第二十九話 合崎未来はどんな人?俺が未来に惹かれた理由。
前回までのあらすじ
やっぴー!孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わって同居してるみんなのアイドル、合崎未来だよ!!入れ替わりから半年経ってて、戻る気配もない中、同居メンバーに霧山瑠輝が追加されたり、文化祭が会ったり、幼馴染の斎藤千佳に告白されたり、玲斗と両思いになったり。いろんなことがあった私の中学校生活!今までは私の視点を中心にお話が進んでたけど、今回は玲斗視点のお話だよ!玲斗の目に私はどう見えてたのかな?みんなと一緒に孤高の王子様の物語を楽しみたいな!!それじゃあ本編行ってみよう!
俺にとって、合崎未来は知らない人だけど知ってる人という印象しかなかった。
男子が靴箱にラブレターを入れたという話を聞いたり、合崎未来に彼氏ができただの色々だ。
「頼む!」
「嫌だよ。自分でやれよ」
ある日、俺は友人の紅木嶺音に合崎未来の靴箱に入れられるライバルのラブレターの回収を頼み込まれた。
なぜ俺がやらないといけないのか。
「俺、起きる時間遅いから!頼む」
「い・や・だ。合崎がラブレターに返事しなくなって、鬱病になるやつが出たらどうするんだ」
「大丈夫、合崎さんはラブレターに返事しないから」
それはそれでどうなんだ?
と思いつつもラブレターを回収して、手紙を書いた人の靴箱に入れる行為をずっと続けていた。
◇◆◇
いつからだっただろうか。
そのラブレター回収が嶺音のためではなく、自分のためになったのは。
◇◆◇
そして、俺は二年生になった。
未来と同じクラスになってよく分かった。
人気が出るだけのことはあるなと思った。
誰にでも分け隔てなく接し、笑顔が絶えないムードメーカー。
あの日、未来と入れ替わった日、未来が体育館裏に女子に呼び出されているのを見た。
気になって後をつければ、案の定モテる未来に嫉妬してるだけだった。
気が済むまで未来に罵詈雑言を浴びせ、その女子が立ち去った後、未来はダッシュで教室に戻り、荷物を持って移動教室に向かった。
その途中で、未来が階段を踏み外すなんて思わなかった。
入れ替わるとは思わなかったけど、好都合だと思った。
合崎未来を知りたかった俺にとってはの話だが。
「同居しない?」
その提案を聞いた時は、やっぱり未来も下心があったんだとガッカリした。
でも、理由には筋が通っていて、ホッとした自分もいる。
同居を始めたら始めたで。
「迷った」
家に帰るだけなのに迷ったり、案内された部屋は人が住んでるんじゃないかってくらい整えられていた。
「すごい設備だな。ここに誰か住んでるんじゃ……」
「ううん。そこは来客用の部屋。姉がよく客人を招くから」
「あぁ、そういう……。…………姉!?」
姉がいることにも驚いたし、それを伝えなかった未来にも驚いた。
天然ともいえる未来の傍はとても居心地が良くて、温かかった。
一緒に乙女ゲームしたり、お互いの失敗を馬鹿にし合ったり。
なんでもないやり取りを楽しいと思えた。
何をしても楽しそうにする未来は輝いてた。
理科ができないと嘆く姿は可愛いと思えたし、愛おしかった。
俺がGが嫌いだと知っても、軽蔑せずに笑ってくれた。
Gのおもちゃを買ってきて脅かすのはどうかと思ったけど。
俺が本格的に未来に惹かれ出したのは、体調を崩したときだ。
リビングで倒れた俺をベッドまで運んで看病してくれただけじゃなく、ずっと手を握ってくれていたらしい。
「あぁ、玲斗おはよ〜」
「おはようじゃない!何でいるんだよ!」
「早退した」
「……は?」
「五、六限は自習だったから、今預かってる知り合いの子が熱出してるって言って帰ってきた」
こんな馬鹿がいるんだと思った。
俺を心配したのか、自分の体を心配したのか。
それはわからない。
でも、あの様子じゃ俺の心配だろうな。
顔面偏差値高いだけじゃなくて、性格までいいのかよ。
「ほんっとに馬鹿だな」
思わず笑みがこぼれた。
未来は驚いていたが、いつもの倍優しい目で微笑み返してくれた。
デパートに行こうと言われたときは、ガラにもなく舞い上がった。
霧やんに偶然会って、デートか聞かれたときは頷きそうになるのを堪えるのに苦労した。
