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我が、『湯けむり連合軍』は。
温泉神(見習い)が率いる軍である。
なぜ連合軍なのかというと、ドワーフ族とエルフ族、竜族と獣族で構成されているからである。
総大将は温泉神(見習い)である
私、浅葱 斗季子が努め、副将にはその弟、浅葱 侑李を据える。
参謀兼第一隊、『ユフイン隊』隊長には
エレンダールさんが努め、ユールノアールから呼び寄せた有志のエルフ達で構成されている。
第ニ隊隊長はリーズレットさん。
ドワーフの精鋭部隊、『アリマ隊』を率いる。
ラウムさんには補給部隊、『ユノハナ隊』をお任せした。
ミカドちゃんは《栄光の竜達》改め、第三隊、『ハコネ隊』隊長として、諜報活動をメインに動いてもらう。
「………ねーちゃん、結構ノリノリじゃねぇか。」
侑李が呆れたように大テーブルに広げられた組織図を眺めながらため息をついた。
「ここまできたら、腹を括るよ。」
私は侑李にそう返した。
うん、ヤケになった、とも言う。
ちなみに各隊名は日本の温泉地とユグドラニアの地を連動させてみた。
南のユールノアールは九州の湯布院、西のハイデルトは関西の有馬といった具合だ。
「よろしく頼むね、ノボリベツ将軍。」
「誰がノボリベツだよ!!」
侑李は北のオルガスタなので、北海道の登別温泉が相応しいと思う。
「いいじゃなぁ〜い!『ユフィーン』!私にピッタリの優雅な名ね!」
『ゆふいん』なのですが。
エレンダールさんは微妙なイントネーションになっている。
「うむ!!我が『アリマ隊』も、勇ましさの中に美しさを感じる響きじゃ!トキコは名づけのセンスがあるのぅ。」
リーズレットさんもなんだか満足そうに頷いている。
喜んでもらえたようで何よりだよ。
私が考えた名前じゃないけど。
私が微妙な気持ちになっていると
会議室のドアが開かれ、実にいい笑顔のラウムさんが入ってきた。
「嬢ちゃん!出来たぜ!!見てくれ!このラウム、一世一代の最高傑作だ!!」
そう言ってラウムさんがテーブルの上にダダーンと乗せたのは、巨大な温泉マークのエンブレムだ。
エメラルドグリーンに輝く下地に、眩いばかりの黄金の温泉マーク。
そして周囲は恐ろしく精密に掘り込まれたさまざまな宝石に縁取られていた。
「トキコタイトの下地に、ゴールド、周りは鉱山で採れた宝石で飾ってある。」
ラウムさんは誇らしげに説明をする。
この曲線の表現に苦労した、だとか、湧き出る温泉の勇猛さと、包み込むような温かさを表すのに悩んだ、とか、ラウムさんは語り、リーズレットさんも大きく頷きながら聞いている。
宝石の無駄遣いだ。
ちょっとそんな事を思ってしまったけど、黙っていよう。
さらにはハイデルトの奥様方が刺繍をしたという湯けむり連合軍の旗やらのぼりやらも並べられた。
素晴らしい刺繍の技術だと思うけど、やっぱり技術の無駄遣いな気がする。
ほら、もっとさ、あるじゃない?
お姫様のドレスに刺繍するとか!
「いやぁ!奥方達、大興奮だったぜ!!こんな名誉な仕事はないってな!ハイデルト中の奥方がこぞってやりたがってな!」
うん。喜んでいるなら、よしとしよう。
しかしおかげでものすごい数の旗やらのぼりやらが出来上がってしまった。
どうしよう。
部屋に運び込まれた大量の布を眺めていると、エレンダールさんがそれに目をつけたらしい。
ウキウキとした様子で旗を手に取る。
「ねえ、この旗、マントに出来ないかしら?」
両手で広げて、そんな事を言い出す。
たしかに旗というには大きく、少し作り替えればマントにも出来そうだ。
「!!!エレンダールよ!!名案じゃ!」
リーズレットさんも同調してしまい、また私を置いてきぼりに話が進んでしまいそうだ。
それはまあ、いいとして。
「ところで、湯けむり連合軍って、戦力はどうなんです?相手は竜と、もしかすると人狼も、かもですよね?」
ちょっと気になって聞いてみると、2人の動きがピキリと止まる。
え?ちょっと?
ラウムさんの方に目を向ければ、そちらも難しい顔になっている。
おいおいおい、なんだその反応は。
まさか。
「………ドワーフ族はの、武器や防具の整備や、陣営の設置など、後方支援を得意とするのじゃ。」
リーズレットさんがボソボソとそう言う。
えええ……。
それじゃ戦力としてはあまり期待出来ないって事?
「……エルフは魔術に長けた種族よ。主に、治癒魔術が得意でね?傷ついた兵の治療に当たっているわ。」
ちょっと?!
それじゃあ。
「戦闘は、あまり得意では、ない?」
おずおずと聞いてみれば、3人はフイ、と目を逸らす。
えええええ?!
「ユグドラニアは平和な地でな、あまり戦というものはないんだが……戦闘力はオルガスタとニフラに集中しているな。あとは、中央の王国軍か。人族は、各自の戦力は小さいが、組織力としては優れているからな。」
ラウムさんが苦い顔で言う。
なんて事だ。
あんなにみんな張り切って結成した軍が、肝心の戦いが苦手だとは。
「ノリと勢いだけじゃねぇか。」
侑李が呆れた声で呟く。
「いや!でもじゃな!こちらにはニフラの精鋭部隊、栄光の竜達……もとい!ハコネ隊もおるぞ!」
「そうよ!それに、ユウリ……じゃなかった、ノボリベツ将軍もいるじゃない!」
なんという他人任せ!
ニコニコと期待の目で侑李とミカドちゃんを見ている2人に、思わず呆れた目を向ける。
「………ねーちゃん、どうすんだ?」
侑李もため息をついて私に聞いた。
うーむー。
そうは言ってもなぁ。
だけど、以前リーズレットさんもエレンダールさんも魔獣と戦って傷を負った、とか話してたはずだ。
と、いうことは、全く戦えないという事ではないのだろう。
「とにかく、どの程度の事が出来るのか、確認してみましょうか。」
私は大きくため息をついて、2人にそう提案した。
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