第二十一話 いるの!?いないの!?どっちなの!?川島玲斗の好きな人!!
前回までのあらすじ
色々あって孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わって同居をしている合崎未来!あと霧山瑠輝こと霧やんも同居してまーす!文化祭準備で何を考えてるかわからない元玲斗に告ったことがある村瀬恵麻とペアになった私!玲斗がフッた理由が知りたくて理由を聞いたんだけど、そこで玲斗に好きな人がいる疑惑が出てきたの!死ぬほど気になる玲斗の好きな人は!?
「あ〜、分かった。好きな人がいるんでしょ〜!」
「ゲッホゲホッゲホッ!!」
「玲斗ー!!」
玲斗が突如むせた。
予想以上の破壊力に背中ガッタンガッタンしてる。
霧やんがペットボトルの水を持って走ってくる。
そして、なぜかペットボトルのキャップが閉まった状態で玲斗に飲ませようと、口にぶっ刺した。
「はい、飲んで!!」
玲斗は一瞬戸惑ったが、すぐに口からペットボトルを引き抜いた。
「開けろや!! 何で未開封なんだよ!!」
「可哀想に。未来の不意打ちに殺されそうになるなんて」
「え〜?何〜?図干し〜?」
「おい!お前のせいだぞ霧やん!」
「責任転換ひでぇ。これに関しては未来が鋭かっただけじゃん」
ていうか、怖い、好きな人がいる以外に理由があるの?
玲斗はようやく呼吸を整えて、涙目でこっちを睨んできた。
「何が図干しだよ……!勝手に干すな俺の恋心!!」
こいつ図星の意味知ってんのか?
誰も玲斗の恋心なんて干してないし。
「じゃあ本当に好きな人いるの?」
「……いねぇよ!!」
「目を見て言え!!」
「…………いねぇよ」
玲斗の目線は冷蔵庫だ。
「冷蔵庫に愛を告げるな!!!」
「マジで冷蔵庫が可哀想すぎる。玲斗に何入れられるか分かったもんじゃない」
「おい!霧やん、冷蔵庫には俺の純情を入れるに決まってんだろ?」
「いらねっ。冷蔵庫から出して捨てとくわ」
「俺の純情を何だと思ってんだ」
「いや、冷蔵庫に向けて『いねぇよ』って真顔で言ってたやつが言うセリフじゃないからな?それにいつも玲斗冷蔵庫の心開けてるから好きってことだろ?」
そういえば、冷蔵庫と言えばあれ自動なんだよね。
手をかざせば誰にでも心を開く。
でも、玲斗はいつも普通に開ける。
こだわりがあるのかな。
これを機に訊いてみるか。
「玲斗、あいつの心は自動だから」
「ゑ?」
「え?」
同時に二重の「え?」が発生した。
私と玲斗が互いに相手の頭の中を確認するように数秒無言で見つめ合う。
霧やんがその様子を見て口を挟んできた。
「……え?って、お前ら、どの『え?』なの?」
玲斗が眉をひそめる。
「未来の『あいつはの心は自動だから』がまず意味不明なんだが」
「え?だって自動じゃん?あの冷蔵庫の心。センサーで開くやつでしょ?何でいっつも手で開けてんの?」
霧やんが冷蔵庫の方に言ってセンサーで開けた。
「…………急に開かれたらびっくり……するじゃん」
おっとこの反応。
玲斗はどうやら自動冷蔵庫だということを知らなかったようだ。
ボケにジョブチェンジしても誤魔化せんぞ。
「……俺と冷蔵庫は心で繋がってるんだよ!簡単に開いちゃいけない!信頼がないと!!」
「めんどくさっ!!冷蔵庫が一番振り回されてるじゃんそれ!」
「冷蔵庫からの信頼、なにで稼ぐの?こまめな掃除?」
霧やんが冷蔵庫を閉めてポテチを持ってきてから、興味深そうに訊いた。
「……中身の入れ方!ごちゃっとした配置にすると、信頼度が下がる」
「ゲームかよ!!」
私は思わず立ち上がった。
「ていうか、待って、玲斗。それってつまり、今『いねぇよ』って言ったとき、冷蔵庫の心も一緒に閉じたってこと?」
「……そう。今の俺の気持ちはマイナス1℃だ」
「ごめん、今気づいたけど私達今のところまともな会話できてない」
「ブハッ!!」
霧やんがついにポテチを吹き出した。
きったねぇな。
「ちょ、笑いすぎてポテチ鼻入った……やばい……!俺の鼻の中がコンソメ味!!」
「お前うすしお派じゃなかった?」
「間違えた!!うすしお味!」
霧やんがくしゃみとともにポテチを噴射しながら悶絶してる。
なんだろう。
テーブルの上に飛び散ったうすしおの欠片達が、無言でこちらを見ている気がする。
え、やだ怖い。
「俺、今なら鼻から食べる系男子って肩書いけると思う」
「それ誰が得するの?」
玲斗がようやくボケからツッコミにジョブチェンジして、深いため息をついた。
「……もう話戻すけどさ」
「お?まさか冷蔵庫との関係に進展が?」
「ちげぇよ!!村瀬の話だよ!」
私は霧やんと一緒にビシッと背筋を伸ばす。
ついに核心か?
