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サブキャラ短編集

春が終わる

作者: 理春

俺が高校生の頃、書いた小説を冗談半分で賞に応募したことがあった。

タイトルは「春が終わる。」

中学の頃から構成を練って温めていたストーリーを、約5年程かけて書いた長編小説だった。

そして何故か、それはあれよあれよと選考を通過し、誰もが知る名だたる賞にノミネートされた。

自分でも何が何だかわからなかったし、そこまで作品に手ごたえを感じていたわけでもない。

何かの冗談だろ・・・と思ってしまう程だった。

もちろんどこかの出版社に所属しているわけではなかった。

だが当時、無名の高校生がノミネートされたとなっては、世間は黙っているはずもなく、メディアの取材が何件か俺を訪ねて来た。

作品を書いたきっかけは?

製作期間は?

プロになる意志は?

ファンへのメッセージは?


色んなことを聞かれた。

けれど俺はその時受験勉強真っ只中。

ひょんなことから応募することになって、何の気もなしにとんとん拍子で事が運んだ、なんて答えることも出来ず、出来る限り当たり障りない回答をして、プロになる意志もないということを伝えた。

そんな夢の中にいるような現実感のないことに、将来をかけられるかっての・・・。

たまたま投げた石が運よく鳥にあたって目の前に落ちて来たような、棚から牡丹餅状態で、何でそれで食っていきますなんて思えるよ。


「暁人、ホントにプロ目指さないの?」


俺の作品を読むのが好きだった姉は、よくそんなことを俺に問いかけていた。

もちろん取材を受けていた頃も、何度も何度も聞いてきたもんだ。

その度にあしらっていたものだけど、それでも夢を語る姉に、最終的にはこう言った。


「くどいなぁ・・・趣味で書いてんのが一番楽しいんだって。商業作家になんてなったら、その楽しみを奪われるんだよ。今起こってることはたまたまなの、俺は大学行って就職すんの。」


高校生の俺のそんな一ミリも夢を語らない様に、姉はいつも残念そうにしていたけど、俺は姉に感想をもらえて、楽しそうにしてくれてるだけで十分だった。

結局「春が終わる。」は、少しだけ話題にはなったものの、受賞することは叶わず、世に出して残しておいた方がいいと後押ししてくれた一出版社の力を借りて、発売することが出来た。

それだけでもう万々歳だ。


俺はその後宣言した通り、第一志望の大学に受かって、就職先も志望した会社へ入社することが出来た。

正直、勉強も就職活動も、自信があって臨んでいるわけではなかった。

死ぬ程努力して勝ち取ったもんだ。

そんな俺を母と姉はいつも支えてくれて、成果が出た後は毎回盛大にお祝いしてくれた。

母は父の再婚相手で俺は連れ子なので、二人と血は繋がっていないけど、昔から仲良く家族同然に暮らしていた。

父が小学生の頃亡くなった後も、それは変わることなく、ごくごくどこにでもいる仲のいい家族だ。

横浜に住んでいた俺たち家族は、姉が先に就職して家を出て、その後俺も就職を理由に東京へ出た。

そこまで近いというわけではないけど、たまに姉のうちへ顔を出すことはあれど、最近はめっきり電話をするくらいなもんだった。

まぁ実際の姉弟なんてそんなもんだと思う。

けれど俺にとって姉は、有名になりかけたあの作品を書いた少し前から、あまり家族という意識ではなかった。


そんなある日、新社会人としての春を迎えようとしていた少し前、姉に電話をかけた際、彼氏が出来たと聞かされた。

その時だった。俺の胸の中で、どれ程努力することに苦しんでも経験したことのない、煮えたぎるような悔しさを覚えた。

いつものように他愛ないやり取りで通話を終え、俺は特に変わり映えしないスマホの画面を呆然と見つめていた。


小百合を、誰にも渡したくない


それから時々姉とメッセージのやり取りをして、久々に部屋を訪れた際、付き合って半年以上経つという彼氏の話を改めて聞いた。


「んで・・・小百合の彼氏ってどんな人?」


「え~?何よ、藪から棒に・・・」


こちとらそれが気になって仕方ない日々を過ごしてんだよ・・・


「・・・25年間彼氏出来たことない姉が、どんな男捕まえたのか気になるだろうが。」


小百合は照れくさそうな笑顔を落として、何気なく説明し始めた。


「えっとねぇ・・・私より10歳年上で、元々外科医をしてた先生なんだけど、今は・・・実業家って言っていいのかな?会社をいくつか経営してて・・・でもいずれは内科、小児科医として開業したいなぁって話してたかなぁ・・・。すっごく優しくて真面目な人よ。」


