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いつもお読み下さりありがとうございます。
感想、いいね、ブックマーク、お気に入りなども、とても有り難く、感謝しております。
冒頭部合わせ、50話まで進めることが出来ました。
本当に読んでくださる皆様のおかげです。
今後ともどうぞよろしくお願いします!
それからエレンダールさんはしばらく公爵家に滞在する事になったんだけど、リーズレットさんはラウムさん達を連れてハイデルト領に帰る事になった。
家臣でもあるラウムさんが不在だった為、領内での仕事が溜まっているんだそうだ。
うん。ラウムさんは自業自得だ。
頑張ってお仕事をしてください。
「嬢ちゃん…!絶対、絶対にすぐに戻るからな…!このラウムのこと、忘れてくれるなよ!」
別れ際、ラウムさんに涙ながらにハグされて、私はうんうんと頷く。
「はい!お待ちしてます。ラウムさん、お世話になりました!ラウムさん達のおかげで素敵な日帰り温泉が出来ました。」
「そりゃこっちのセリフだ!素晴らしい温泉に素晴らしい料理、最高の酒、ここにはドワーフの幸せのすべてがあるぜ!」
スンスンと鼻を啜りながら、ラウムさんは満面の笑みを浮かべる。
「トキコよ。」
そんなラウムさん達の後ろからリーズレットさんが進み出る。
「ラウム達が世話になったの。妾もそなたと離れるのは寂しいぞ。」
「リーズレットさん、こちらこそありがとうございました。私も寂しいです。」
「近いうち、ハイデルトにも遊びに来られよ。歓迎するぞ。」
「ぜひ!私、オルガスタと王都しか知らないので、行ってみたいです!」
「うむ、いつでも来るが良い。」
しばらく別れを惜しんだ後、リーズレットさん達は旅立っていった。
大量のお酒と共に……。
「……途中で割れないといいんだけど。」
あまりの量に、無事に持って帰れるかが心配だ。
リーズレットさん達は、そりゃあもう、
これでもか!!!
というくらいの大量のお酒を積んでいった。
あまりの量に何人かは馬車に乗り切れなくなるくらい。
「それより途中で飲んじまうって方が心配だがな。ハイデルトに着く頃に、いったいどのくらい残ってるやら。」
お父さんがため息混じりに言う。
確かに。
リーズレットさんはラウムさん達同様、温泉をとても気に入ってくれた。
本当なら朝霧館に泊まりたがってたんだけど、予約でいっぱいだった為、公爵家から毎日のように通っていた。
お母さんはラウムさん達にそうしたように、リーズレットさんとエレンダールさんにも新作料理を振る舞い、そのたびに二人とも大喜び。
私はうっかり調子に乗って、カクテルを作って飲ませてみたら、その種類の多さと見た目にすっかりエレンダールさんが気に入ってしまって、毎日作らされている。とほほ。
リーズレットさんは領土に帰ったけど、エレンダールさんは相変わらず、温泉と公爵家を往復する毎日だ。
そんななか、《朝霧の湯》に新たなお客さまがやってきた。
それは、よく晴れた日。
私がカテリーナさんと玄関先の掃除をしている時だった。
「姫さま、お掃除でしたら私にお任せくださればよろしいですのに…。」
恐縮するカテリーナさんだったが、私としては大切なお客さまをお迎えする前の大事な儀式みたいなものだ。
「いいのいいの!やりたくてやってるんだし。」
そう言ってご機嫌で箒を動かす。
今日もいい天気だ!
と、空を見上げる。
本当にいい天気。
雲一つない空。小鳥が時折、舞遊んでいる。
この世界には飛行機なんてないし、空には小鳥とドラゴンくらいしか…。
……………ドラゴン?
ドラゴン?!
「…え。」
思わず固まって空を見上げていると、遠くの空からみるみるうちにその姿を大きくしていく、あれは。
「ぎゃあああ!!」
「姫さま!!」
私が叫ぶと同時にカテリーナさんが私を庇うように前に立ちはだかる。
「お逃げください!」
主人を即座に守るその姿、侍女の鑑!
だがしかし!
「カ…カテリーナさんも、一緒に!」
震える手でカテリーナさんの腕を掴んで引っ張るが、
「私に構わず!さあお早く!」
「そんな!」
自分を盾に私の事を逃そうとするカテリーナさん。
そうこうしているうちにドラゴンは目の前に迫り、バサァと大きく羽ばたいて地響きと共に目の前に降り立つ。
しかも、3匹…!(この場合、匹って単位であってるのだろうか…)
1番大きな黒いドラゴンと、その脇を固めるようにやや小さめな桃色のドラゴンと緑のドラゴン。
やや小さめって言ったって、相手はドラゴンだ。
その大きさたるや、うちの軽トラを凌ぐ。
「カ…カテリーナさぁん…!」
あまりの迫力に思わずカテリーナさんの腕にすがる。
しかしカテリーナさんは、安心させるように私の手をそっとさする。
「姫さま、大丈夫です。」
先程とは打って変わって落ち着いた声だ。
覚悟を決めてしまったのだろうか?
私はギュッと目を閉じて、カテリーナさんのメイド服を握りしめた。
「トキコ姫、驚かせてしまったようで、申し訳ない。」
落ち着いた低い声が聞こえて、恐る恐る目を開ける。
カテリーナさんの後ろからそっとのぞくと。
「リグロ…さん?」
穏やかな微笑みを浮かべているリグロさんがいた。
お読み下さりありがとうございました。