第十一話 合崎未来は看病上手!?元気になった私の身体!!
前回までのあらすじ
ち〜す!合崎未来だよ!?なんやかんやで孤高の王子様と称される川島玲斗と入れ替わっちゃった!色々と玲斗と距離を詰めてたんだけど、玲斗が私の身体で熱を出しちゃったんだ!しかもリビングで倒れてるとか!もう信じられない!あれほど無理はするなって言ったのに!そんな感じで私は玲斗の看病をすることになったの。これからどうなるのかな?
――ドサッ
そんな音が聞こえて、急いでリビングに入った。
そこには玲斗が倒れていた。
「全く、言わんこっちゃない」
私は玲斗の前に立った。
「私の体なんだから、大事にしてよね」
口元に手を当てて呼吸を確認する。
ちょっと荒いかもしれないけど、呼吸はできている。
玲斗は氷枕を持っていた。
倒れた時にぶちまけてしまったのか、周りは水浸しだ。
「だから無理は禁物って言ったのに。私の体、風邪ひくと結構しんどくなるからさ」
私は玲斗を二階におぶって行った。
玲斗の体は割としっかりしてて、筋肉とかもあるから軽々と持ち上げれた。
私の部屋からパジャマの替えを持ってきて、今着ている服を脱がせて着替えさせた。
汗だくだったからね。
その後、床を拭いて、氷枕に氷を入れて、玲斗に冷えピタを貼って、汗を拭いた。
お母さん達が私の看病をしてくれたなら、仕事なんてできっこなかっただろう。
私は私の手を握った。
「健康体じゃなくてごめんね」
◇◆◇
「……らい!未来!」
誰かが私のことを起こしている。
おかしいな。
誰も私のこと起こしてくれないはずなのに。
私はゆっくりと目を開けた。
あぁ、そっか。
そうだった。
今は玲斗がいるんだ。
「あぁ、玲斗おはよ〜」
「おはようじゃない!何でいるんだよ!」
玲斗は鬼の形相で私に訊いた。
「早退した」
「……は?」
玲斗は拍子抜け多様な顔をした。
びっくりされているのかな?
「五、六限は自習だったから、今預かってる知り合いの子が熱出してるって言って帰ってきた」
私はあくびをしながら呑気に言った。
「ほんっとに馬鹿だな」
玲斗は呆れたような顔と声をして言った。
だいぶ落ち着いたのか、いつもの調子な気がする。
「はぁ!?夏風邪引く馬鹿な玲斗には言われたくないんですけど〜!」
「いや、お前の方が馬鹿だよ」
私はその時初めて、玲斗の心の底からの笑みを見た。
私も思わずそれに返した。
◇◆◇
――翌日
「おー、私の体にしては早い回復」
「確かに。お前下手したら二週間くらい長引くだろ?」
「え?何で知ってんの?キモ」
「言葉を選べ言葉を!」
玲斗は思いのほかすぐに元気になった。
ツッコミも力ないものではなくなった。
凄まじい生命力だ。
「ていうか、何で熱出したの?」
「お前のせいだろうが!」
「何で?」
「お前が急に『冷房キンキンのなかでわんこそば、かき氷バージョンやろ〜!』とか言うからだろ」
あー、あれか。
昨日私達は馬鹿なことをした。
体が入れ替わった状態でどれだけかき氷が食べられるか気になったから、玲斗とやったのだ。
結果は私の圧勝だったけど、内部からも外部からも冷たいものに攻撃された私の体は冷え切ってしまい、風邪をひいたとな。
「……正直、病弱なの忘れてた!」
「こいつよぉ。……にしても、お前看病に慣れすぎじゃないか?」
玲斗が首を傾げて聞いてきた。
看病が得意なんて言われたことないから、私も首を傾げた。
数秒経ってから言葉の意味を理解した。
人間って理解に時間がかかることがあるよね。
「私、自分の看病は自分でしてたから」
「……は?」
「両親は働き詰めだし、お姉ちゃんは家にあんまりいないしで、私は自分の看病自分でやってたんだよ」
玲斗は眉をひそめて私を見ている。
あれ?
共働きってこんなもんじゃないの?
「親は仕事休んだりしないのか?」
「え?あぁ、休んでくれようとしたよ。でも、迷惑かけたくないから、平気だって言って一人で対処してたんだよ」
「驚いたな。お前は遠慮なくものを言ったりするタイプだと思ってた」
「おいてめぇ」
今日も今日とて玲斗の毒舌ツッコミは健在だなぁ。
「結論、合崎未来は美人な上に気遣いもできる!」
「逆だ馬鹿。顔面偏差値一般的な人に心配をかけるプロだな」
玲斗は無表情で言った。
なにか含みを感じるけど、何も分からない。
玲斗は何がいいたいんだろう。
私が首を傾げると、玲斗はフンと鼻で笑った。
「お前は両親に迷惑はかけなかったが、心配はかけてたんだよ」
私は思わず言葉を失った。
心配をかけてた?
「……え?私そんなこと……」
「本人が気づかないから、親は余計に気を揉むんだよ」
玲斗は私の声を遮るように言った。
その目はいつになく真っ直ぐだった。
「朝はちゃんと起きるし、家のことも手伝ってる。成績だって理科を除けばさほど悪くないし、言いたいことは言う。……問題がないように見える子って、実は一番、親が不安になるんだよ」
「……」
「馬鹿はやっぱりお前だよ」
「馬鹿馬鹿言うな。玲斗も馬鹿だよバーカ」
「カバになれアホ」
「地獄に落ちろ小一」
そんな軽い会話を交わしていると、硬い表情だった私達は二人で笑った。
やっぱり私達には真剣な会話は似合わないや。
――ピーンポーン
玄関のチャイムが鳴った。
「誰だろう。不審者かな?」
「何でそうなる」
私は玄関に行って靴を履き替えた。
玲斗が焦った様子で私のところに来た。
「おい、俺が出たほうが違和感ないだろ」
「え?でも近所の人だったら……」
「合崎さーん!昨日と今日の分のプリントと課題を持ってきたよ〜!」
「……うわっ、大崎さんじゃん!」
そういえば、大崎さんの家近かったなぁ……。
「ごめん玲斗。受け取っておいて」
私は急いで靴を脱いで、階段の方に行った。
そして、二階の階段の仕切りから少しだけ顔を出して話を聞くことにした。
頼むぞ玲斗。
お前の演技にかかっているんだ。
まぁ、普段の玲斗の演技からして大丈夫だと思うけど。
「あ、やっと開けてくれた〜!はい、プリント」
「……あ、どうも。ありがと」
玲斗さん!?
声低くなってますけど!?
「あれ?……合崎さんなんか今日、声違わない?」
おぉっと?
まずいぞ?