「・・・・・・・はぁ・・・?」


思っていた以上にありえない回答が返ってきて、俺は思わず耳を疑った。


「え・・・いや・・・ガチで?」


「・・・・?うん。」


姉は平然とコーヒーを注ぎながら上機嫌だ。


「それが本当なら・・・小百合騙されてんじゃねぇの?もしくは遊ばれてるよ。」


俺がハッキリそう言うと、小百合はクスクス笑った。


「そうだよねぇ、私も逆の立場だったら絶対そう思う。あんないい人が私と付き合ってくれるわけない!って思ってたし・・・。おまけに高学歴で高身長でね、お顔もめちゃくちゃイケメンなんだから。」


小百合はそう言って、ツーショットの写真を俺に見せた。


「・・・・・・ん?この人どっかで・・・」


「そうだ、こないだ電話したときも言ったけどさ、更夜さん暁人が書いた『春が終わる。』の大ファンだからさ、会ってみたいって話してたよ?良かったら今度一緒におうちに行かない?」


記憶の中を探りながら、小百合の言葉を右から左に流していた。

どこかで・・・いや、何度か見た覚えあるような・・・


「小百合、その人のフルネームは?」


「島咲更夜さん。知ってる?」


「島咲・・・って・・・え!!?あの!?財閥解体した島咲家!?更夜って当主じゃん!」


「・・・そうよ。よく知ってるね・・・。」


「はぁ~?良く知ってるも何も、テレビで結構報道されてただろ!三大財閥の当主の名前くらい聞き覚えあるって!嘘だろ・・・・・嘘だよな・・・・どういうことだよ。小百合なんかしたの?」


「なんかってなによ・・・」


小百合は少し悲しそうな表情でソファの隣に腰かけた。


「いやいや・・・おかしいって普通に考えて。そんな日本を代表する財閥の当主がさ、どこにでもいるアパレル業に勤めてる25歳と付き合うわけねぇじゃん!普通どっかの名家のお嬢様とか、社長令嬢とかと結婚してるもんだろ!?てか・・・既婚者だよな?その人・・・」


「・・・もちろん若い頃に結婚してらっしゃったけど・・・奥様は10年以上前に亡くなってるから・・・」


「・・・へぇ・・・そうだったんだ・・・。確かに当主の情報って本人のことは色々書いてあるけど、奥方や子供の話って一切書かれてないもんなぁ・・・。ゴシップ誌にすらそんな情報でねぇし・・・。」


呑気にコーヒーを飲む姉を見ながら、考え込んだ。


「なぁ小百合・・・止めといたほうがいいって・・・。」


「何が?」


「何がじゃねぇって・・・そんな世間知らずだから付け込まれてんだよ・・・。財閥関係者って政府とか警察関係者とか、裏社会の人間とも繋がりある人だろ?だから邪魔になるような情報が一切出回ってないんだよ・・・。当主ともあろう人が、何も裏もなしに小百合と付き合うわけねぇし・・・何か利用しようとしてんじゃねぇの?そんなヤクザと繋がってたような人と付き合ってていいのかよ。最悪、いつか海外に売り飛ばされたりするぞ。」


俺がそこまで言うと流石に怒るかと思ったけど、小百合は思っていたより冷静に、悟ったような目をした。


「そうかもね。私も素性を知ってから結構調べたよ?でもそこまで詳しい情報は出ないから、本人におうちのこと聞くことはあったけど、別に後ろめたいことがあっても話してくれたよ。家族の話も聞いたし、そういう人達と直接的につながってなくても、関わってたことは確かだって言ってた。そりゃお付き合いしていく上で、気になることも多いけど、別に話す必要のないことは話してないだけで、更夜さんはいっつも誠実に答えてくれてるよ。暁人がそういう心配するのもわかるけどね・・・。」


小百合はまた一口コーヒーを飲んで、ふぅと息をつく。


「だからこそ会ってみてほしいの。」


真っすぐな目でそう言われて、俺は頭の中でその財閥の当主とやらを思い浮かべた。

まったく別世界に住んでるような環境で育って生きて来た人間と、一般人がどう付き合うってんだ?


