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頑張ります…!
朝ごはんが終わってまったり。
テレビが見れるでもなく、ネットにニュースも繋がらない。
仕方がないのでソファでおせんべいをかじっていると、ふと、隣に侑李が座った。
「ねーちゃん、俺にも。」
侑李の出した手におせんべいを乗せる。
侑李はそれを食べるでもなく見つめていたけど、やがて意を決したようにこちらを見た。
「ねーちゃん、俺もねーちゃんみたいに前向きに考えてみるよ。まず、この世界で生きる事を考えないとな。」
真剣にそんな事を言う。
なんだか両親を見てるとどうにかはなりそうな感じだが、侑李にとっては人生最大の大ピンチだったのだろう。
きっと眠れずにこれからの事を考えていたに違いない。
真面目だからなぁ。
しかし少しでも前向きになれたのならそれは良い変化だ。
「そうだね。なんだか訳がわからない事には変わりないけど、少しずつわかってきた事もあるし、前向きに頑張ろう。」
そう答えれば侑李はホッとしたように笑った。
「ところでねーちゃん。ねーちゃんのスマホって、使えるだろ?俺のはどうなんだろうと思ってさ。ちょっと見てみたんだよ。そしたら、これ。」
侑李はそう言って自分のスマホを差し出した。すると。
《メインモバイルとリンクしてください》
と表示されている。
なんだこれ?
見たことのないメッセージに首をかしげ、自分のスマホを取り出すと。
ピコーン。
《メインモバイルとのリンクが完了しました》
侑李のスマホのメッセージが変化した。
「あ!開ける!」
侑李はロック画面を開ける。
覗き込んでみると、電話帳、地図、そして昨日不審に思ったアプリとよく似たアプリが目に入った。
《yuri》
「…………。」
「…………。」
私と侑李は顔を見合わせ、いそいそとそのアプリをタップしてみた。
浅葱 侑李17歳
HP ♾
MP ♾
称号 銀狼将軍の子 転移者
ユグドラシルの賢者
「…………。」
「…………。」
再度、顔を見合わせる。
「「おとうさぁぁぁんんん!!」」
浅葱姉弟大絶叫である。
朝の父の話を思い出し、嫌な予感で胸がいっぱいになる。
どうせいっぱいになるならもっと他の事でいっぱいになりたかった。
私たちの声を聞きつけて、お父さんは焦った様子でやってきた。
お母さんも心配そうについて来ている。
お父さんは侑李のステイタスを確認するなり、再び深いため息をついて頭を抱えた。
「愛し子に続いて賢者…。どうなってるんだよ!うちの子は?!」
「「あんたが言うな!!」」
私と侑李の声が仲良く重なった。
お父さんはその反応に苦虫を噛み潰したような顔になり、申し訳なさそうに視線を下げた。
「ユグドラシルの賢者。これも愛し子と同様、国の保護対象となるだろうな。ユグドラシルの賢者は、あらゆる魔術を行使出来ると言われ、その威力は想像を絶する。1人で一国をも滅ぼせると言われている。やはり、伝説上のものだ。」
「やだよ!そんな物騒な存在!」
侑李は朝食時の私ととてもよく似た反応をした。さすが姉弟である。
「もちろん、そんな事にはさせねぇ。こう見えて父さん、けっこう…「それはもう聞いたし」…そうか。」
お父さんのセリフを途中でぶった切って侑李はフン、とそっぽを向く。
ぶった切られたお父さんは眉を下げて少々寂しそうな顔になった。
しかし私にも侑李にもそれにかまってあげられる心の余裕はない。
「それで?うちの子たちがなんだか大層なものだって事は私にもわかったけど、けっこう顔の効くあなたとしては、どうするつもりなの?」
お母さんが冷えた笑みを浮かべた。
その顔にお父さんはみるみる青ざめる。
さすがは浅葱家の最終兵器である。
お母さんには誰も勝てない。お母さんにいまだに新婚時代のような気持ちでいるお父さんは特に。
「…悪いが、2人とも、公爵家に来てもらおうと思う。王城へ行くのは出来れば避けたいところだが、少なくとも4大公爵には話しておきたい。へたに隠して後で発覚すると面倒な事になるだろう。今後の事も含めて、相談しておきたいんだ。どうにも俺1人で抱えるには荷が勝ちすぎている。」
お父さんの言葉に私たちはしばし考えたけど、結局、お父さん以外この世界についてわかっている人なんていなくて、お父さんの考えに従うほかないのだろうと言う結論に達した。
その後は話は再びスマホに戻り、侑李のスマホの機能を確認する事になった。
どうやら、私のスマホがメインとなり、侑李のスマホはその子機のような存在になったらしい。
地図アプリには私のスマホに加えて侑李のスマホも表示され、侑李の地図アプリにも私のスマホが表示された。
おお!これはいい!
