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(正直前書きとかも緊張しながら書いている、そんな私…)
「2人とも、面をあげよ。」
王様は威厳のある声でそう言った。
私と侑李はその声で顔を上げる。
王様はにこやかに笑い、何度か頷く。
「よく来た。会えて嬉しく思う。どうか楽にしてほしい。」
「はっ」
「はい。」
私は体を伸ばし、侑李は立ち上がって2人でゆっくりと後退り、お父さんと並んだ。
っていうか、練習の時のエレンダールさんとまったく同じセリフ…!
そのことに、ここまでは形式的なものなのだなとわかる。
「ウォードガイア、なんとも美しくも頼もしい子らではないか。余も嬉しく思うぞ。」
王様はお父さんに声をかけ、お父さんは軽く黙礼した。
「ありがたきお言葉でございます。」
お父さんが答えると王様は満足そうに頷いた。
「聞けば、リリアンフィア姫はユグドラシルの愛し子、ユウリ殿はユグドラシルの賢者とのこと。これで我が国も安泰だ。さっそく、こちらでもお二方が快く過ごせるよう、部屋を整えさせてある。長く、この国に在っていただきたく思う。」
王様の言葉にピリッと背筋に緊張が走った。
4大公爵家の会談。
そこで私たちはこれまでの経緯を説明した。すると、4大公爵家では私たちの希望を優先して、基本的に私はお父さんの領土であるオルガスタ領で、侑李は学園で過ごす方向でと話がまとまった。愛し子や賢者の役割、具体的に何をするのかとかもわからないし、もし必要があるのならばその時に必要な場所に行けばよいのでは?と言う意見にまとまってくれたからだ。しかし、王家はきっと私たちを囲いこもうとするだろうというのが一致した意見だった。
そしてこの二日間で私はエレンダールさんから血反吐を吐くようなマナーレッスンを受けた事をここに記そう。
「ありがたい事でございます。王都滞在中はぜひ、お言葉に甘えさせていただく思います。」
お父さんがそう答えると、王様はわずかに眉間に皺を寄せる。
「王都滞在中、とは?お二方は今後はこの王城にて過ごされるのだろう?」
意外な事のように言う王様に、お父さんは一度私と侑李の顔を見て、そして後ろに並んで立っている他の公爵達を回し見る。
「愛し子、賢者と言えども、2人はまだこちらに来て日も浅く、さらにユウリに至ってはまだ学園に在籍しております。それは少し、荷が勝ちすぎております。」
それを聞くと王様はハッハッハッと大きく笑う。
「案ずる必要はない。儀礼ならばこちらでお教えいたそう。もちろん、ユウリ殿はこのまま学園に通われるがよい。リリアンフィア姫はこちらですべて面倒をみよう。安心されるがよい。」
……ちっとも安心じゃないのですが。
内心不満を思っていると、どうやら顔に出たらしい。
お父さんに視線で諭された。
「恐れながら、2人の希望もございます。愛し子、賢者については、その役目もどのようなものか未だ明確ではなく、それならば本人達の希望を叶えていただきたく存じます。」
「ふむ。」
王様はお父さんから私と侑李に視線を移した。
「リリアンフィア姫、ユウリ殿。それがお二方の希望か?」
「はい。」
「このまま、父の元におります。」
2人で大きく頷くと王様の眉間の皺が深まった。
「ウォードガイアに良いように言いくるめられてはおらぬか?ユグドラシルの愛し子、賢者の力は、そもそも一介の公爵にはあまりあるもの。国の為にその力を振るうのが本来である。」
煽るように言われて、カチンとくる。
しかし、ここまでは想定内だ。
「どうか、ご容赦ください。私たちはもともと一庶民の出です。そして、一庶民であり続ける事を望んでいます。」
笑顔では答えると、王様はふむ、と考えこんでしまう。
「他の公爵家にも、異論はないか?」
王様は今度は後ろの公爵達に尋ねた。
「愛し子様と賢者様の御心のままに。」
代表してエレンダールさんが答えると、王様はいよいよ渋い顔になった。
「…アルベルト、どう思う。」
王様は玉座の斜め後ろに立つ、金髪の男性に話を振る。
おそらく、彼が王太子。
「父上、もしお許しいただけるのでしたら、リリアンフィア姫とゆっくりとお話しさせてはもらえないでしょうか?」
……なんですと?
突然の発言に私はへっと間抜けな顔をしてしまう。
なんだ唐突に。
「おお!それは良い!リリアンフィア姫と我が息子、アルベルトは歳も近いように思う。きっと忌憚なく話せるだろう。」
ちょっと!
なんだいきなり!
予定に無かった事にすっかり動揺して、お父さんに視線で助けを求める。
「陛下、急に言われましても、娘も心の準備が出来ないでしょう。日を改めていただく。」
お父さんも助け舟を出すが、
王様はゆっくりと首を振った。
「なに、若い者同士、無礼講でも構うまい。そうだな?アルベルト。」
「はい。もちろんです。姫には身分などを気にせず、忌憚なくお話しいただければと。」
勝手に話を進めるな!
私はすっかり困りきって後ろの公爵達にも目を向けた。
公爵達は歯噛みするような顔で私を見るばかりだ。
えええええー?
そうこうするうちに、す、と手をとられる。
いつの間にか私の側まで来ていた王太子が私の手をとっていた。
乙女の手に勝手に触んな!
「さあ姫。庭をご案内します。参りましょう。」
こっちの返事も聞かず、王太子は私の手を引いて歩きだす。
なにそのゴーイングマイウェイ?!
王子様ってみんなこうなの?!
お読み下さりありがとうございました。