「わかった・・・でも俺入社したばっかでめっちゃ忙しいし、余裕ねぇからさ・・・。盆明けてからとかでいい?」


「もちろんいいよ。暁人に合わせるから。」


不安しかねぇ・・・

ただでさえ仕事で天手古舞なのに・・・心配事増やしてくれてんじぇねぇよまったく・・・

ソファにダラっと寛いで、同じくコーヒーに口をつけた。


「・・・うまいね、このコーヒー・・・。」


俺が話しを逸らすようにそう言うと、小百合はパッと嬉しそうな笑顔で言った。


「そうでしょ?更夜さんが勧めてくれたお店で買ってみたの。ちょっとお値段はするけど、全然違うよねぇ!」


無邪気に嬉々とする姉を見て、癒されるのと同時に、切ない気分がこみあげてくる。

人の気も知らねぇで・・・。


それから仕事に追われる日々を送りながらも、小百合から時々メッセージをもらっていた。

仕事の話を聞いたりするのが主だけど、たまにこんなデートをしただの、こんな小説を勧められて貸してもらっただの、嬉しそうに惚気てきた。

俺は内心、うるせぇばーかと思いつつも、本当に心底幸せそうにしている小百合を想うと、嬉しいような寂しいような気持ちが渦巻いていた。

やっときた春に、浮かれてんのかねぇ・・・

俺の心配をよそに順調に付き合いを進めていた姉は、盆休みも近くなった頃、二人で実家に帰ろうとメッセージをよこしてきて、しょうがなく日程を合わせて帰省した。


家に着くなり母の料理の手伝いをしながら、小百合は雑談していた流れで、彼氏の話をし出した。


「お母さんにも挨拶したいって更夜さん言ってたよ。」


「まぁ、そうなの?じゃあ一緒にお伺いしようかしらね。」


「ううん、こっちから行くって言ってたから、来てほしいわけじゃないのよ。呼びつけるのは申し訳ないからって。」


「あらぁ・・・そんな気ぃつかっていただいてぇ・・・」


ヤキモキしながらその会話を耳にして、寛いでいた和室で、目の前のテレビの画面は頭に入ってこなかった。


「母さん、俺が先に挨拶行くから。どんな人かちゃんと見定めてくるから。小百合がただただいい男に騙されて有頂天になってるだけって可能性も無きにしも非ずなんだからさ。」


「え~?またそんなこと言う~。」


小百合は不貞腐れた顔をしながら、缶ビールを二つ持ってテーブルについた。


「そうだろうが・・・。じゃあ自分が男を見る目あるって自信持って言えるか?」


「何よ~人のこと言えないくせに~!暁人だって彼女の一人や二人いたことあるの~?」


「あるわ!今はいねぇけど・・・。俺の話じゃなくて、母さんに会わせるより・・・もしなんか怪しいこと言い出したら俺が関わらないように牽制出来るかもしんねぇじゃん・・・。母さんは小百合以上に財閥のことなんて何も知らねぇって・・・」


俺が小声でそう言うと、小百合は呆れたような顔をしてビールを開けた。


「はいはい・・・。好きにしていいよ。きっと拍子抜けするよ?更夜さんただの良い人だし。」


「・・・ビール直のみすんの?」


「違うわよ、これお父さんのお供え用・・・あ・・・間違って開けちゃった。こっちお供え用にしよ。グラス出すから暁人これ飲んでいいよ。」


尚も呑気な小百合を眺めながら、この盆休みの期間、元当主とやらに何をどう聞こうか色々考えていた。

一般人でしかない小百合と付き合う理由を聞きたい。利用価値もないし・・・。

どんな回答をされるか未知な上に、ネットで調べても見た目や立場、職歴の情報は出てきても、人柄がどういうものかは全く知り得なかった。

そのあたりは小百合に聞いた方が早い気もするが、果たしてそれが正しいのかさえ疑わしい。

何か裏があんなら、猫被ってるに違いない・・・。

ちょっとでも怪しいこと言い出したら化けの皮剝いでやる・・・。


仲良く夕食の準備をする二人を見ながら、もう少し冷静になってみると、会って話したところで何か不利な情報を漏らすと思えない。

そもそもそんな人達と関わることなんて俺たちはないわけだから、どういうことを聞き返してくるのかもわからないし、下手なことを聞いたら逆鱗に触れるかもしれない。

そうなったら社会的に消されたりすんのかな・・・。

けどそうだとしたら、小百合がのうのうと付き合えてるわけないか・・?

