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異界の旅人(仮題)  作者: 藤野
1/1

プロローグ

初投稿です

感想、誤字脱字報告よろしくお願いします

 

 

 キーンコーンカーンコーン


 と、眠たい6時間目の教室にチャイムが鳴り響く。

 …やっと今日の授業も終わりだ。

 半分眠りながら聞いていた古典の授業の用具をさっさと片付けて、帰宅の準備をする。


「みずきー、一緒に帰ろー」


 なんとも気の抜けた声が自分の後ろから聞こえてくる。


「おう、行こうぜ」


 話しかけてきた女子の名前は花倉美咲。俺が赤ん坊だった時から一緒に育ってきた幼馴染だ。

 彼女の家と我が家はとても近く、靴を履いて30秒も歩いたら着いてしまうような距離だ。

 なので高校生になって2か月が経過した今もこうして一緒に帰ることがある。

 俺も美咲も部活には所属していないため、何か用事がない限りは帰る時間帯が同じになってしまうのだ。

 今日は別に用事はないため、一緒に帰ることにする。


 教室を出て下駄箱に向かう。


「もうすぐ期末テストだねー」

「んー、そうだな。と言っても何か特別に勉強するわけでもないしな。そんな変わらねーよ」

「いいよね瑞樹は!全然勉強してるイメージないのに余裕で平均点あるからさー」

「家でちゃんと復習してるからな。…逆になんでお前は高校1年生の時点で赤点になりかけているんだよ…」

「だって…。…高校の授業眠くなっちゃうもん。私は悪くないですー」

「お前なぁ…。昼飯以外にもお菓子たくさん食ってるからだろ。ついでに太っても知らんぞ?」

「あー!瑞樹ひっどい!こんな可愛いJKにそんなこと言っちゃうんだ!」

「可愛いとか自分で言うなよ…」


 そんなくだらない会話をしながら、靴を履き替えて校舎の外に出る。

 6月になって梅雨に片足を踏み込み、雨が降ることが増えてきたが、珍しく今日は快晴だ。

 俺も美咲も高校には歩きで通っているため、自転車通学の奴らのようにただでさえ蒸し暑い中でカッパを着るという地獄を味わうわけではないが、それでも嫌なものは嫌だ。


 俺たちが通っているのは県立の銀楓台高校という高校だ。

 俺と美咲の中学校と比較的近く、この辺りは坂道も少ないため、こうして歩いて帰っているというわけだ。

 

「うわ、今日もあっつい…」

「それな。今でさえこんななのに、本格的な夏が始まったら一体どうなっちゃうのやら」

「考えたくもない…」

「でも夏休みには学園祭の準備とかあるからな。中学のあんなちゃっちいもんとは規模が違うわけだし、楽しみだな」

「ね!うちらも夏休み前にクラス発表のお題決めするって言ってたし。ほんと楽しみ!」

「でも赤点とったら強制補修で参加できないけどな」

「…」

「まぁ期末テストまでまだ1週間以上あるわけだし、なんとかなるだろ」

「ねえ瑞樹さ」

「言っておくけど、一緒に勉強しよって言うのは無しだぞ?」

「えー!?なんで!?」

「だってお前俺の部屋来ても漫画読むだけじゃんか」

「そ、それは…」


 そう、こいつとは中学生のころから一緒に勉強することはあったが、こいつは本当に勉強をしないのだ。

 テスト期間に入っては俺の部屋に来て一緒に勉強しようと誘ってきていたが、こいつが30分以上ペンを握っているところを見たことがない。

 高校生になり、こいつも勉強するようになったかと思って前回の中間テストは一緒に勉強したが…。やはり人は簡単には変わらないようだ。


「そんなこと言わずにさぁ。ねーお願いー」

「ダメなもんはダメ」

「えー…」


 こいつにとってこの銀楓台高校は少し…いや、かなり上の高校であるので、なぜその中で勉強をしないのか分からん。

 やはりここは俺が心を鬼にしてやらないとな。

 …と言いつつも、結局は一緒にやることになるんだろうなぁ。

 

