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とある世界樹の異世界冒険生活 その④

おひさしぶりです。


俺、まさかの脇汗だった・・・!


衝撃の事実を知って、小一時間。

俺はその場にへたりこんだまま動けなかった。


脇汗。

脇汗って、なんだよ。


そりゃ、温泉で力も無くなるよ。

きれいさっぱり洗い流されるよ。


だけど・・・!


「絶対、超笑われる・・・!」


みんなに知られた時のことを考えて、気が重くなる。


エレンダールや、リーズレット。

そして誰より斗季子が絶対笑う・・・!


「ユージルくぅん?だいじょぶー?」


そんな俺の苦悩に気づきもせず、自称女神は心配そうにのぞいてくる。


誰のせいだと思ってるんだ!


じっとりと自称女神に抗議の視線を向けてみたが、そんな俺の気持ちを理解してくれるはずもなく、自称女神は「うーん」とか言いながら顎に指をあて、考え込む。


「とりあえず、お外のお友だち、呼んじゃおっか?」

「は?」


唐突に言われたその一言に、うまく反応できずに聞き返した俺の目の前。


「うお?!」

「なんだ?!」


どすんと尻餅をつくミカドと、そつなく着地するジャックディードが虚空からいきなり現れる。


「!!・・・ユージル?!」

「なんだここは?ユージル、無事か?」


二人は心配そうに俺の方をうかがい、それから自称女神に向き直った。


「なんだ?おまえ。怪しいヤツだな!」


ミカドは見知らぬ者に対する警戒心を隠そうともせず自称女神に鋭い視線を向けたが、それをジャックディードが制した。


「待て、ミカド。こいつは、いや、このお方はただの人ではない。我らよりも高次の存在だ。」


ジャックディードの言葉にミカドは目を見開き、自称女神は「ふふふ」

と満足そうな笑みを漏らす。


「さすがは元神と言われるだけあるわね。私のことをすぐに察するなんて。では、改めまして。」


自称女神はそう言ってひとつ咳払いすると、


「はっじめましてぇぇ!私、この世界を作ってくれるように浅葱家の先祖ちゃんに願いした、女神ちゃんでっす!言わば、この世界ができるきっかけになった、えっらぁぁい女神ちゃんなのだ!えっへん!」


大袈裟に振りまでつけ、ターンをし、最後は決めポーズをとって俺たちを見る自称女神。


「・・・殴っていいか?」

「やめてくれ。」


ミカドとジャックディードがボソッとそんな会話を交わす。


しかし自称女神はそんな二人に構うことなく、話を続けた。


「ミカド君に、ジャック君。実はね?ユージル君ってば、この世界から世界樹の力を無くそうとして自殺しようとしてたんだよ?んもぉ、二人からも言ってやってよぉぉ!そんな馬鹿なことは考えるのやめなって!」


自称女神の言葉に二人の鋭い視線が向けられた。


ちょ・・!そんなデリケートな話題を、そんな簡単に言うか?!普通!

それに、俺に世界樹の力がほとんど残っていないと聞き、さらに実は俺は目の前の自称女神の脇汗から産まれたのだと聞いてしまった今、正直自分を消そうなんていう考えは吹き飛んでいる。


「「ユージル!!」」


二人の厳しい声が重なり、その直後、頬に重い痛みが襲いかかり、俺は吹っ飛ばされた。


「ばっかやろう!!なに考えてンだ!!そんなことをして、誰が喜ぶってンだ!!お前、姉御を泣かせる気かよ!!」


ミカドは俺を殴り飛ばし、肩で息をしながら涙目で俺を見る。


「ちょ・・?!ミカド?!待て!」

「待てもヘチマもあるかってンだ!お前、どうして俺たちになんの相談もなくそんなバカなことを考えやがったんだ!俺たち、友達だろう?!ふざけんな!!」


ミカドはもはやだらだらと涙を流して俺の胸ぐらをつかんでいる。


「いや、だから、そうじゃなくて!」

「まだ言うか?!この大馬鹿野郎!!」


バキ・・・!!


ミカドは再び容赦無い鉄拳を俺に食らわせる。


それから、俺をガシ!!と抱き締め。


「ユージル!!ユージルよぉ!!死ぬな!死ぬなんて、馬鹿な考え捨てちまえ!!うおおおおおおお!!!」

「ちょ・・ミ・・ミガ・・ド・・、ぐるち・・!!」


雄叫びをあげながら慟哭するミカドの力はそれはそれは強くて、俺はうっかり死にそうになる。


「・・・ユージル。」


薄れ行く意識の中、一面の花畑が見えて「ああ、俺も死んだら天国とかに行くんだな」的なことをぼんやりと考えていると、低い声に意識を戻される。


その声にミカドの拘束は解除され、げほげほとむせ込みながら顔をあげると、

真っ黒に澱んだ目のジャックディードが超至近距離で俺を見ていた。


「ひ・・ひぃっ!!」


思わず恐怖の声をあげて後退ろうとするが、がし!とジャックディードが俺の両腕をつかむ。


「ユージル、かつての我が神、我が存在意義。我は世界樹の腹より生まれし幼き岩石の神。だが聖なる泉を司る女神により地獄の業火の化身となった。ユージル。我が同胞、共に聖なる泉の女神の元、その楽園に座する者よ。神は生まれ変わり、その役目も変える。乾いた岩より、燃え盛る火炎へと。大いなる神木より、女神の伴侶へと。共に永きを生き、そしてその永劫なる道を歩む者よ。我はその者のためならば、たとえ我が業火に水竜の御手が伸ばされようとも、再びその地を我が炎にて染め上げてみせよう。ユージル、迷える神の子よ。神は、変われる。我らが女神がその道を指し示し、照らし、導いてくれよう。」


こ・・・!!

