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第二十六話  為替レートとか知りません!!デリカシーのない玲斗さん!!

前回までのあらすじ

ちわぁっす!孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わって同居してる合崎未来だよ!なんだかんだあってポエムづくりが趣味の霧山瑠輝も同居の仲間入り!そして迎えた文化祭!準備が玲斗に告ったことがある村瀬恵麻と同じ班になったときはどうなることかと思ったけど、何とかなった!文化祭も終わって、家でくつろいでたら、村瀬さんと、親友の立花愛華と、幼馴染の斎藤千佳が家に来て、まさかの「入れ替わってるんでしょ?」発言!そしてなぜか人生ゲームをすることになった村瀬さんと玲斗。話の流れで為替レートの問題を振られた私!一体どうなるの!?

「おっ、じゃありんごがあります。昨日まで安かったりんごは値段が上がってました。なぜ?」

「えーっと。円高だから!!」


私がそう言うと、全員が固まった。

想像以上に深い沈黙が走った。

あれ?


「えっ、あれ……?違った……?」


私が恐る恐る訊くと、霧やんが先に吹き出した。


「ぶははっ!!違う違うっ!逆!真逆っ!!」

「おまっ、円高ならむしろ安くなるんだよ!!」

「合崎さん、それは単純な考えすぎるよ」


玲斗が吹き出しそうな声で突っ込んでくる。

殴っていいかなぁ、この人。

一方の村瀬さんは可哀想なものを見る目で私を見ている。

辛い。


「……やっぱり未来、公民ちゃんとやってなかったんだ」


千佳がジト目で呟いた。


「いや、合ってると思ったの!!真面目に!!」


私は両手で頭を抱えた。

羞恥で顔が熱い。

恥ずかしい!

本当に恥ずかしい!!


「未来……お前の経済観、破滅してるな……」


玲斗はもう立ち直れない人を見る目で私を見ていた。

その目やめろマジで。

しんどい。


「まぁまぁ!今のはあくまで例題だから!」


愛華が無理やりフォローしてくれるが、もうみんな笑いが止まらない。


「ま、まぁでも……!人生ゲームに経済知識は関係ないし!」


私が意地でそう言い返すと、玲斗がにやっとした。

そしてあるマスを指さした。


「ドル建て資産の暴落でマイナス二万円……。なんでぇぇえええ!?」

「……未来、公民は裏切らないから、勉強はしとけ」


千佳が私の頭をクシャッと乱暴に撫でた。

懐かしいな。

最近はこうやって頭を撫でられることもなかったから。


「あー!!玲斗!落ち着け!」

「川島くん!落ち着いて!大丈夫だから!千佳は大丈夫だから!!」

「心狭い男は嫌われるわよ」


なぜか玲斗をたしなめる霧やんと愛華と村瀬さん。

いや、村瀬さんは煽ってるのかな?

……なんで?


「さて、次行こうか」


村瀬さんがルーレットを回した。


「私は三か。お年玉で一万円もらう」

「ねぇ、なんで新生児がお年玉で一万円もらうの?おかしくね?」


そんな感じで、人生ゲームは進んでいく。


「職業カードは……あ、医者」

「うわ、年収高っ!ズルっ!」

「運命って残酷ね。負けフラグ立ってるヘタレとは違うのよ」


村瀬さんが札を扇状にしてバッサァ!と見せる姿は、完全にラスボス。


「おら玲斗、番だぞ」

「……引きたくねぇ……。国会議員かよ……。これ、マジで負けフラグじゃね?」


玲斗がため息混じりに言った。

国会議員ってそんなに駄目かな?


「国会議員ってそんなに悪くなくない?安定してるし、何より顔が広い」

「でも、イメージはブラックだろ……」


そうなのかな。

私は公民の成績がいい千佳を見た。


「そういうのはただの偏見だ。お前ももっと政治に興味持てよ」

「はあ……まあ、ゲームだけどな」


村瀬さんが再びルーレットに手をかけた。


◇◆◇


「ようっし!俺の勝ち!俺に喧嘩売ったことを後悔しろ!」

「くぅ……」


結果は玲斗の勝ち。

誤差だけどね?

千円差だけどね?


「ほら、俺を崇め奉れ!」

「はいはい、まいりましたよ。孤高の王子様には敵いませんね」

「崇めてねぇ!」


そういえば、玲斗は孤高の王子様って呼ばれるのあんまり好きじゃなかったね。


「さて、罰ゲームは勝った方は負けた方の言うことを何でも聞くだが、俺の言うことを聞けよ?」


村瀬さんはかなり嫌そうな顔をしつつも「なに?」と言った。

かなり嫌そうだけど。

玲斗、この期に及んで「やっぱり付き合って!」とか言わないよね?

流石にもう脈ないからね?