やっべぇわかんねぇ・・・


注いだビールの泡がとっくに消えてしまい、俺はテーブルに突っ伏した。


盆が明けて、季節の終わりを告げるように台風が過ぎ去った頃、また姉から連絡が入った。

どうやら彼氏に俺が挨拶したいと言っている旨を伝えたところ、都合を伺いたいと日程を指定してきたようだ。

俺は特に予定のない週末を提示して、その数日後、了承を得られたから8月最後の週末に自宅に伺うこととなった。

一人暮らしの自宅で一人、ベッドの上で言い知れない不安を抱えた。

面接の前日ですらこんなに緊張したことない。

別に・・・両親に結婚の挨拶に伺う、みたいなイベントでもないのに・・・


「あ~あ・・・連れ子同士の結婚は認められてんのに・・・俺と小百合が一緒になれば、両親への挨拶なんていらねぇのにさ~。」


ありえないことを口にしていることくらい分かっている。

けど別に世間的に見たらあり得ないって程のことでもない。

ただ小百合からしたらあり得ないことだろう・・・。

けど今まで一度も気持ちを伝えなかったのは、家族として関わっていた時間があまりに長くて、いつかくる姉の結婚というものを覚悟しなきゃと生きて来たからだと思う。

さすがに悪あがきみたいに彼氏に噛みつくのは大人気ない・・・。

噛みついていい相手でもないだろうし・・・。

けれども俺の中でモヤモヤは、日に日に積もっていった。


そして日々のサラリーマンとしての業務を忙しくこなしながらも、ついにその日はやってきてしまった。

頭の中を埋め尽くすモヤモヤに浸食されたまま、手土産を持って小百合の隣を歩いていた。

何も特別さもなく、何気なく隣を歩く姉に、珍しく動揺させてみようと投げかけた。


「なんかさ・・・婚前の挨拶に来たくらい緊張すんだけど。」


「え?暁人、付き合ってた彼女と結婚挨拶しに行ったことあるの?」


「は!?ねぇわ!」


「な~んだ、ビックリしちゃった。」


小百合はそう言ってクスクス笑って、俺が呆れて尚も隣を歩いているとやがて足を止めた。

淡々とインターホンを押そうとするので、俺は慌ててそのうちを見上げた。

そこには門扉の先にどでかい一軒家が建っていた。

わけわからん豪邸だ。いや、派手なわけではないけど、シンプルにでかい・・・。

まぁまぁ予想はしてたけど、和風な屋敷じゃなく、洋風な外観の一般的な一軒家が、3っつ分くらいくっついたような大きさに感じる。

俺は呆気に取られていると、カメラがついたインターホンから声が聞こえた。


「は~い。」


「あ、小夜香ちゃんこんにちは、小百合です。」


「あ、は~い!開けるね~。」


何とも可愛らしい声がそこから聞こえてきて、思わず眉をしかめた。


「どうしたの?暁人。」


「え・・・?いや、今の誰・・・。」


「更夜さんの娘さん。」


「・・・・先に言っといてよ・・・・聞いてねぇよ・・・。」


「え?ホント?私話した気がするけど・・・。」


小百合のお惚けに出ばなをくじかれる。

けどまぁ・・・既婚者だったなら子供はいるか・・・。

ソワソワしながらいると、ガチャリと少女が姿を現した。

ロングヘアを二つにまとめたその子は、遠目で見てもハッキリわかるほど美少女だ。


「いらっしゃいませ、どうぞ~。」


「あ・・・は・・・じめまして・・・。」


「初めまして、こんにちは。」


俺が動揺しながら腰を折ると、その子も恭しく綺麗なお辞儀を返して、門扉を開けてくれた。


「暁人、小夜香ちゃんが可愛いからってデレデレしないでね?小夜香ちゃんは彼氏いるんだから。」


「してねぇわ・・・。」


いつもの調子で軽口を叩く小百合にツッコミを入れながら玄関に入ると、小夜香ちゃんと呼ばれているその子は鈴を転がすような声で笑った。

無茶苦茶に可愛いなこの子・・・

リビングに通されて部屋を見渡していると、ふと小百合が言った。


「更夜さんは・・・」


「あ、ごめんなさい、お父さんついさっき急に電話かかってきて・・・たぶんお仕事の電話で、書斎で通話中なの・・・。すみません、ちょっとだけ待っててもらえますか?」


俺に申し訳なさそうに言う彼女は、手際よくお茶の準備を始める。


「はい、構いません・・・。」


「小夜香ちゃん、私も手伝うね。暁人座ってて」


「あ、ああ・・・」


ダイニングテーブルの椅子に腰かけて息をつくと、大きな窓の近くのサイドテーブルにある、少し大きめの写真立てが目に入った。

女性の写真だ・・・


その時、廊下の方からガチャリと音がして、次にリビングのドアが開け放たれた。


「すまん小夜香・・・」


「あ、更夜さんお邪魔してます。」


俺はその姿を見て思わずガタっと席を立った。

何とも言い知れないオーラを感じた・・・。


「・・・お待たせしてしまって申し訳ない。どうぞ、すぐお茶ご用意しますので。」


「あ・・・いえ・・・・」


明らかに自分より年上の男性に敬語を使われることに違和感しかない。

それと同時に、緊張で少し手に汗が滲んでいることに気付く。

手際よくコーヒーを淹れてくれた三人が、席につくまで一瞬だった。

その間何をどう話そうかと考える時間もありゃしない。

4人向き合って席について、俺は先手を取って口を開いた。


