第十七話 クラスメイトはろくでもない!?文化祭の出し物決め!!
前回までのあらすじ
こんにちわんころりん!合崎未来だよっ!色々あって学年で孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わった私!同居も初めて約一ヶ月!デパートに買い物に行ったら同じクラスの霧山瑠輝、通称霧やんと会ったの!色々あって入れ替わってることをカミングアウト!霧やんに感動シーンはないのかと聞かれたけど、そうなる様子はなし!私達に言った言葉とは!?
「普通もっとパニクるだろ!? 映画だったらもっと深刻な顔で感動シーンとか来るだろ!」
「感動……?」
感動ねぇ……。
私は玲斗を見た。
玲斗も同じ事を思っていたようで、私を見て眉をひそめた。
「この状況で感動できるほど心広くないんだけど?」
「むしろ毎日怒りと羞恥で限界なんだが」
「だよねー」
玲斗と私は同時にうんうん頷いた。
霧やんはもうちょっと考えて物を言ったほうがいい。
「……マジで、なんで俺はこんな青春ラノベみたいな展開に巻き込まれてるんだ……」
「自業自得だよ。あんなポエムノート落とすから」
「俺が悪いのか!? お前らが拾って見たんだろうが!」
「誰に見られても一緒だよ。良かったね笑いながら落とし物センターに届けられなくて」
「良くねぇよ!!」
霧やんは机に突っ伏して、文字通り絶望のポーズをとった。
全く、それもこれも手さげを引きずってクソでかい穴を開けた霧やんの責任なのに。
玲斗は苦笑しながら言った。
「でもさ、なんかちょうど良かったじゃん。未来が拾って、俺が読んで、三人で共有ってことで」
「いや、最悪のパターンなんだけど!? 親にも見せたことない黒歴史をお前らに読まれて、しかも共有されたとか……! もう今日から黒歴史やんで呼ばれる人生始まるだろ」
「霧やん改め、クロやんか……」
「語感いいね。親しみやすい」
「やめろぉぉおお!!」
私はふとスマホを見た。
おっと、もうこんな時間か。
時間は五時を回っていた。
話に夢中になりすぎたな。
「そろそろ帰ろうか」
「そうだな」
私達はカフェを出て家に帰った。
私は背伸びをしながら玲斗と話していた。
「まさか霧やんがあんなポエム書いてたとはな。驚きなんだが」
「ね〜、私もびっくりしちゃったよ。でも、仲良くなれてよかった」
私は笑って言った。
玲斗はなぜかムスッとした。
「なに?もしかして霧やんのことあんまり好きじゃなかった?」
「別に」
「何なんだよ」
◇◆◇
「と、言うことで今日は文化祭の出し物で何をするかを決めたいと思います」
私達の中学では文化祭でクラス別に出し物をする。
親や学校内にいる先輩や後輩しか来ないような、高校よりもこじんまりとした文化祭だが割と人気がある。
「はーい!メイド喫茶!」
ベタかよ!
「カエルの解体ショー!」
地獄!
「バナナの皮向き対決!」
つまらん!
黙ってみていた先生が立ち上がった。
「いいかお前ら!文化祭は青春だ!メイド喫茶はともかく他のはどうなんだ!!」
「先生!青春は怒られるか怒られないかのギリギリをせめて楽しむものです!」
「カエルの解体ショーは怒られるわ!」
先生も良いツッコミしてるな。
「はーい!」
「合崎……。学級委員当てなくていい」
「酷くないですか!?」
酷くないですか!?
いや、いくら私が信用ならないとは言え酷くないですか!?
私の身体かわいそっ。
「脱出ゲームとかお化け屋敷とかどうですか?」
「合崎が」
「未来が」
「「まともなこと言ってる!!」」
こいつらよぉぉぉお!
私は玲斗を見た。
真顔だけど笑ってるよね!?
肩が震えてますよ!?
「プッ」
あいつ笑った!
今笑いましたよね!?
ちきしょぉぉおお!!
「人体パズル早組み対決!」
「川島くんの一日観察日記!」
「一旦これで投票する……」
マジかよ!
