第十二話 バレる?バレない?危ない駆け引き!!お互いのショッボイいたずら!!
前回までのあらすじ
みんな元気!?合崎未来だよ!なんだかんだで孤高の王子様と称される玲斗と入れ替わって同居を始めた私!いろんな困難を乗り越えてここにいるわけだけど、新たな壁にぶち当たったんだ。実は、クラスメイトが家まで来ちゃったの!私は玲斗の姿だから二階に身を隠してたんだけど、玲斗が低温ボォイスで喋るからバレそうになってるの!なんとかなるのかな?なんとかしてよ!?頑張れいと!上手いこと言ってやったぜ!!
「あれ?……合崎さんなんか今日、声違わない?」
おぉっと?
まずいぞ?
「えっ、ち、違うかなぁ?風邪で喉やられたっぽいんだよね……ガラガラで……」
「あー、なるほど。でもなんか背筋ピンとしてるし、今日ちょっと男前じゃない?」
「うっ……そ、そうかな?あっはっはっはー……」
笑い方やべぇだろ!
何だよ「あっはっはっはー」って。
「ていうか合崎さんの家、チャイムの音かわいいね。ぴーんぽーんって」
「ど、どうでもよくね?」
「うわっ、扱い雑!今日の合崎さん、キャラ変すごくない?」
「や、病み上がりだから……それより、あんま長居すると風邪うつっちゃうよ」
「確かにそう だね。じゃあ、また来週ね。お大事に〜。あ、課題は数学だけちょっと難しいから、わかんなかったらメールしてね!」
「お、おう……!」
そう言って、大崎さんは家から出ていった。
私も玲斗も気が抜けた。
私が下に降りると、玲斗は腰を抜かしていた。
「……あっぶな。マジで心臓止まるかと思った」
「玲斗の声低かったね」
私が言うと、玲斗は私をジトッとした目で見た。
「巡り巡って全部お前のせいだろ……。お前が階段から降ってこなければ」
「あれは仕方ないでしょ」
「入れ替わったときの第一声が『いやぁ、よかったぁ。階段にも車で事故った時に出るアレが付いてて。なんて名前だっけな?』だったのは以外だったな」
あれ?
そんなこと言ったっけ?
私が首を傾げると、玲斗は「自覚なかったのかよ」と笑った。
最近こいつよく笑うなぁ。
「言った!しかも真顔で『いやぁ〜助かった〜。さすがに階段にもエコバッグ標準装備の時代だわ〜』とか言いながら寝転がってたじゃん!」
「待って、流石にそれは嘘だね。私とてエアバッグとエコバックを間違えるようなことはしないって」
「エアバックの名前忘れてたやつがほざくな」
歩きながら話していると、急に玲斗が足の小指を押さえてうずくまった。
「うっ……いったぁ……!!」
どうやらテーブルの角に小指をぶつけたようだ。
「ブフッ、大丈夫?グフッ」
「笑うな!」
「小指クラッシャー玲斗さん!今宵もいいぶつけ方でしたな」
「実況すんな!!もう駄目だ。二度と歩けない」
「大丈夫、未来ちゃんの治癒力はラスボスの回りにいる魔物並みだから!」
「ざっこ!!」
私は玲斗に手を差し出した。
一瞬困ったような顔をした玲斗は私の手を取って立ち上がった。
「……入れ替わってから、俺のHPがゴリゴリ減ってく……」
「そんな可哀想な玲斗くんにはかき氷わんこそばの再チャレンジを――」
「誰がするか!!」
◇◆◇
「玲斗玲斗」
「ん?」
玲斗の名前を呼ぶと、玲斗が振り向いた。
私は笑顔で手の中にある物を見せた。
「はい!」
「うぼぉぉぉぉぉおおおわぁああああああぁぁあぁあああ!!」
玲斗は光の速度で私から距離を取った。
やっぱりいい反応。
どうやら玲斗は洗面所の方まで飛んでいったらしい。
私は廊下に出ておもちゃを洗面所の中に投げてドアを閉めた。
「ぎやぁぁぁぁあああああああぁあああ!!」
――ガタガタッ、ゴッ、バタバタッ、ゴンッ
しばらくしてからドアを開けると、汗だくの玲斗が不機嫌そうな顔をしながらゴミ箱を逆さまにして何かを捕まえていた。
「おい」
「何かな?」
「これは何だ」
「Gのおもちゃだよ」
「は?」
玲斗はおもちゃだと気づかなかったのか
私はゴミ箱をどけて、中からGのおもちゃを出した。
私は玲斗に微笑んで、ゴミ箱の中からツヤツヤしたGのおもちゃをひょいっと持ち上げた。
そして、玲斗に見せつけるように見せた。
「やめろぉぉぉぉおおお!!近づけるな!!マジで無理!!」
玲斗は壁に背中を思い切りぶつけて、スライドしながら床に崩れ落ちた。
そんなに?
おもちゃだよ?
「無理無理無理無理無理!!人類が滅ぼすべき四天王の一つだろコレ!!」
「いやそれは言い過ぎ。ゴキブリさんにも生活があるよ?」
「名前を口になすな!」
「そういうことじゃねぇ!!生活圏から出ていけって言ってんの!!」
どうやら玲斗氏はかなりGが嫌いなようだ。
まさか生活圏から出てけとまで言い出すなんて。
「じゃあこれ、玲斗の部屋に飾っておくね」
「おい、マジでやめろ」
本気の顔で言われたから流石にやりづらいな。
「……てかこれ、どこで買ったの?」
「百均のいたずらグッズコーナー。三個入りで税抜き百円。コスパ最強」
「税抜き言うな。ん?おいまさか……」
「うん、あと二匹いるよ」
「マジかよ!!一匹でも地獄なのに、軍隊かよ!!」
玲斗は真っ青な顔をした。
そして、落ち着いたのか冷静な顔に戻った。
「もういい!今日の昼飯担当は俺だったよな?それしまってゲームでもして待ってろ!」
「はーい」
玲斗は私を置いてキッチンに向かった。
ん?
あれ?
キッチン?
「……あ゙っ」
「ぎぃやぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁああああ!!」
キッチンから響き渡る悲鳴。
その声には、絶望、混乱、怒り、全てが凝縮されていた。
私はそっとリビングのドアの影から顔を出して様子をうかがう。
玲斗はとんでもない目つきで私を睨んでいた。
「おい」
「えっと……忘れてた!」
「忘れてたじゃねぇよ!!なんでこんな完璧なトラップ構成なんだよ!!」
「いやほら、せっかく三匹入ってるし……使わなきゃもったいないかなって」
「未来お前マジで覚えとけ」
その顔には復讐の炎が燃えていた。
あれ?
なんか嫌な予感が……。
◇◆◇
「どうぞ、召し上がれ」
玲斗はニヤニヤしながら私の前にサラダとパスタを置いてきた。
サラダにはミズナとかいわれ、パスタには唐辛子粉みたいなのがかかっている。
こいつ覚えてやがったか。
「……ねぇ、これ、何パスタ?」
「ペペロンチーノ。カッコ地獄盛りカッコ閉じる」
「副題やめて」
私は玲斗のペペロンチーノ(地獄盛り)を一口、恐る恐る食べた。