「俺だけ秘密握られてるの癪だからお前らの秘密も教えろよ?」
そう言われて、すぐに入れ替わりのことを思い浮かべた。
未来は快く頷いたけど、正直ちょっと嫌だった。
霧やんが同居するのも嫌だった。
俺しか知らない未来が他のやつに知られるのは嫌だった。
たまに未来は言う。
「さっすが玲斗!やっさし〜!」
「いや〜、頭がいいやつは羨ましいね〜」
ってな。
でも、俺は未来が思ってるほど優しい人間でも、頭が良くもない。
実際の俺はずっと臆病で、ヘタレで、独占欲の塊なんだ。
「玲斗は未来に告白しないの?」
霧やんが同居してからしばらく経ったときに聞いてきた。
「……告白?」
「え?嘘でしょ?自覚ないの?」
「なんの?」
俺が訊くと、霧やんは呆れたようにため息をついた。
これみよがしなため息には何だよ。
とは思った。
「好きなんだろ?未来のことが」
「……は?俺が未来を?」
「マジで自覚ないの?俺が同居に参加するって言ったとき、未来にバレないように俺のこと睨んでただろ」
「…………」
どんどん顔が熱くなっていく。
「俺は未来が……す、好きなのか」
「マジかよ〜。てっきり自覚してるもんだと思ってた……」
その時はじめて自分の気持ちに気づいた。
それからは自分の気持ちを隠すのに必死だったけど、未来には気づかれてなかったらしい。
文化祭の時、村瀬に呼び出された。
未来は笑顔で俺を送り出した。
だから、少しイラついた。
少しは意識してくれないものかと。
「合崎さん……。いや、玲斗くんって言ったほうがいいかな?」
「気づいてたのか」
「単刀直入に言うわ。合崎さんとはどういう関係なの?」
「見て分からないか?」
「ええ、告白したことのある相手にあなたを売り、他の人と文化祭を回りに行くほど意識されてないようね」
「告白したことのある相手に売る」、「他の人と文化祭を回る」、「意識されてない」がその通り過ぎて辛い。
「そうだよ!悪いかよ片思いで!」
「……変なことしてないでしょうね」
「してねぇよ!お前は俺のことをなんだと思ってやがる!」
「男っていうのは平気でそういう事するから」
「お前はジェンダー平等を目指したほうがいい」
いつだったか、未来もジェンダー平等目指してるってふざけて言ってたな。
あいつは必要ないけど、こいつには必要だろ。
その後、「合崎さんに変なことしたらただじゃおかないから!」としつこく言われた。
分かってるって。
わざわざ未来を傷つけることはしないっつうの。
◇◆◇
打ち上げの時、人生ゲームで村瀬に俺に告ったときの心境を訊いた。
全員にデリカシーがないと言われたけど、俺はどうしても知りたかった。
告白の仕方が知りたかった。
これ以上未来が誰かのものになる可能性に怯えたくない。
未来が安斎に連れて行かれた時ですら嫉妬でどうにかなりそうだった。
「なるほどねぇ。でも、そういうのは人から聞くんじゃなくてぞ分で考えたほうがいいんじゃない?」
「私も恵麻ちゃんと同じ意見かな。未来はまねっこよりもそっちのほうが喜ぶと思うよ」
「でも、俺別に意識されてないから怖いんだよな」
俺が言うと全員が固まった。
そしてなぜか壁の方に俺以外で固まって何かを話し始めた。
「ちょっと霧山くん、これどういうことよ。自己肯定感低すぎない?あの人」
「玲斗って恋愛初心者だから気づいてない」
「いや、未来が分かりにくいってのもあるかも。私達って恋愛は得意分野じゃん」
「俺乙女ゲームとか好き」
「私は漫画が好きよ」
「私は作家だからなぁ。それに比べてあの人は何もスキルがないんだよ」
「確かに恋愛に関しては初期装備だわ、あいつ」
俺が「おーい」と呼びかけると、三人は「ああん?」といいそうな勢いで俺を見た。
そして、立花が俺の肩を掴んで言った。
「まだ文化祭マジックは使える。今から告ってきな」
いや軽すぎんだろ。
文化祭マジックって最中だから効くもんじゃないの?
村瀬も霧やんも笑顔で俺を見ている。
まるで「行って来い」と言ってるみたいに。
俺は覚悟を決めて未来のところに行くことにした。
廊下に出ても誰もいない。
ってことは部屋か。
俺は二階に上がって未来の部屋に手をかけた。
「未来は、忘れててもいい」
なにか話してる?
なんだかただならぬ話のような気がする。




