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「げぇぇ!!お…お館様!!」


日帰り温泉、《朝霧の湯》は内湯、外湯合わせ大小10の温泉が楽しめます。


「なぁぁにが〝げぇぇ!〟じゃ!!この痴れ者が!」


内湯にはミストサウナも完備しており、その日によって季節のハーブミストが噴出されるようになっていて、心身共にリラックスしていただけます。


「お…お館様!ど…どうかご容赦を!」


その他、ジェットバス、打たせ湯など、さまざまな趣向を凝らしたお風呂は、もちろんすべて天然温泉をひいていて、効能は肩こり、腰痛、神経痛、リウマチ、切り傷、打ち身、疲労回復、美肌など多岐に渡っています。


「遅い遅いと思っておったら、こんな素晴らしいところでおぬしたちだけで楽しみおって!!」


湯上がりにはお休み処でおくつろぎいただけます。室内着も準備しておりますので、館内はどうぞそちらにお着替えいただき、ゆっくりとお過ごしください。


「しかしお館様…!見てくだせぇ!この日帰り温泉を!こんな、こんな素晴らしい場所、とても離れ難く…!」


お食事処では、各種アルコール、ソフトドリンク、お料理に、デザートも取り揃えております。また、売店ではお土産のほか、着替えの下着や洗面道具も扱っておりますので、手ぶらでお越しいただいても大丈夫です。


「くぅぅぅ…!悔しいがおぬしの言う事に否やはない…!」


フロントでは、バスタオル、フェイスタオル、館内着とロッカーの鍵をお渡しします。お荷物のある冒険者の皆様も安心してお楽しみください。大きなお荷物については、フロントでお預かりいたします。


「でしょう?!わかってくださいましたか?!お館様!」

「…なお、貴重品については、貴重品ロッカーのご用意もございますので、ご入用のお客様はフロントスタッフにお声かけください。…って、聞いてた?」

館内を案内して、一生懸命日帰り温泉について説明しているその傍らで、リーズレットさんはラウムさんをしばき倒していた。

「ん?あ…ああ!聞いていたぞ!」

ぱ!と顔をあげて答えたリーズレットさんだったけど。


…絶対聞いてない。


私はため息をついて、後ろをついて来ていたエレンダールさんに振り返った。

「と、まあこんな感じのものが、日帰り温泉です。」

エレンダールさんはこめかみをグリグリともみながら、そっと目を伏せた。

「…トキコちゃん、アナタ、本当にとんでもないものを…。」

大きくため息をつくエレンダールさん。


「で?この日帰り温泉?入館料っていったかしら?とにかく、ここを利用するのにいくらですって?」

「300リルです!」

「それで?その中には、その、バスタオルとか、室内着とか、その分の料金も含まれてるのよね?」

「はい!それはもちろん!そちらはレンタルになりますが…。あ、お食事処での飲食とか、売店でのお買い物は別途料金がかかりますよ?」

「お風呂で使う、石鹸は?」

「石鹸は置いてないんですが、先程お見せしたボディソープとシャンプー、コンディショナーと洗顔フォームは置いてます!あと、パウダールームにメイク落としと化粧水、乳液なんかはありますよ!ブラシとクシ、シャワーキャップと歯ブラシセットはご希望の方にフロントでお渡ししています!」

「……それも、タダ?」

「入館料に含まれてます!」

「確か、お休み処とやらには毛布もあるのよね?」

「はい!お昼寝も出来ますよ!」

「それで、時間無制限?」

「いえいえ!閉館時間が夜9時…えっと7つ鐘なので、それまでには出ていただかないと…」

エレンダールさんの疑問点に答えていると、さらに大きなため息をつかれた。


ちなみにこちらでは時間について、1日を8つに分けていて、だいたい3時間ごとに鐘を鳴らす事になっている。


エレンダールさんはグググ、と拳を握って震え出した。

「なんなのよ?!その天国みたいな場所は!!見たこともないような上質な布の手ぬぐい!室内着!石鹸よりはるかに良い洗体液!しかも髪用の洗い液?!貴族も使ってないような化粧品まで!!」

ドッカーンと火山の噴火のように怒られた。

「ツッコミどころが多すぎよ!むしろツッコミどころしかないわよ!それでなんでその値段なのよ!!」

「‥‥極めて適切なお値段だと「んなわけあるかー!!」」


エレンダールさん、オネエを忘れてる。


エレンダールさんははぁはぁと肩で息をしながら続けた。

「まったく!こんなの、客が殺到するに決まってるじゃない!見た?!入り口の長蛇の列を!!」

言われてツツーと冷や汗が流れる。


そうなのだ。

今や『朝霧の湯』はオルガスタでもっともホットな注目の場所になっている。

らしい。

冒険者でも十分手が出る価格で、見たことも聞いたこともないような贅沢な体験が出来ると、人々が殺到している。


おかげで商売繁盛はありがたいんだけど、開館から閉館まで人が押し寄せ、整理券なしではとても捌ききれない客足となってしまった。

それと同時に旅館の朝霧館の方も大変な話題で、なんと半年先まで予約がビッシリ埋まってしまった。

ちなみに半年先以降は、今は予約をお断りしている。


朝霧館の宿泊料金については、商業ギルドのギルドマスター、アーキンドさんと相談という名の熾烈なバトルの末、一泊20000リルとなった。

アーキンドさんは50000リルの線を譲らなかったのだが、私とお母さんの粘り勝ちだ。

おかげでお料理やサービスにお金をかける余裕が出た為、館内履きや浴衣をお持ち帰りOKにしたり、料理の品数を増やしたりしたところ、アーキンドさんがすっ飛んできて散々怒られたのはいい思い出だ。


「本当にあなたという子は!!もうちょっと常識ってものを…あら?リーズレットは?」

お説教の途中、エレンダールさんがふと辺りを見回す。

「……とっくに、お風呂に…。」

おずおずと答えると、エレンダールさんは顔を真っ赤にしてプルプルと震え出した。


「リーズレットォォォ!!」


オカマの大噴火である。






お読み下さりありがとうございました。

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