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結局、その日はラウムさんたちは車から離れず、待ちかねたリーズレットさんが私たちを迎えに来る、という、どっちが主かわからない状況でリーズレットさんと会うことができた。


「まったく!!何をやっておるのじゃ!さっさと案内せぬか!!」

と、そう言いながら、リーズレットさんはラウムさんにリアルでゴチーンと拳骨を落とし、ラウムさんが謝り倒して……と、実にリーズレットさんとラウムさんらしい展開の後、私たちは無事にリーズレットさんの住む宮殿へ行くことができた。




ハイデルトの街は砂漠の真ん中の巨大な湖だった。

その湖に浮かぶいくつもの島に人々の暮らす街が点在していて、島同士は橋がかけられ、その橋と、あとは船で行き来をしているらしい。


リーズレットさんの宮殿は、中央に近い一番大きな島にあり、例えるなら、まるでイスラム教のモスクのようだった。


石を積み上げて作られた宮殿は壁に水晶のようなものもふんだんにあしらわれていて、とても豪華だ。


街は湖の中にあるためか、涼しく、とても過ごしやすい気候だった。


それだけでなく、ドワーフたちは職人気質で、宮殿の人たちも、とても気さくだった。


最初こそ、「愛し子様におかれましては」と挨拶されるけど、少しするとすぐに「嬢ちゃん!これ、食ってみるか?」などと、お菓子をくれたりした。


それがお嬢様扱いされるより、何倍も心地よかった。

ちなみに侑李は「坊主」と呼ばれている。


私たちはバルコニーが湖に面した広い部屋を充てがわれ、そこですっかりくつろいでいた。


部屋はリビングを中心に続き部屋が二つあって、そこが寝室になっていた。


今回、ハイデルトに来たのは私、ユージル、侑李の3人。

部屋割りで少々揉めたが、結局、私と侑李が同じ寝室で休む事になる。


侑李が私とユージルの同室を頑なに反対したからだ。


ハイデルトに来るにあたり、最初は私とユージルの二人で行こうと話していたんだけど、待ったがかかった。


もちろんお父さんである。


お父さんはそりゃあもう、ものすごい剣幕で反対した。

どのくらいかと言うと、怒っている途中で興奮しすぎて犬になるくらい。


エレンダールさんや、お母さん、リグロさんにまで「斗季子と一緒に行ってくれ!」と、頼んでいたけど、みんなそれぞれ仕事があり、同行は難しかった。


もちろんお父さんも、公爵としての仕事が溜まっていて、領土から離れるわけにもいかず、白羽の矢が立ったのが、学園がお休み中の侑李だったというわけだ。


侑李はどうもお父さんにお目つけ役をきつく言い聞かされているらしく、その任務を忠実に遂行しているというわけだ。


真面目だなぁ。

言わなきゃバレないだろうに。


リーズレットさんはその話を聞いて、「やれ、ラドクリフも過保護じゃのぅ。」

と呆れたように笑った。


そんな私たちの部屋のリビングには、実にダラダラするのにぴったりな一角がある。


ドワーフには床にラグなどを敷いて座るという風習もあるらしく、部屋にはふかふかのラグとたくさんのクッションも置かれているスペースがあったのだ。


私と侑李が大喜びしたのは言うまでもない。

もう、正直ハイデルトに住んでもいい。



私たちはラグの上にだらりと足をなげだして座り、リーズレットさんと話をしていた。


「ラウムさんたち、車に興味深々だったなあ。分解されなくてよかったね、ねーちゃん。」

侑李が思い出したようにそう言って面白そうにくっくっと笑った。


私もその時の事を思い出して、ぶるりと背筋が震える。


ラウムさんたちは、本当になかなか車から離れず、また質問攻めにあってしまったので、仕方なく、侑李がエンジンルームを開けて簡単に説明してくれたのだが、それにより、余計に興味を持たれてしまった。


ついには「嬢ちゃん!必ず!必ずもとに戻す!約束するから!な?解体させてくれ」と、恐ろしいことを言い出して、半泣きでうちの車を死守したのである。


正直、今も少し車が心配だ。


「なあに、いくらラウムでもトキコの許可なく勝手はせんじゃろう。」

リーズレットさんは安心させるように笑って言った。


「そういえば、リーズレットさん、ハイデルトにはユグドラニアきっての鉱脈があるって言ってたけど、どこにあるの?見たところ、ここって砂漠の中のオアシスって感じだよね?」


てっきり、大きな山とかに囲まれてると思ったんだけど、それらしき姿は見えない。


首を傾げながら聞いた私に、リーズレットさんはフフン、と少し得意げな顔になった。


「それならば、明日にでも案内してやろう。トキコよ、驚くでないぞ?」




お読みくださりありがとうございました。

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