それともまた急に冷蔵庫に告白する流れか?
「確かに俺には好きな人がいる」
「ねぇ、それってさ。つまり冷蔵庫と二股してるってこと?」
「話を冷蔵庫に戻すな!!」
玲斗が私にソファのクッションを投げてくる。
霧やんに命中。
おー、クリティカルヒット〜。
「わーお、未来に投げたつもりが完全に俺に直撃したよー」
「未来、なんで避けんだよ!」
「反射神経が優秀なんで。体育は二だよ」
「なんでや!!」
場がぐちゃぐちゃになったところで、玲斗がぽつりと続けた。
「……本当に好きな人がいたら村瀬に失礼だろ。そう思って断った」
「おお?」
「でもな。たまに考えるんだよ。俺がもし、入れ替わらなかったら――」
その時だった。
――ピーッピーッ
冷蔵庫が鳴った。
……開けっ放しにしてた霧やんのせいで。
「ちょ、冷蔵庫が共感して泣き始めたんだけど!?」
「やべぇ、今のタイミングで鳴るなよ……!」
玲斗が顔を真っ青にして冷蔵庫に駆け寄る。
「すまん!ちょっと感傷的になっただけなんだ!ドアは閉める!閉めるから!」
あっ、ついに会話し始めたよあの人。
さっき冷蔵庫は対象外みたいな顔してたのに。
私も霧やんも冷めた目で玲斗を見ていた。
玲斗が冷蔵庫のドアをそっと撫でるように閉めると、霧やんが鼻をすすりながら立ち上がった。
「……冷蔵庫との恋、終わったな」
「いや始まってもねぇわ!」
「でもあれじゃん、玲斗。あのタイミングでピーって鳴るとか、もう運命じゃん?」
「運命の相手が家電って嫌すぎる!!」
私は笑いながらソファに座り直した。
「で?さっき言いかけてたじゃん。入れ替わらなかったら……どうだったって?」
玲斗は一瞬こっちを見てすぐに視線を外した。
やっぱこういう話は照れるらしい。
「……もし入れ替わらなかったら、好きな人のこと何も知らなかったかもなんだよな」
「え?」
「だって俺、人と関わるの苦手で、好きな人とも全然話さなかったんだよな。未来と入れ替わって、その人をよく知ることができたんだよ」
さすが孤高の王子様。
人と関わるのが苦手発言いただきました〜!
「てか好きな人って誰なの?」
一瞬、空気が静かになった。
玲斗はゆっくり私の方を見た。
視線が真っすぐで、どこか覚悟がにじんでる。
おっ?
教えてくれるんか?
そう思ったのも束の間、すぐに玲斗は変顔をした。
あ?
「誰が言うかバーカ!」
「こんの野郎!!」
私は立ち上がって玲斗をボコそうとした。
玲斗は私よりも早く立ち上がって逃げた。
「あーっ!逃げんな!卑怯だ!」
「逃げるが勝ちですぅ〜」
「お前そういうとこやぞ!!」
霧やんは二階まで追いかけっこをしている私達を追ってこなかった。
一階で何してんのかな。
「やれやれ、それが答えだろうが」