「いつも姉がお世話になっております。弟の橘 暁人と申します。」


「こちらこそ・・・小百合・・・さんには世話になってます。島咲更夜と言います。こっちは娘の小夜香です。」


和やかな笑顔を見せて娘を見やる彼は、物腰柔らかで本当に普通の人のように見えた。


「小夜香です。暁人さん、お父さん口下手でそんなにフレンドリーな人に見えないけど、中身はすっごく普通の人なので、警戒しないであげてくださいね。」


俺の緊張を見て取ったのか、小夜香さんはおどけてそう言った。


「じゃ、私はお邪魔だし部屋に戻るね。」


小百合が名残惜しそうに引き留めようとしたが、遠慮したように彼女はそそくさとリビングを後にした。


「・・・可愛らしい娘さんですね。」


「・・・そうか?」


「そうだよ?」


何故か責めるように小百合が被せてそう言った。


「あの・・・」


どう質問を繰り出すべきか、最初の一手を間違えるわけにはいかない。

俺がそう思案していると、横目で俺を見ていた小百合が口火を切った。


「あのね更夜さん、暁人ってばずっと更夜さんが何か企んでて私と付き合ってるんじゃないかとか言ってたの。財閥の元当主様が一般人と付き合うわけないって・・・」


「何でそのまま言うんだよ!」


思わず声を荒げて口を閉じると、彼は俺と小百合を交互に見て小首を傾げた。


「すみません・・・あのでも、実際どうして姉と付き合うことにしたんでしょうか。」


俺がハッキリ問うと、島咲さんはスッと無表情に俺を見据えた。

正直射貫くような視線にぞくっとした。

それは到底30代の貫禄じゃない・・・


「・・・暁人くんが言わんとしていることは何となくわかった。俺の素性を知って、関係を持ちえないだろう相手と付き合う意思と意図を知りたいんだな。だが・・・どうしてと言われても、好きになったからとしか答えようはないな。」


シンプルなその答え方は、それ以上邪推のしようがない模範解答だった。


「暁人くんが心配しうる企みというものは俺にないし、そもそも俺はもう当主ではなくて同じ一般人だ。他の人から見れば、稀有な存在として扱われるのはしょうがないとは思っている。けれども御三家は今までの500年の歴史に幕を下ろし、歴史を廃し・・・己の人生を生きることを望んで立場を捨てた。俺個人としてはそれから少し、外科医の仕事を続けてはいたが、やはり一医者ではなく、疎外された扱いを受けていたので一旦は医者を辞めることにした。それからは財閥の財産や土地管理のために、会社を設立して管理している。それらもゆくゆくは適したものに譲るつもりでいて、個人的には開業医としてやり直すつもりでいる。小百合とは約1年程付き合いを続けさせていただいているので、彼女が良ければだが、将来のことも考えてこれからも付き合っていきたいと思っている。」


島咲さんのかいつまんだ自己紹介はとても分かりやすい・・・

そして将来のことを考えているという発言を受けて、姉は隣で照れくさそうにしている。


「小百合は・・・ホントにただのどこにでもいる販売員で・・・お嬢様な教養を持ち合わせているわけでもなく、器量よしなわけでもないと思うんですが・・・いいんですか?」


「・・・・相手に何かを望んで結婚したいと思っているわけではない。これからを一緒に生きて行きたいと思ったからだ。もちろんお姉さんを妻としてもらうなら、暁人くんやお母さまに認めてもらうことは最善であり、優先すべきことだと思っている。」


俺は一つため息をついて、改めて島咲さんの顔をじっと見つめた。

何食ったらそんなイケメンになんだ・・・

芸能人でもこんな綺麗な顔した人いねぇよ・・・

もう俺ら一般人と血統が違うじゃん・・・住む世界が違うよ・・・

けど大事なことはそんなことじゃない・・・


「小百合は世間知らずで、男と付き合った経験もなくて、田舎娘って程じゃないですけどいい意味で普通の人です。島咲さんがどういう環境下で育ってきて、どういう風に今まで生きて来たのかを聞くのは失礼ですし、そこまで詳しく聞いても俺の理解が及ばないことだと思います。ただ・・・俺が懸念していることがあるとすれば、島咲さんが今まで当主として過ごして築かれてきた関係性で、姉に危険が及ぶことは本当にありませんか?」


「・・・暁人・・・?」


俺の質問に、島咲さんは眉をピクリとも動かすことはなく、当然のように答えた。


「ないとは言い切れない。」


その言葉に俺も小百合も凍り付くしかなかった。

島咲さんは黒いコーヒーに視線を落とし、ゆっくり目を閉じると、また静かに瞼を開いた。


「二人とも、今から俺が話すことは、一切小夜香に伝えることのないように頼む。」


先ほどまでの、粛々としながらも和やかな雰囲気は姿を消した。

俺たちは黙って言葉を待ち、了承を示した。


「俺が長らく当主を勤めていた三大財閥の屋敷では、ある研究がされていた。詳しくは話せないが、医療関係の延長のようなものだと思ってくれていい。だが世間から隔離された屋敷では法などあったものではなく、違法な人体実験が容易に行われていた。それらはどう確保されて研究を進めていたのか知らなかった。主な研究者は俺ではなかったしな。・・・だが自分たちには無関係だと思って暮らしていたがゆえに、ある時・・・妻はその研究に利用される目的で殺害された。」


