧やんめがけて投げた。
「わー、ポップコーンがー」
――ズボッ
霧やんの頭にきれいに入った。
思わず笑いそうになったけどバレるから我慢した。
「……エッ?」
霧やんの情けない声が聞こえたけど、背に腹は代えられないっていうか?
自業自得っていうか?
◇◆◇
映画が終わってすぐ、霧やんはトイレに行った。
誰のせいだろうな。
俺わかんないや〜
「ねぇ、あの人かっこよくない?」
「誰か待ってるのかな?」
未来の横を通り過ぎていく女子が、未来を指さしてコソコソと話している。
未来は何かを企んでいるようにニヤリと笑った。
おいこいつまさか。
嘘だろ?
嘘だと言ってくれ。




