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「はあ……びっくりした。」

「本当だねぇ。」


お部屋でユージルとお茶を飲んで一休み。


エルフのメイドさんが入れてくれたお茶は、ほんのりと甘くて、花のような香りがしてとても美味しい。


衝撃的すぎるあの出会いを癒やしてくれるようだ。


やはり、上司がああだと、部下もおかしくなるのだろうか?


なんだかとても残念だ。

エレンダールさんも、スフィアリールさんも、とてもきれいなだけに。


お茶と一緒に持ってきてくれたお菓子に手を伸ばしていると、ドアがノックされる。


「はあい!どうぞ。」


私が答えて、部屋に入ってきたのは、エメラルドグリーンの髪を腰まで伸ばした、落ち着いた雰囲気の美女だった。


「ユージル様、トキコ様。お初にお目にかかります。」

耳に心地よい、低めの声で言いながら、スッと腰を落とす姿を見て、思わず立ち上がってしまう。


「どうぞ、そのままで。私はエレンディア=フレイニール。エレンダールの妹です。ご挨拶に参りました。」

ニッコリと優しく笑ってそう続ける。


エレンダールさんの、妹さん?

エレンダールさん、兄弟いたんだ。


そういえば、確か、聞いた事があるような……。


「もしかして、学園の…?」 

「はい。アルカディア学園の学園長をしております。」

肯定されて、私は慌ててエレンディアさんのところへ行く。


侑李の行ってる学校じゃないか!


「それはご丁寧に、ありがとうございます。弟が、お世話になっております。」

私がお辞儀をすると、エレンディアさんは笑みを深めた。


「侑李君、良い友人にも恵まれて、学園でも楽しく過ごせているようですよ。私も安心しているのです。」

「そうでしたか〜。」


何やら保護者面談のような会話になってしまったが、侑李の学校での様子を聞けてよかった!


「トキコ様は、収穫祭を見にいらしたとか。どうぞ楽しんでいってください。そして兄ばかりでなく、私もどうぞよろしくお願いします。」

エレンディアさんは手を差し出した。


こっちでも、握手ってするのかな?


と思ったけど、とても馴染みのある友愛の表現に、私も嬉しくなり、エレンディアさんの手を握る。


「こちらこそ!どうぞ仲良くしてください!」

笑顔でそう言って、握手を終えようと手を引くが、なぜか手が離れない。


ん?


見れば、エレンディアさんは握った私の手をじっと見ていた。

「……エレンディアさん?」

「兄から、トキコ様のお話はよく聞いていました。とても可愛らしい方だと。何をするかわからないところがあって、目が離せない、つい面倒をみたくなる方だと。でもそこがとても可愛いのだと言っていました。」

私の手を眺めながら、エレンディアさんはポツリと話す。


エレンダールさん、そんな事を。


褒められたんだか、なんだか、よくわからないけど、私の事を可愛いと思ってくれてたんだね。


ちょっとほっこりする。


「話を聞いて、ぜひお会いしたいと思っていたのです。本当に会えて嬉しい。」

エレンディアさんは、はにかむように私を見て、ぎゅっと握る手に力を入れる。


「想像通りの可愛らしい方。滞在中はぜひ私とお過ごしくださいね?」

美しい笑顔を向けられて、ちょっと顔が赤くなってしまう。


「エレンディアさん、ありがとうございます。」

「ああ、そうだ!私の部屋に移りませんか?お話したい事もたくさんあるのです。」

私のお礼を遮る勢いでそんな提案をされる。


「いえ、あの。大変ありがたいのですが、ユージルもいますし。」

ユージルとはハイデルトの時のようにそれぞれ個室をもらっているけど、いちおう一つの客間を与えられている。

ユージルを一人放っておくのもなんだし。


私の言葉にエレンディアさんは小さくかぶりを振って、鋭い目でユージルを見た。


ユージルにそんな目を向ける人、初めて見た!

みんなユグドラシルだからと、とても丁寧にしていたのに。


「いくらユグドラシルといえ、トキコ様を囲い込み、好きにしていいはずがありません。トキコ様はトキコ様の自由意思で行動すべきです。」

低い声。

なんだ?