これならたとえ離れていてもお互いの場所がわかるじゃないか!
さらに地図上の侑李のスマホをタップしてみると、状態まで把握出来る優れものだった。
うーん、至れり尽せり!
侑李のスマホは、私のスマホみたいに買い物が出来る事はなかったけど、ATMアプリは入っていて、お金のやり取りは出来るらしい。
うーん、至れり尽せり!
侑李のスマホの機能の確認をしたあと、私はお父さんとお母さんにもスマホを持ってきてもらう。
侑李の時と同じように、私のスマホに近づけると、ピコーンと音がして2人のスマホもリンクされた。
「これは便利だ。この世界にはオーバーテクノロジーだがな。家族の無事が確かめられるのはいい!」
お父さんは大きく頷く。
それから私たちは再び家族で話し合う事とする。
「それで、お父さん。さっき私たちに公爵家に来てほしいっていってたけど、いつ行けばいいの?」
素朴な疑問を投げかけると、お父さんはうーんと考えこむ。
「行くにしても、まずは俺が1人で行って話をつけてくる。公爵家には俺の弟がいるんだが、相手は上位貴族だ。家族を連れて行くにしてもやはり準備もあるからな。」
「めんどくさいなぁ。」
思わず呟けば、お父さんは何故か嬉しそうに笑った。
「どうやって行くのさ。地図で見る限りここから20キロ以上あるよね?歩き?」
侑李が聞いて、お母さんがポンと手を叩く。
「車で送ってあげる!」
「いや待て。車なんてここには存在してないんだ。そんなもんで領都を走ったら目立って仕方ない。それに領都内は狭い道も多い。車は危ないだろう。」
お父さんの話にお母さんはそっか、と残念そうになる。
かと言って、歩きとなるとかなり時間がかかりだろう。
正直、よくわからないこの世界で、事情に通じているお父さんの不在時間はなるべく短くしたい。
また巨豚が出たらどうするんだ。
私たちはいい知恵はないかと考えた。
そして。
「あ、そうだ。」
私はひとつひらめいて、スマホを取り出す。
あんなもの、あるだろうか?
いくらネットでなんでも買える時代だといっても。
しかし!
「あった…。売ってたよ。」
陳列されていた事にビックリなんだけど。
お値段は、1万リル。およそ10万円。
一番お安いヤツだけど、これでいいよね!
「お父さん!原チャリ買おう!」
唐突な私の提案に、お父さんは「は?」
と口を開いた。
「ほら!お買い物アプリで買える!これなら小回りも効くし、狭い道でも大丈夫だよ!それに、小さいから隠しやすいし!」
画面を見せながら言うと、お父さんはしばし考えた。
しかしそのうち、よし、と顔を上げる。
「斗季子、それなら2人乗り出来るヤツはないか?今後の事を考えるとその方がいい。」
「それだと私とお母さんが乗れないよ!中免持ってないもん!」
私の抗議にお父さんははぁ、とため息をついた。
「あのな、そもそもここでバイクに乗れるヤツなんていないんだ。日本の法律の外なんだから、運転さえ出来りゃいいだろう。必要ならお父さんが教える。」
言われてハッとする。
それもそうだ。
無免許運転でも捕まらない!
ビバ!無免許運転!
結論として、小型のバイクを二台買うことになった。
ちなみにお代はお父さんが出してくれた!
お読み下さりありがとうございました。