「・・・・え・・・・」


言葉が出なかった。

チラリと様子を伺った姉も、呆然と彼を見つめていた。


「・・・結果的に利用されるまでのことは防ぐことは出来たが、愚かな企てを行った者のせいで、妻は無為に命を奪われた。小夜香が3歳の頃だった。」


説明を続けようと息を吸い込む島咲さんは、力なく息を吐き出して、どこか生気の宿っていない目をした。


「人の企みも、恨みや妬みも・・・どこでどう複雑に絡まって巡っているものか知る由もない。そういう意味では、小百合に危険が及ばないと約束出来るわけではない。直接的でなくとも、俺は人の命を奪う行為を容認してきた立場だった。恨みはいくらでも降りかかってくるだろう。だがもう少し言うと、俺たちに降りかかるであろう火の粉は、従えていた暗殺部隊が処理している。」


その言葉に思わず生唾を飲んだ。


「それは俺が命じたわけではないが、元よりそのように生きることを強いられてきた者達が故に、俺が手綱を取ることはもう不可能だった。その恨みが更に俺へ繋がってしまえば、危険なことなどいくらでも起こりうるように思える。だから暁人くんが言うように、俺は一般人ではないのかもしれんし、お姉さんを嫁にやるには危険だと思うのも当然かもしれん。だが一つ安心してもらえる要素があるとすれば、財閥の関係者となれば警護対象となって警護人はいくらでもつくし、怪しい者がいれば近づけさせないだろう。まぁそれでも・・・想定されるすべての危険から守ることが出来るのかと言われたら、困難かもしれんが・・・。」


「・・・そう・・・ですか・・・・。」


「小百合・・・元より今の話はいずれしようと思っていた。俺は人殺しに加担していたし、妻を死なせてしまった原因は俺にもある。到底普通に生きていて背負う程ではない業を抱えているだろう。けど・・・俺は小百合とこれからを生きていたいと思っている。決断するのは小百合自身だ。考えておいてほしい。」


姉は少し視線を泳がせて、静かに頷いた。


「暁人くん、長話して申し訳なかった。他に何か俺に聞きたいことはあるか?」


また真っすぐ見つめ返した島咲さんの顔つきは、どこかもう覚悟を決めているように思えた。


「あの・・・」


「なんだ?」


少し不安そうにコーヒーに口をつける姉を見て、本来俺は何を聞きたかったのか考えた。

けれどそれよりも、目の前にいる島咲さんの考えをもう少し知りたい。


「結婚って・・・成人してるなら本人同士の同意で出来ることだと思います。けど一般的にはどこの国でも、両親や家族に紹介して、了承を得るじゃないですか・・・。島咲さんが、小百合の家族が認めることが最善だと思う理由はなんですか?」


「・・・確かに結婚は本人同士の問題であると思う。家族に紹介して了承を得る意味は、これから夫婦として生きて行くことの報告と、時には手助けや見守りがほしいというお願いだと思う。子供が親に出来れば認めてもらいたいと思うのは、自分の伴侶となる人を、育ててくれた親にも愛してほしいという思いもあるだろう。そして小百合もきっと、そんな風に思っているのじゃないかと思う。俺は一緒に生きて行くのだから、出来うる限り小百合の願いを叶えてやりたい。だから例えば、暁人くんやお母さまが認めてくれないから、結婚はしたくないと言えば諦めるつもりでいる。」


「・・・いいんですか?俺が・・・姉は嫁にやりたくありません、別れてくださいって言って・・・そしたら別れるんですか?」


「ああ。」


尚も小百合は心配げに俺の顔を見た。


「・・・小百合は頑固ですよ。島咲さんと結婚するって決めちゃったら、俺と縁と切っても結婚しようとしますよ。」


「それはあまりよろしくないな・・・。」


「貫かないんですか?自分と小百合の気持ちを。」


失礼な言い方をしているのは重々承知だった。

だけど島咲さんはそれでも、落とすように優しく笑った。


「暁人くんや小百合より、俺は少しだけ長く生きているからわかる。大切にされて一緒に生きて来た家族を、ただ一人のために捨てることはとても寂しいことだ。死んだ妻もそうだった。俺と結婚することで、親や親せきと絶縁状態になった。本人は何も言うことなく幸せそうにしてはいたが、きっと小夜香を身内に会わせたかっただろうし、いざというとき寂しい思いをさせてしまっていた。子を持ち、大変な思いをしたその時に、人間自分の親を思い出すものだ。大切にされてきたことを忘れてしまっても、心の中には生きているからな。だから小百合には、それを捨ててまで俺と一緒になってほしいとは思えない。」