その、威嚇するみたいな態度は。

さすがのユージルも立ち上がってこちらに来る。

そして握られたままの私の手を掴んで、自分の方へと引き寄せた。

「斗季子は俺の愛し子だからね。もちろん、斗季子自身で俺といる事を決めているよ?安心して?」

ユージルが言うと、エレンディアさんは

ハッと薄笑う。

「どうでしょう?この世界の守り神とも言われるユグドラシルが、ずいぶんと俗っぽいこと!」


ちょっと……!大丈夫なの?!


どんどん険悪になる二人にだんだん不安になってくる。


「俗っぽい?俺と斗季子は神から定められた運命の伴侶だよ。」

「運命!そんなものに定められて、そこにトキコ様の気持ちはあるのですか?お可哀想に!」

エレンディアさんはぐい、と私を自分に引き寄せた。

「そんなもの、私が壊して差し上げます。トキコ様に本物の愛というものを教えて差し上げます!この私が!」


?!?!


ちょ………?!

何言ってんの?!


怪しすぎる雲行きに大混乱に陥っていると。


バターーーン!!


大きく扉が開かれた。


「ディア!!!」

開けられたとはから鬼の形相のエレンダールさんが入ってきた。


そしてエレンディアさんの首根っこを掴む。

「アンタ何やってんのよ!!トキコちゃんに触らないでちょうだい!!」

「お兄様!邪魔しないでください!私はトキコ様に愛のなんたるかを教えて差し上げたいのです!!」

「なぁんですってぇ?!アンタまさか、ユージル様に失礼な事してないでしょうね?!」

「超失礼だったよ。」

エレンダールさんの質問にユージルが答えると、エレンダールさんは一瞬顔を青くして、そのあとその顔を真っ赤に染めた。

「ちょっと!!何やってんのよ!!アンタ、ユールノアールを滅ぼしたいの?!」

エレンディアさんの耳元で叱り飛ばして、その頭を掴んで下げさせる。

エレンダールさんも一緒に深々と頭を下げた。

「ユージル様、妹の無礼、お詫び申します。妹には私からきつく言い聞かせます。どうか、寛大な処置を。」

エレンダールさんがそう言って謝って、私とユージルは顔を見合わせる。

ユージルは一つ息をついた。

「別に、怒ってはいないから大丈夫。エレンダール、顔をあげて?」

ユージルに言われてエレンダールさんは大きくため息をついて顔を上げた。

「感謝致します。ユージル様。」


なんなんだ。

これは。


嵐のような一幕の後、エレンダールさんは困ったような顔で続ける。


「この子ったら、可愛い子を見ると突っ走るクセがあって……。本当にいつまでも子供で嫌になっちゃうわ。こら!アンタも、その惚れっぽいのいい加減治しなさい!そんなだからいつまでも彼女が出来ないのよ!」


惚れっぽい……?

彼女……?


おや?エレンディアさんは、女性では?


私が首をかしげている横で、エレンディアさんはムッとした顔でエレンダールさんを睨む。

「お兄様!私はいつでも本気です!だいたい、お兄様がいつも私の邪魔をするのがいけないのです!アンジュ様の時だって!」

「アンジュ様もアンタが無理矢理〇〇(ピー)するから私が止めたんでしょう?!」

「お兄様が止めなければアンジュ様も私を選んでくださいました!せっかくアンジュ様の〇〇(ピー)〇〇(ピー)出来たのに!」

「そんな事するからアンジュ様はお逃げになったのよ!!アンタが〇〇(ピー)〇〇(ピー)するから!」

「なっ…!失礼な!!」


再び始まった放送禁止用語たんまりの兄妹喧嘩に頭痛がしてきた。


しかしなるほど。

なんとなくわかったぞ。

杏樹おばあちゃん、それが原因でユールノアールから逃げたんだな。

昔の人間だ。

女性同士で〇〇(ピー)なんて、想像もつかない事態だったに違いない。


そしてエレンダールさんの言ってた「ひとりの女性を奪い合った事もある」って、妹と奪い合ったってことか。


「……エレンディアさんって、女性が好きな方、なんですね。」

今さらながらにポツリとこぼせば、エレンディアさんはニッコリ微笑んで私を見る。

「もちろんです。男性なんて、大きくて固くて、気持ちよくないでしょう?」


ニッコリ微笑んではいるが、その目は獲物を見る目だった。


うん。エレンディアさんの「私と同室に」というお誘いは断固として拒否しよう。





お読み下さりありがとうございました。

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