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「はい、じゃあいきますよ〜。ハイチーズ!」

私はカメラをまずジーノ君に向けた。

チロリンと音が鳴り、スマホ画面に文字が浮かぶ。

以前、レイドックおじさんにブレスレットをあげた時にやってみた《鑑定》。

もしかしてアレで人に対しても鑑定できるのでは?とやってみたら、なんと出来てしまった!

本当にスマホが万能すぎる。

「ねーちゃん、ハイチーズはねぇよ。」

侑李が呆れた声を出した。

「うるさい侑李。どれどれ…」

私は画面を見る。

おおおおお!!!

やったぞ私!

ジーノ君の写真に被せるように文字が!

おかげでジーノ君のきれいなお顔がよく見えん!

「ジーノ=マクドウェル。HP300、MP350、称号は竜帝の子、エンシェントドラゴンの継承者。あ!あった!ユグドラニアを担う者。」

「なんだと!!」

私が読み上げたとたん大声を出したのはリグロさんだった。

すごい勢いでこちらにやって来て、ガッシリと肩を掴まれる。

「ほ…本当なのか?!ジーノが、エンシェントドラゴンの継承者というのは!!」

「痛い痛い痛い!」

あまりの力強さに思わず声が出る。

「ち…父上…!」

ジーノ君も震える声でリグロさんの腕に手を当てた。

「ああ、ジーノ!信じられぬが、本当だとしたら我がニフラにとって福音だ。我々竜族がどれほどこの時を待ち望んで来た事か…!」

リグロさんは涙を浮かべてジーノ君をみる。その間も肩に食い込む指の力が強くなる。

あがががが!

「はい…!僕も信じられませんが、もし自分がエンシェントドラゴンの継承者なら、こんなに光栄な事はありません。ニフラの為に、大きく役立つ事が出来ます!」

ジーノ君はすでにボロボロと涙を流していて、しきりにそれを拭っている。

大変感動的な場面なのだけれど!

「とりあえず、とても肩が痛いのですが…!」

私が絞り出すように言うと、リグロさんはハッとしたように手を離した。

「これは…!し…失礼した。あまりの事につい…!」

申し訳なさそうな顔で頭をかく。

ようやく解放された肩をさすり、やっとホッとした。

「んもう、リグロったら!いつもの落ち着きはどこへいったのよ。まあ、気持ちはわかるわ。おめでとう!」

エレンダールさんはそう言いながら私の肩に手を当てる。

するとホワ、と肩のあたりが暖かくなって、ジンジンしていた痛みが消えた。

す…すげえ!!何今の?!魔法?!

「待ち望んだエンシェントドラゴンがついに現れたか。めでたいことよ!」

リーズレットさんもニコニコと笑っている。

まわりはおめでたいムードに包まれた。

「お父さん、エンシェントドラゴンって?」

私が聞くと、お父さんも嬉しそうに説明してくれた。

「ああ。竜族の住むニフラ領はな。東の溪谷地帯にあるんだが、そもそもとても生き物が住めるような場所じゃなくてな。それを初代竜帝であるエンシェントドラゴンがその力で土地に力を与えて眷属の竜達と暮らすようになったんだ。だが、長い時が過ぎ、その力も薄れていって、今じゃまた元の厳しい場所に戻りつつある。」

「竜族には古い言い伝えがあってな。ユグドラシルに導かれし愛し子が現れた時、エンシェントドラゴンもまたその継承者が現れる。竜の谷は再び大いなる力を取り戻すだろうというものだ。トキコ姫、こうしてジーノにその力が顕現したのもそなたあっての事。竜帝として、お礼申し上げる。」

リグロさんが続けて、そのままジーノ君と共に跪いて頭を下げた。

「ちょっ…!やめてください!リグロさん!ジーノ君も!」

せっかく仲良くなった人にそんなことをされては私の方が居た堪れない。

私は急いでリグロさんを起こそうとしたが、リグロさんはとても巨大なので全然歯が立たない。

「お父さん!ちょっと!やめてもらって!ほら!侑李もジーノ君起こして!」

私が言ってお父さんと侑李はそれぞれを起こしてくれた。

ふう、やれやれ。

「ありがとう。トキコ姫。我は直ぐにでもニフラにこの慶事を伝えに帰りたいが、まずは後の2人の鑑定だな。」

若干ソワソワしているリグロさんに、よほど嬉しい事なんだという事がわかる。

リグロさんのお尻に大型犬のしっぽが見えるよ…!

私はそれからレンブラント君とハルディア君も鑑定してみた。

2人についてはジーノ君みたいな特別な称号はなかったんだけど、やはりユグドラニアを担う者という称号はあって、そしてそれとは別にスキルがあった。

「《剣聖》…だと!!まさか!古文書に伝わる幻のスキルじゃねぇか!」

「僕のスキルの《知恵ある者》もです!信じられません!」

2人とも呆然として自分の手を見つめたり、腕を摩ったりしている。

「…ラドクリフちゃん、どう思う?」

エレンダールさんは神妙な顔になった。

「ああ、ちょっと信じられねぇ事態だな。ユグドラシルの力が弱まっていると言われているこの時にこの事態だ。何かの力、おそらくユグドラシルの力が働いてるとしか思えねぇ。」

「っていうより、トキコちゃんの力かしらね。ユグドラシルの愛し子はユグドラシルの力を使えるだけでなく、ユグドラシルに力を与える事も出来ると言われてるわ。こうなると、あなたが別の世界に渡ったのもユグドラシルの意思を感じるわね。」

エレンダールさんが言って、お父さんは黙り込んでしまった。




お読み下さりありがとうございました。

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