 俺はこいつが俺と一緒の高校に行こうと、中3のころ必死に勉強していたことを知っているからだ。

 そんなこと知ったらこいつに厳しくなるのは無理だ。普通に嬉しいもん。

 …でも絶対にこのことは本人には言わない。絶対に調子に乗るからな。


 隣でうーんうーんと頭を悩ませている幼馴染を見ながら、高校生になってもこいつと日常生活を送れることを素直に嬉しく思う。


「安心しろ。遺骨は拾う」

「なんで赤点前提なのよ!」


 プリプリ怒っているこいつを見て、ついつい頬が緩んでしまう。

 今はまだ幼馴染止まりであるが、いつか…そうだな…学園祭後にでも。


 そう考えていつもの帰り道を歩いていると、見知らぬ自販機が立っているのが見えてきた。

 …今朝あそこにあんなの立っていたか?

 まあ気にするほどのことでもないか。

 自販機なんて数時間あったら稼働させることもできるだろうし。


「まあ期末テストのことは一旦置いといてさ。美咲、あそこの自販機行こうぜ」

「こっちは本気で悩んでるんだけど…。あれ?今朝あそこに自販機なんて立ってたっけ?」

「うーん、多分立っていなかったと思うけど…。まあそんな気にすることでもないだろ?」

「それもそーだね。じゃあ暑いし早く行こ!」


 こいつ切り替え早いなぁと思いつつ、一緒に自販機に向かう。


「何買おっかなー。…あ!瑞樹、これ見てよ!」

「ん、どーしたんだ?」

「ほらこれ!このジュース小さい頃よく買って飲んでたやつじゃん!懐かしいなあ」

「うわ、ほんとじゃん。え、俺このジュース販売終了したって聞いてたんだけど…。」

「でも実際売ってるからさ、実は再販したとかじゃない?」


 そう言って美咲は躊躇せずに懐かしのジュースを購入した。


 ガコンっという音が鳴って問題なくジュースが落ちてきた。


「んー、賞味期限は…。大丈夫そうだね。つい最近作られたものだと思うよー」

「まじか。って言うことはほんとに再販してたんだなぁ」

「そーゆうことっしょ。まあ瑞樹も早く買いなよ」


 ペットボトルを開けるとプシッと軽快な音が鳴り、美咲がゴクゴクと飲み始めた。

 …どうやら新品というのは本当らしい。

 ならばと俺も買ってみる。


 俺のも問題なく購入でき、恐る恐る一口飲んでみた。


「うわっ、ほんとじゃん。昔のまんまだ」

「でしょ?だから言ったのに」

「いやでも俄には信じられないだろ」

「まあそれもそうだね」


 美咲とそんなことを話しながら懐かしのジュースを味わっていく。

 …まさか突如作られた自販機でこのジュースが売られているなんてな。

 この幸運を信じてもいない神様に感謝しながら、ちびちびとジュースを飲んでいた。


 …そんな時であった。小さな女の子が前方の道路で座り込んでいるのを見たのは。


 それはまさに突然のことであった。

 別にその道路を注意深く観察していたわけではないが、俺は美咲と話している間、自販機に背を向けてずっと前の方を見ていた。

 だから視界に誰かが入ってくるのであれば、気づかないはずがない。

 それはまさしく、突然そこに現れたとしか形容できない出来事であった。


「え、いつの間に…」

「ん?瑞樹どうしたの?」

「いや、あんなところに子供がいるからさ。しかもいきなり現れたし」


 そう言って俺はその子に近づいて道路から離れさせようとする。

 ここは大通りではないため、塀などで死角が多く、車が来ても気づかないかもしれない。

 その子までの距離は10メートルほどであるので、飲みかけのペットボトルに蓋をしてすぐに向かおうとした。

 しかし、向かおうとした足は美咲の一言で止まってしまった。


「え、どこに?」


 俺は美咲が何を言っているのか分からなかった。


「え、いや、どこって…ほら目の前の道路にいるじゃんか」

「え、なになに、もしかして私をビビらせようとしてる?」

「は?」


 俺は本気で困惑した。

 美咲が冗談を言っているようには見えず、本当に子供がどこにいるのか分からない様子だったからだ。

 そもそも美咲は子供が危ない状況にいて、こんな冗談を言うようなやつじゃない。

 だからこそ俺は一層混乱した。


「いや、だからそこに…」


 俺は困惑しながらも美咲の真意を問いただそうとした。