島咲さんは自分の人生経験の上でそう思うわけか・・・


「あの、更夜さん・・・」


口を開かずに黙って聞いていた小百合が、思い出したように言った。


「私のことを話してくれてるのに・・・何だか二人だけ話を進めちゃってるように聞こえたんだけど・・・その・・・私は更夜さんと一緒に居たいから・・・出来ればその・・・また今度ちゃんとプロポーズしてほしいな・・・なんて。」


尻すぼみしながら、顔を赤らめてもじもじする姉を見て、何だか現実に引き戻された。


「小百合、さっき島咲さんが考えといてくれって言ってたの聞いてた?そんな安易に答えだしていいのかよ。」


「確かに安易かもしれないけど・・・。だって更夜さんが今説明してくれてた危険が及ぶかもしれないって話は、もしかしたら起こるかもしれないっていう予測でしょ?そんなこと言ってたら人間生きてる上で誰だってどこで恨みを買ってるかなんてわかんないし、突然病気になったり事故に遭ったりする人もいるじゃない。かもしれない未来に怯えるのはおかしくない?」


思いのほか強気に言う小百合に、俺はまたため息が漏れた。


「それはそうかもしれないけど・・・亡くなった奥さんの話を今聞いたじゃん。」


「わかってるよ、もちろんそういうことがあったのは怖いと思う。でも・・・でもね・・・」


小百合は島咲さんの顔色を伺うように見て、安心したように微笑む。


「でも私は・・・やっぱり更夜さんと一緒に居られるなら全然怖くないかなぁって思っちゃう。」


「・・・それは精神論じゃん・・・」


「そうだね。だから・・・更夜さん、私は結婚する意志はもちろんあるから、私のこと守ってくれる?あらゆる面において。」


島咲さんは今度はニヤリと口元を持ち上げた。


「・・・どこまでわかっててそう言ってるのかは知らんが・・・もちろんそのつもりでいるよ。過剰なまでに心配性になるから、それは覚悟してくれよ?」


俺は微笑み合う二人を交互に見て、不思議な感覚になってきた。


「なんか・・・俺の中で突然家の中に悪人が入って来て、ドンパチやり合うようなシーンが浮かんだんだけど・・・」


「うふふ、そんなアクション映画みたいなことになったら大変だね。」


小百合も合わせて笑うと、更夜さんはカップを持って立ち上がった。


「まぁ・・・銃やナイフ、刀とか武器類は大概扱える腕くらいはあるよ。」


「え・・・マジっすか・・・」


同時にポカンとする俺たちに、島咲さんは苦笑いを落とした。


「ああ・・・祖父が軍人だったのもあるし、当主だとそれなりに命は狙われやすいからな、出来ることは多い方がよかった。ちなみに合気道や空手もある程度経験はあるよ。」


コーヒーメーカーで淡々と飲み物を注ぎながら、聞く話でもない気がする。


「へ・・・へぇ・・・更夜さん文武両道な人なんだね・・・すっごく頭いいのは知ってたけど・・・」


「極める素質はないが、出来ることは多かった。誰かを護る専門ではないから、いざドンパチやるようなことになった場合に、小百合を護る手段も考えとかないとな。」


島咲さんは冗談交じりにまたコーヒーに口をつけた。


「暁人くん、まだ俺に質問はあるか?」


「えっ・・・え~っと・・・・」


聞きたい事や言いたいことが浮かばないわけではなかったけど、取るに足らないことばかりだったので諦めた。


「いえ・・・俺からは特にもう・・・ないですかね。」


「更夜さんのこと認めてくれる?」


また意地悪な言い方で小百合は俺を覗き込んだ。

その可愛い姉の笑顔が、全て島咲さんのものになることを認めるようで、少しつらかった。

俺が思わず視線を逸らせると、島咲さんはそうだ・・・とコーヒーを置いて言った。


「暁人くんは『春が終わる。』の作者だと聞いた。」


「え・・・ああ・・・・まぁ・・・あんなの駄作ですよ。高校生のガキが書いた・・・」


島咲さんは少し黙って俺をじっと見つめると、また気を取り直すように言った。


「サインをもらいたいんだ。どうしても嫌なら無理強いはしないが・・・。書斎に来てくれないか?」


「・・・はい・・・。」


俺が立ち上がるのと同時に小百合も腰を上げると、側に来た島咲さんがそっと小百合の肩に手を置いた。


「小百合は少しここで待っていてくれ、すぐに戻るから。」


「え・・・あ・・・うん、わかった、待ってるね。」


俺はその通りすぐ戻るからだと思って、島咲さんの後をついてリビングを出た。

すぐ近くの扉を開いて中へ入ると、思わず息を飲んだ。

目の前には洋画に出てくる図書館のような広大な書斎が広がった。

天井たか!!