結果。
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メイド喫茶 3票
カエルの解体ショー 12票
バナナの皮向き対決 1票
脱出ゲーム 0票
お化け屋敷 14票
人体パズル早組み対決 1票
川島くんの一日観察日記 1票
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ということで!多数決の結果――」
先生が黒板を指さし、力強く言い放った。
「クラスの出し物は……お化け屋敷に決定!」
「「「「わあああああ!!」」」」
教室中が歓声に包まれた。
が、一部の生徒は俯いていた。
「カエルの解体ショーがよかった……」
「……カエル……俺のカエル……」
「せっかく実家の冷蔵庫に3匹ストックしてたのに……」
お前らやめろ。
言い方がホラー。
いや、マジで危なかった。
なんでカエルの解体ショーとお化け屋敷が僅差なわけ?
普通はカエルの解体ショーは0票でしょうが!
「ねぇ!川島くんの一日観察日記に入れたやつ誰!?」
玲斗が立ち上がった。
そりゃあ自分のことだもんな。
恥ずかしいのかな?
「…………」
「…………」
一瞬、クラスに重たい沈黙が走った。
そして、恥ずかしそうに手を上げた一人の人物。
「…………ごめん。ちょっと見てみたかった」
「霧やんんんんんんん!!お前だったのかああああああああ!!!」
ちょいちょいちょいちょい!
いくら霧やんが私達が入れ替わってるって知ってても、クラスメイトは知らないんだからバレそうな行動はしないでよ!
私は玲斗に目で圧をかけた。
「違う!ほんの軽いノリで!ノリで書いたらまさかの俺の一票だけだったなんて!」
「お前ぇぇええぇええ!!」
「未来」
私は私の名前を呼んだ。
やっぱり違和感しかないよぉ!
私はそんな感情を押し殺して私の身体を睨んだ。
「決まったことにケチはつけるな」
「や〜ん!川島くんかっちょいい〜!」
「流石川島だ」
え〜、褒められちゃった。
ぐへへ。
「じゃあ、来週から準備始めていくから役割を話し合っとけよ」
◇◆◇
「玲斗!お前は馬鹿か!」
「るせぇよ!馬鹿に馬鹿って言われたくねぇし!」
「はあ!?」
私と玲斗は家で喧嘩していた。
仕方ない。
「なんでバレそうな行動すんの!?馬鹿だろ!!」
「仕方ねぇだろ!?てか、これは霧やんが悪い!!」
「俺!?巻き込むなよ!!玲斗が未来の身体に入ってること忘れて暴走したせいだろ!」
私と玲斗の喧嘩は霧やんと玲斗の喧嘩に変換された。
私は立ち上がってキッチンからゼリーを持ってきて食べ始めた。
やっぱりゼリーはみかんに限る。
「そもそも『川島くんの一日観察日記』って何!?提案したやつもお前も普通にプライバシーの侵害だから!!」
「違う違う、そういう意味じゃなくて!川島in合崎がどう日常過ごすかって――」
「それを観察って言ってる時点でアウトなんだよ!変態か!」
私は二階に上がって、自分の部屋からハリセンを二本持った。
そして、一階に戻って玲斗を思いっ切り殴った。
「アベシッ!!」
「あんまり霧やんを責めないの」
玲斗が床に倒れこみながら頭を抱えて呻いた。
「いってぇ……!本気で叩くか普通!?」
「そりゃ叩くでしょ。私の名誉とプライバシーのためだもん」
「俺のためじゃないんだ。てかさぁ、お前ら入れ替わったまま文化祭とか正直めっちゃ燃えるじゃん?」
「青春ラブコメ脳かよ!!」
いや、今に始まったことじゃないだろ。
あったときから霧やんは厨二病なうえにオタク脳だったじゃん。
「ぶっちゃけ、準備期間始まったらもっとヤバいこと起きると思うから、喧嘩してる場合じゃないって」
「……どういう意味?」
私と玲斗は同時に霧山を睨んだ。
まさか、なにかするつもりなの?