しかし俺は美咲に問いかけるよりも先に自然と足が少女に向かって動き出していた。

 少女に向かっていく自家用車が目に入ったからだ。


「え、ちょっと瑞樹!?車来てるよ!?」


 俺は美咲の声を聞き流し、少女を助けるために一直線に向かっていった。

 幸い、車がここに来るまでに多少の時間の余裕はある。

 これなら間に合うと少し安心しながら、少女の元に駆けつける。


「ほら君、早くこっちに!」


 そう言って俺は少女の手を掴み、多少乱暴になってしまうのを申し訳なく思いながら引っ張っていこうとした。


 そう、引っ張っていこうとはしたのだ。


 なぜかその子はびくともしなかった。


 俺は高校生男子として重くはないが、決してガリガリなわけではない。

 その少女もまた普通の体型で、普通に考えて高校生男子の自分が小学生程度の女の子を引っ張って動くことのできない道理はない。


 わけが分からなかった。


 思えば今日は不思議なことばかりであった。突然いつもの帰り道に自販機が現れ、何年も前に販売停止したジュースが売られており、目の前に突然少女が現れ、高校生の自分が小学生女子をぴくりとも動かせないでいる。

 果てにはなぜか手を離すこともできない。


 …あまりに不可解な状況に思考が働かず、さらには車がどんどん近づいてきている状況で、現実逃避とも言える考えが浮かんできていた。


 美咲が焦ったように声をかけてくるのを僅かに感じながらどうしようもできずに固まっている頃、その声を俺は確かに聞いたのだ。


「みーつけた」


 と。


 可愛らしげなその声を聞いた直後に、上半身に

凄まじい衝撃を受けた。

 俺は車と衝突した後に何メートルも吹き飛ばされ、壁に激突した。


(ぐっ…いっっっってぇ…)


 声は出せない。

 なんとか体を動かそうとするが、力が入らずに座ったまま真横に倒れる。

 時間が経っても何にもできない。

 朦朧としていく意識の中で、美咲が撥ねられた俺に寄り添っては何か言ってくるが、何を言っているのかは全く分からなかった。

 ただただ寒くなっていく。


(ああ、俺は死ぬんだな)


 そんなふうに考え、意識が暗転する。


 最後に見た掠れた視界の中に、無傷の少女が笑顔でこちらに手を振っているのが見えた。



――――――――――――――



(…ん)


 俺の意識は誰かの泣き声を契機に目覚めた。

 しかし意識が目覚めても体を満足に動かすことが叶わない。

 しかも目も開けることができず、周囲の確認をすることもできない。


(一体ここは…?しかも誰が泣いているんだ?)


 詳しい時間は分からないが、何分か経って泣き声が落ち着いた頃、ようやく視界に光が差し込み始めた。


(ようやくか…。それにしても体だけじゃなくて声も出せないなんて…。どれだけ重症だったんだ?)


 と恐れながらも目を開けていく。

 そこで目に入ってきたのは…


 全く知らない女性と男性の顔であった。


(ん…?は…?え…?)


 初めはここは病院で、彼女らは看護師と医者かなとも考えた。

 でも絶対違う。まず白衣着てないし、そして顔がめっちゃ近い。主に女の人に。っていうか女の人めっちゃ綺麗だし、男の人めっちゃダンディーでかっけぇ…。

 いや、違う違う。


 俺は困惑した。それはもうつい先ほど少女の手を引こうとしてびくともしなかった時と同じくらい。

 それでもって彼女らが何かを自分に話しかけているのはわかるのだが、如何せん何を言っているのか理解ができない。

 日本語とも英語とも違うようだ。


 混乱する最中、俺の頭の中に一つの仮説が浮かび上がってきた。


 意識を失う直前に致命傷と言っても過言ではないほどのダメージを受け、目が覚めたら知らない人に理解できない言語。

 それに俺の趣味の知識を加えて導き出される答えは…


(もしかして俺…転生しちゃった?)



拝啓 家族と美咲へ


どうやら俺は少女に力負けして車に撥ねられてたあげく死んでしまい、その果てに転生してしまったようです。

しかも言葉とか全くわかんない。

お願い助けて。


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