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「まったく…!お前たちは!」
呆れたという顔でお父さんに怒られた。
ところ変わって王宮内の一室。
バルコニーでぎゃあぎゃあと姉弟喧嘩を始めた私たちの傍ら、侑李のお友達とアルベ君は実に素晴らしい働きをしていたらしい。
私達の喧嘩の内容が国家機密的な事だと即座に判断したジーノ君が周囲に結界を張り、漏洩を阻止。
ハルディア君は周囲に人がいなかったかどうかを確認しつつ、お父さんとジーノ君のお父さんに内密に報告。
レンブラント君はアルベ君と共に私達の会話内容を聞きつつ、夜会会場から離れた会議室の確保、及び王様へしばらく席を外したいと報告。
うーむ、侑李の友達が有能すぎる!
「まあまあ、2人も悪気があったわけじゃないんだし。」
お父さんがすごい剣幕で怒ったせいか、エレンダールさんが取りなしの立場をとってくれる。
「ジーノ、即断での結界展開、でかしたぞ。」
東の公爵、リグロさんも息子を労った。
「ハルディア殿もレンブラント殿も良き動きだったの。やれ、次代は安泰じゃ。」
西の公爵、リーズレットさんも大きく頷いた。
公爵達からの賛辞に3人は嬉しそうにはにかんだ。
こういうところは少年らしい。
「とにかく、お前達はこれからますます周囲から注目を集める事になる。これ以上貴族のしがらみを増やしたくなければ迂闊な言動はしない事だ。」
お父さんが厳しく締めくくり。
「「はあい。」」
私と侑李は大人しく返事をした。
それを聞いて大人達はホッと息をついた。
「……あのぅ。ところで。」
おずおずと声をあげると視線が私に集まった。
「この機会だから、ひとつ、お願いがあるんだけど。」
「…なんだ。」
「リリアンフィア、やめたいんだけど。」
私の言葉にみんなで顔を見合わせる。
私はぐっと拳を作った。
「お父さん、本当に、切実にリリアンフィアは無理!違和感のかたまり!お願いだから、斗季子に戻らせて!」
半ば半泣きでお父さんの服をつかんですがる。
それを見てお父さんはタジタジとなり、侑李はため息をついた。
「たしかに、リリアンフィアは可哀想だと俺も思う。お父さん、ここにいる人達のあいだだけでも、斗季子じゃダメなの?」
侑李の援護射撃!
弟よ!!
「かわいいと思うけど?リリアンフィア。」
エレンダールさんは小首を傾げる。
かわいいのはアンタだ…!
なんだその仕草!
萌え殺す気か!
「我も姫には似合っていると思うが…慣れた名があるのならばそちらの方が落ち着くのであろう?対外的にはリリアンフィアとしても、事情を知る者のあいだではよいのではないか?」
「リグロさん!なんていい人!好き!!」
お父さんから離れて思わずリグロさんに抱きつくと、リグロさんはハハハと笑って私の頭を撫でてくれた。
「リグロ…!」
「父上!!」
焦った声を出したのはお父さんだけではなかった。
ん?ジーノ君?
「父上!おやめください!軽々しく姫に触れては…!」
「ああ、すまん。だがリリアンフィア姫はかわいいな。いや、トキコ姫だったか?」
「父上!!」
リグロさんは大柄なお父さんよりさらに大きい。身長はおそらく2メートル超え、がたいもいい。
頼りがいの権化だ。
「うちには女の子がいなくてな。トキコ姫、今度ぜひ東にも遊びに来られよ。妻も喜ぶだろう。」
目を細めてそう誘ってくれる。
なんていうか、父性がすごい。
「行きます!」
思わず即答してしまった。
「ハッハッハ!よければうちの子になっても構わんぞ?それ、そこのジーノの嫁にならんか?」
「父上!!」
リグロさんの言葉にジーノ君が焦った声を上げた。
そりゃそうだ。
会って間もない人と冗談でも「ぜひその方向で!」うぇぇ?!
ジーノ君のありえぬ反応に思わず口が開く。
「リグロ!!斗季子は嫁にやらんぞ!」
「お父さんもリグロさんも落ち着いて…」
どんどん逸れる話しに侑李が間に入ってくれた。
「まったく…。しょうのない大人じゃ。
とにかく、ここにおる者たちの間ではトキコと名乗るがよかろう。嫁だのなんだのの話はとりあえずやめじゃ。」
リーズレットさんが仕切って、ようやく話の終着点が見えた。
「そうね。そうしましょ。いいかげん、戻らないとまずいわ。なにせ今日の主役が揃っていないんだから。」
エレンダールさんもそう言ってドアを見やる。
私たちはようやく夜会会場へとノロノロ歩きはじめた。
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