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いつもお読み下さりありがとうございます。

いいね、評価ポイント、ブックマーク、お気に入り登録など、とても嬉しいです。

ありがとうございます。

今後とも温かく見守っていただけると大変ありがたいです。



「はい!次の方!」

「はじめまして!あの、ずっと憧れてて…!お会い出来て嬉しいです!頑張ってください!」

「…‥ありがとう、ございます?」

「はい!時間です!次の方!」


まさかの事態である。


私の力でスキルが取り戻せるとわかり、狂喜したリーズレットさんは、早速行動を起こした。


まず、主だった家臣を集めて、対応を協議し、その結果、とりあえずハイデルトの上層部の人たちと、採掘に関わる人たちのスキルを取り戻してもらいたいという事を頼まれたのである。


そして開催されたのが、これだ。


私は広場に作られた特設会場で、椅子に座らされ、ひたすらに列を成すドワーフたちの手を握り、祈る。


完全に握手会だ。


アイドルか?!

私ゃ、アイドルなのか?!


そんな事を考えている間にも、次のドワーフがやってきた。


「嬢ちゃん!よろしく頼むぜ!」

「アナタは、確かラウムさんの部下の……」

「おうよ!ハイジってんだ!」

私は差し出されたハイジさんの手を握った。少し手のひらに集中すると、ハイジさんの体がふわりと光る。


それにしてもラウムさんといい、見かけは髭ヅラのオッサンなのに、かわいい名前だ。ギャップがすごい。


クララもいるのだろうか?


「はい!次の方!」

隣で剥がし担当の侑李が無情に言い放った。

「おっといけねぇ。んじゃ、ありがとな!」

ハイジさんはそれに嫌な顔一つせずに立ち去る。


いい人だ…。


そんな余韻に浸る暇もなく、私は次の人の手を握った。


「よろしくお願いします!あの……うちも、鉱山で採掘をしていて…とても嬉しいです!これ、私が掘った銀で作った、首飾りです!受け取ってください!」

ドワーフの女性がポケットから細い銀のネックレスを取り出して私に差出す。


「それはそれは!どうもありがとうござ……「プレゼントはあちらで受け取らせていただいてまーす!」……ちょっと侑李!」

容赦のない侑李に顔をしかめる。


「だって、ねーちゃん、時間ねぇし!見てみろよ!この行列!終わんねぇぞ!」

耳元でコソッと言われて、押し黙る。


そうかもだけどさぁ……。


侑李の剥がし師としての優秀さにドン引きだ。


そのまましばらく握手会を続けていると、何やらザワザワと人が集まる様子が見えた。

そこには、リーズレットさんやラウムさん、そしてラウムさんの配下達といったお馴染みのドワーフ達が集結している。


なんだ?なんの集まりだ?


握手会を続けながら訝しく思っていると。


「皆の者!ゆくぞ!!」

「「「「おう!!!」」」」

リーズレットさんの掛け声と、それに応えるラウムさん達。


「「「「「言いたい事があるんだぜ!!やっぱりトキコはかわいいぜ!!好き好き大好きやっぱ好き!!やっと見つけた愛し子だ!!世界で一番愛してる!!」」」」」


?!?!?!?!


私は思わず勢いよく立ちあがった。


ガチ恋口上……だと………?!


なんなんだ?!

今すぐやめていただきたい!!

そしてなぜそれを知っている?!


「ちょっと!!リーズレットさん!!」


私はズカズカと早足でリーズレットさんの元へ向かった。


「なんなんですか?!今の!!」

悲鳴のような声で聞けば、リーズレットさんはとても得意げな顔になった。


「良いであろう?ハイデルトの為に頑張ってくれているトキコの為に、ラウム達と考えた詩じゃ。妾達の気持ちを表しておる。せめてもの応援じゃ!」

「なんでドワーフがドルヲタのガチ恋口上知ってるんだ!!!」


握手会といい、ガチ恋口上といい、ますますアイドルじみてきた!


「ちょっと!誰に習ったの?!浅葱家の仕業か?!これも浅葱家の仕業なのか?!」

私はリーズレットさんに掴みかかった。


「お……落ち着くのじゃ!なんの事かわからぬ…!」

タジタジと両手で私を抑えるリーズレットさん。


「嬢ちゃん!ほら!見てくれ!トキコタイトで、光る杖も作ったぜ!」

興奮する私にラウムさんはエメラルドグリーンに光るタクトを差し出す。


サイリウムまで……ある……!!


そして。


「トキコタイトって、何?!?!」


ものすごく不穏な言葉を聞いてしまった。

嫌な予感がビンビンするぜ……!


「今まで、ただの光るだけの石だと思ってたから、《光石》なんて、安直に呼んでたんだがな?これを機にきちんと名前を付ける事にしたんだ。その名も《トキコタイト》!!いいだろう?!嬢ちゃんの名前から付けたんだぜ!!」

自慢げに、自信たっぷりに語るラウムさん。


私はその場にくずおれた。


心底、やめていただきたい……!


その思いが胸を占めたが、言い返す気力もない。


「……ねーちゃん、よかったな。ハイデルトに、いや、ユグドラニアに名を残せて。」

薄ら笑いの侑李にからかわれる。

ギロ、と侑李を睨むと、その侑李の肩をリーズレットさんがポン、と叩いた。


「うむ!その通りじゃ!そしてユウリ、心配せずともよい!これを見るのじゃ!」

差し出されたリーズレットさんの手には、瑠璃色の石が乗っていた。


「妾が鉱物錬成で作った《ユウリウム》じゃ!ミスリルよりも品質が良く、このユグドラニアで、おそらく初めて発見された物じゃ。記念にお主の名をとって《ユウリウム》と名づけた!」

「や……やめて……!!」

侑李も私と同様、くずおれた。



しかし、お祭りムードも、そこまでだった。


浅葱姉弟で、仲良く地面にくずおれていると、何やら遠くから人々の悲鳴と、馬の蹄の音が聞こえてくる。


それに気がついて、私たちも立ち上がり、リーズレットさん達と顔を見合わせていると、やがて勢いよくこちらに走ってくる馬の姿が見えてきた。


「なんじゃ、大切な儀式の途中に、騒々しい!」

リーズレットさんは顔をしかめたが、馬上のドワーフの叫び声に表情を変える。


「逃げろーーー!!!ゴーレムが…!」

リーズレットさんとラウムさん達は、一瞬にして緊迫した様子になる。


馬が到着すると、リーズレットさんはそこに駆け寄った。


「申せ!!」

「はっ!申し上げます!鉱脈の洞窟より、ゴーレム来襲!!こちらに向かっております!!」

知らせに来たドワーフが端的にそう報告すると、リーズレットさんは息を飲む。


「ばかな……!!今まで洞窟奥深くから出てきた事などないぞ!!」

驚愕しながらも、即座にラウムさんに向き直る。

「ラウム!!急ぎ、民を避難させよ!宮殿に誘導するのじゃ!!」


「はっ!!」

ラウムさんはリーズレットさんの指示に即座に配下と共に走り去る。


「兵を集めよ!!なんとしても食い止めるのじゃ!!」

リーズレットさんは、おろおろする私と侑李に目もくれず、足早にその場を離れた。


周りの人々も不安に顔をこわばらせながら、ラウムさん達の誘導で避難を始めた。


「ゆ……侑李……」

私も思わず侑李の腕を掴み、リーズレットさん達の様子を見ていると、ラウムさんに「嬢ちゃん、こっちだ!来てくれ。」と言われる。


私と侑李は何も考えられず、その後を追うしか出来なかった。






お読み下さりありがとうございました。

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