「村瀬、俺に告った時のお前の心境を聞かせてくれ」


全員が玲斗の言葉を聞いて固まった。

そのデリカシーのなさは天下一品だ。

村瀬さんも呆れた顔をしている。


「ねぇ、デリカシーとかないの?」

「川島くん、それはないよ」

「えっ?えっ?」

「玲斗、流石に引くわ」

「未来に同感」


全員に全否定されて、玲斗はかなりテンパっている。

霧やんは机を叩きながら大爆笑している。

玲斗は目を点にして「えっ?」を連呼している。


「千佳。未来を廊下に連れて行って」


愛華が額に手を当てて言った。

え?

何で私を追い出すの?

え?

私は戸惑いながらも、千佳に部屋から連れ出された。

えぇ……。


「…………未来、部屋に行こう。ここじゃ聞こえる」

「何で?内緒話?」

「……そうだな」


私は千佳を連れて自分の部屋へ向かった。

千佳は私の部屋を見て苦笑した。


「本が増えたな」

「でしょー。これとかおすすめだよ」


私は一冊の本を千佳に渡した。

それは私が一番好きな本。

どの本もとっても面白くて大好きだけど、その本は群を抜いて好きなんだ。


「『すれ違う幼馴染』……?」

「そう!主人公は男の子で、幼い頃から幼馴染の女の子に恋をしているの!でも、女の子は自分のことを異性として見てない。そんな二人が送る、青春恋愛漫画だよ!」

「…………」

「あー……あんまり好きじゃなかった?」


千佳は目を逸らした。

そっか、男子はこういうの好きな人あんまりいないもんね。

千佳ならなおさらか。

私は千佳に背を向けて本を棚に戻した。

そこに覆いかぶさるように千佳が腕を置いた。


「え?千佳?」

「…………」

「どうしたの?」


千佳は何も言わない。

……この体制、明らかに壁ドンなんだよなぁ。

人が来たら絶対誤解されるやつ。


「千佳――」

「未来、覚えてるか?保育園の時、俺の名前が女の子みたいだって馬鹿にされてたときのこと」

「あっ……」


◇◆◇


あの日、私は一人の男の子を庇った。


「知ってるか?こいつの名前、女みたいなのに男なんだぜ!」

「え〜!マジかよ!」

「女じゃねぇのかよ!」


そうやって笑う男子を、私は木陰から見ていた。

いじめられてる男の子は、何を言うでもなくそこに立ち尽くしていた。

それを見て、私は余計に腹がたった。

気がつけば、その男の子と、いじめるやつらの間に立っていた。


「な、何だよ!」

「そんな風に人をいじめて楽しいの?」

「お前に関係ないだろ!」

「漫画の悪者みたい!」


私がそう言うと、いじめっ子は顔を赤くして怒った。

そして、拳を力強く握りしめた。


「馬鹿みたい!女の子みたいな名前でもいいじゃん!どんな名前でも、その人が最初にもらったプレゼントなんだから!名前のいいとこわかってない!」

「んだよ!お前とは話してないんだよ!引っ込んでろよ!」


その時私は頭に血が上った。

じゃあ、名前もお前らが馬鹿にしていいものじゃねぇだろって。

私はそいつらを叩いた。

めちゃくちゃペシペシ叩いた。


「ふう、こんなもんかな。次千佳の名前馬鹿にしたらグーだからね!」

「…………なんで庇った?」

「え?だって、千佳は自分の名前大好きでしょ?」

「…………」


◇◆◇


「そんなことがあったような、なかったような」


私は前を向いて、千佳を見た。

真剣な顔。

千佳ってこんな顔するんだ。


「未来は、忘れててもいい」


千佳は、ぽつりとつぶやいた。


「でも、俺はずっと覚えてた」

「……え?」

「名前を笑われても何も言えず、悔しくて情けなかった俺を、未来が庇ってくれた。……ずっと前のことなのに、俺は今でもずっと、鮮明に覚えてる」


千佳の声が、かすかに震えていた。


「未来が、俺の名前を守ってくれたあの日から……俺は未来のことが――」


心臓が跳ねた。

目が合った。

真剣かつ吸い込まれそうなその目に、私は身動きが取れなくなった。


「ずっと、ずっと好きだった」

みなさんこんにちは春咲菜花です!急に来たラブコメ展開(笑)いや、本当に急かなとは思ったんですけど、ずっとギャグはなぁ〜と思って入れました。そんなことはさておき、文化祭編は終わり、戻ってきた日常なのに、全然日常じゃないっていうね。「転落事故で入れ替わり!」も早くも二十六話ですよ。「早いなぁ、すごいなぁ、いつ終わるのかなぁ」と思っていく今日このごろ。まだ終わりませんが、どうかこれからもよろしくおねがいします!!それじゃあまた次回で!!

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