「うっわぁ・・・・すご・・・・」


「・・・家を建てる時、ここに一番金がかかったもんだ。」


「そ・・でしょうね・・」


島咲さんは本棚で見えなくなる先を歩いて行って、俺も慌てて後を追った。

中央近くの本棚の中断に手をかけた島咲さんは、静かに本を引き抜く。


「何度も読み返しているんだ。サインもらっていいか?」


「あ・・・はい、俺のでよければ・・・」


「ふ・・・君以外価値のある人はいないだろうな。」


島咲さんは近くにあった大きなデスクからペンを持ってきて俺に差し出した。

当時この本のためだけに考えたサインを、何とか間違わないようにささっとしたためた。

静かに受け取ってそれを見つめる島咲さんは、側に立っていると俺よりだいぶ背が高いことがわかる。


「・・・ありがとう。」


「いえ・・・」


そのままリビングに戻るものと思って踵を返すと、また何気なく声をかけられた。


「暁人くん、小百合のことが好きなのか?」


その言葉に脳は停止させられた。

振り返ることすら怖かった。


「・・・特に責め立てるつもりはないんだ。この作品はそういう話だったように思う。もしかして・・・と思って。」


ああ・・・そうか・・・わかる人にはわかるのか・・・

そりゃ少しはわかるように書いてはいる・・・

けれど現実の俺がそうだからなんて・・・恥ずかしい書き方をしていると思われると更に羞恥でしかない。

俺は何も言葉を返せないまま立ち止まっていた。


「すまん、不躾な聞き方をして・・・。違うなら違うと思うことにするし、忘れてほしいというならそうしよう。」


この人は本当に良い人なんだろうか・・・

今日一日だけでは、島咲さんの人柄はつかめない。

だけど馬鹿正直な小百合が惚れたんだ。悪人というわけではないと信じたい。


「好きですよ。・・・まぁ・・・俺連れ子なんで赤の他人だし・・・好きでもいっかなって生きて来たんです。けど今は、小百合が心底幸せに結婚してくれるなら、それでいいんだろうなぁって弟らしく思えてます。つっかえてるものはそりゃありますけど・・・芽吹かないまま種は飲み込まなくちゃって思って・・・」


「・・・そうか・・・。それが同時に悩みの種になってしまっていたら不憫だが・・・」


「島咲さんは・・・恋人として俺を牽制したくて聞いたんじゃないんですか?」


島咲さんは本を仕舞って、俺の目の前で本棚にもたれた。


「いや・・・どうだろうな。作者にそう聞きたいと思ってしまったっていうのが本音だ。本当に好きなんだストーリーが。どんな思いで書いていたんだろうと興味本位だった、申し訳ない。」


「・・・ふ・・・結構えぐいことしますね。」


そのまま二人とも黙ってしまって、どうも収まりが悪い気分が否めない。


「春が終わる。は・・・俺の気持ちもこれで終わらせたいって思って書いたんですよ。けど・・・彼氏が出来たって聞かされたら逆に煮えくり返っちゃって・・・。けど別に反対したいわけじゃないんですよ、家族としての思いが強いんで・・・。だから・・・消化不良なままの気持ちは、勝手に告白して勝手に振られとくんで・・・見逃してもらえないですかね。」


俺が恐る恐るまた目を合わせると、島咲さんは少し首をもたげてまた優しい笑みを見せた。


「ああ、元より君の首根っこ掴んで脅すつもりなんてない。二人の関係性の間に、俺は無関係だしな。」


安堵して息をつき、そのまま二人で書斎を出た。


「何の話をしてたの~?」


リビングに戻るなり、小夜香さんと楽しそうにお茶菓子をつまんで小百合は言った。


「・・・いいんだよ、男同士の話だって・・・。」


「え~?なにそれ~気になっちゃう。」


「ふ・・・兄弟がいないから、弟がいるっていうのはいいものかもな。」


島咲さんがそう言うと、小夜香さんはニッコリ可愛い笑顔で父親に甘えるように言った。


「そうだね!私も兄弟ほしいなぁお父さん♪」


それを聞いて一人あわあわして照れる小百合を、俺は若干白い目で見ていた。


「気が早いな・・・。けどまぁ・・・家族が増えるってのはいいもんだ。っていうと・・・ちょっと年寄りくさいか。」


また和やかに笑みを落とすその空間で、俺は何となく窓際のサイドテーブルを見た。

あれはきっと、亡くなった奥さんだろう。


「島咲さん・・・小夜香さんのお母さんって・・・」


「・・・ああ、彼女は仏教徒でないんでな、仏壇はないからあそこに写真があるんだ。ちなみに亡くなった妻も、名前を小百合と言うんだ。」


「・・・ええ!!」


妙な偶然か運命か・・・はたまた因果か・・・

なかなか・・・俺が書いた架空の世界と同じくらい、不思議な巡り合わせをして生きてる人だ。


何はともあれ、俺の春はそうして終わっていった。


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