こわっ!!


え?なに?怖いんだけど!

え?なに言ってるの?

どういう意味?!


「ユージル、ジャックディードの言う通りだぜ!」

「え?!ミカド、今のわかったの?!すごいね?!」


「うんうん!青春だなぁ!女神ちゃん、感動しちゃった!」


呑気だね?!

あなたが余計なことを言ったせいで、こっちは散々な目にあってるんだけど?!


もはや何かを言い返す気力もなく、ただ呆然と自称女神と、ミカドたちを見ていると、三人は今度は俺に構わず話を進めだす。


「そもそも、なんだってユージルは自殺なんて馬鹿なことを考えたんだ?」

「あ!それはねぇ!ここに世界樹の根っこがあるでしょぉ?これがこの世界を完全にリリアンフィアちゃんの温泉界にするのに、ちょっとひっかかっててねぇ?ユージル君ってば、それを何とかしようとしたみたいなんだけど、こんなに大きい根っこだしぃ、どぉにもならなくてぇ。そしたら、ユージル君は、自分がいなくなればこの根っこもどうにかできるかもって考えたみたいー!」

「本当に馬鹿だぜ!ユージル!そんなことまでしてこの世界を姉御の温泉界にしたって、そんなの姉御は喜ぶわけがねぇ!だったら、世界樹の影響を残したまんまの方が全然いいぜ!」

「同志よ。その蒙昧なる思考は自ら永遠の暗き闇へと落ちるもの。大いなる我らの女神の望むところではない。」


三人はどうやら意気投合したようで、当事者のはずの俺を置き去りに話を進めていく。


「でもよ、ユージルがそこまでなんとかしたいってんなら、出来るもんならなんとかしてやりたいよな!」

「我が傍らに常にあり続ける偉大な竜よ。その心に抱く同胞への思いは我とておなじこと。我の力及ぶ限り手を差しのべようぞ。」


二人の言葉に自称女神はうんうんと頷いて、それから、ぱん!と手を合わせる。


「そうねそうね!二人の言うとおりよね!うん!それなら、引っこ抜いちゃいましょうか!」


自称女神がそう言うと、ミカドとジャックディードはおもむろに世界樹に手をかけた。


「そおおおおれええええいい!!」

「エクスプロージョン!!」


力任せに世界樹を抜こうとする二人。

っていうか、ジャックディード、エクスプロージョンって、確か爆裂魔法で、物理的に腕力で何とかするやつじゃないのでは?


「なにしてんだ!ユージル!おまえも早く手を貸せ!っつーかお前のためにやってんだから、お前が中心にならなくてどうするんだ!」

「我が同胞よ!その御手に世界樹を取れ!特は来た!!」

「んもう!ユージルちゃん!なにやってんのよ!」


三人に同時に攻められてる俺だけど、これって俺が悪いの?


なんとなく理不尽な気持ちになりながら俺はおずおずと世界樹の根に手を伸ばす。


「「「そおおおれええっ!!!」」」


なんだか三人で世界樹を引き抜くという作業をすることになり、訳がわからない状況だと思いつつも俺は全力で力を込めた。


しかし世界樹の根はびくともしない。


「・・・・はぁ、はぁ、だめだ!」

「くっ・・・!我は選ばれし者ではないということか・・!」


しばらく三人で頑張ってみたが、世界樹の根は思いの外強靭だったらしい。


「困ったわねぇ・・・そうだ!三人でダメなら、助けを呼びましょう!」

「は?助け?・・・「お岩ちゃああああん!!」・・・え?!」


自称女神が虚空に向かって大声で呼ぶと、ポン!と虚空にお岩が現れる。


「え?なに?なにこれ!ここどこ?!」


突然俺たちの前に現れたお岩は訳がわからないという風にキョロキョロと辺りを見回している。


そりゃそうだろうよ!

そして俺も訳がわからない!


「来た来た!お岩ちゃん!突然呼び出してごめんねぇ?あのねあのね!急で悪いんだけど、手伝ってこれないかな?こ世界樹の根っこをね?引っこ抜いてほしいの!」


自称女神は胸の目で手を組み、きゅるるん、と上目使いでお岩に言う。


ちょ・・・なんの説明もなしにそんなことをいきなりいわれても・・・!


「お岩!ごめん!説明する!まずこの人は・・・「えええええ!あたし今ネイルの途中だったんだけどぉ!マジありえんてぃなんだけどぉ!爪われちゃうんだけどぉ!」・・・え?そこ?」

「あー、それはごめんねぇ?かわりに今度、まつぱ奢るから!パリジェンヌ!」

「それマ?んー、エクステつけていい?」

「もちろん!エクステもつけ放題!」

「超やる気でた!」


・・・・・ええええええ。

お岩、それでいいんだ?

この人、誰だろう?とか、ここはどこなんだろう?とか、そもそもこの状況は?とか。

いいんだ?


さすが斗季子の眷族。


俺はあきれ半分、諦め半分な気分でそれ以上の言葉をつぐんだ。


「よぉし!それじゃいくわよぉぉ!!」


「「「「そおおおおれええええええ!!!」」」」


しかし、それでも世界樹は動かない。


「だ・・・だめだ・・・!」

「我が力もここまでか・・・!」

「無理ゲーなんですけど!」


ミカドもジャックディードもお岩もしばらく頑張ってはいたが、息をきらせてへたりこんだ。


「4人でもむりかぁ・・・んじゃ!・・「え、ちょ・・・まさか!」・・ヴィヴィアンちゃああああん!!」


やっぱりーーーー!!!










お読みくださりありがとうございました。

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