とある弟の異世界学園生活 その③
学園祭当日だ・・・!!
準備期間中は本当に忙しくて、色々と大変だったけど、慌ただしくしているうちに、あっという間に学園祭当日だ!
そして結局、俺たちのクラスは執事喫茶をやることになった。
マナミちゃんの必死の要望に、レンブラントとハルディアとジーノが、
「学園祭のためにこんなに頑張ってくれてるマナミ嬢のために、希望を叶えてあげたい。」と賛同した。
そして学園祭というものがあまりよくわかっていない他のクラスメイト達も「そこまで勧めるなら、きっと楽しいのだろう。」と賛同し・・・。
執事喫茶決定の知らせにマナミちゃんは鼻血を出しながら号泣し、「我が推し人生に悔いなし。」と言いながらサムズアップして倒れた。
「なあ、レン?これ、おかしくないか?」
準備された執事服に着替えて鏡の前でくるくると回る。
執事服は、基本的には外注したのだが、それにクラスの刺繍が得意な女子達がかなり気合いの入った装飾を施してくれた。
刺繍は、貴族女子の嗜みのひとつらしく、「我がヴァンデール家の女性に伝わる、刺繍の技、ご覧に入れますわ!」
やら、「『刺繍王』と言われたおばあさまからの直伝の技術、今こそお見せする時ですわ!」やら、とても張り切る女子が続出したのだ。
しかも、刺繍は他人に披露する場などほとんど無いらしく、その力の入り方はすごかった。
というわけで、執事服、というにはいささか華美すぎる物を着ているのだ。
「ユウリ、よく似合っていますよ。やはり公爵家の嫡男、いくら学生の祭りとはいえ、そのくらいの装飾があっていいと思います。」
同じく装飾過多な執事服を身につけたレンブラントが襟元を直しながら答える。
うん。すごく様になってる。
キリッとしたイケメンのレンブラントは見事に執事服を着こなしていた。
ちなみにハルディアとジーノは、それぞれ模擬戦と演奏会に出るため、クラスの執事喫茶の参加は免除されていた。
元の世界だとどちらも参加するのが普通だったけど、初めての学園祭、しかも貴族子女ばかりのこの学園で、掛け持ちは厳しかった。
そしてダンボールやガムテープも無いこの世界では、教室の飾り付けも生徒たちだけで行うのは難しく、外注で行っている事も多い。
まあ、仕方ないだろう。
ダンボールがあったとしても自分たちでやるのはちょっと荷が重い。
「執事担当の皆様、そろそろご準備を!お客様が大勢いらしています!」
案内担当の女子生徒から声がかかる。
俺達はよし!と気合いを入れて出ていった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
「・・・・なんだこれは。」
喫茶室スペースを一目見て愕然となる。
そこにはすでに大勢の人が着席していて、さらに廊下には列をなす人々。
え?まだ、始まったばかりだよね?
なんなの?この混雑ぶり。
「まあ!ユウリ様ですわ!」
「ステキ・・・!!」
俺達を見つけた女子生徒から声が上がる。
喫茶スペースは途端に騒がしくなった。
「・・・こりゃ大変だ。」
「ユウリ、早く仕事をはじめましょう。」
急いで席に向かうと、そこに座っていた女子生徒達の視線が突き刺さった。
「お帰りなさいませ、お嬢様方。お飲み物は何になさいますか?」
マナミちゃんの鬼の指導通りにそう聞けば、女子生徒の顔がみるみる赤く染まる。
「あ・・・あの、私。」
戸惑う女子生徒に、ニッコリと微笑みかけてみる。
「わ・・・私、あの、ここここ紅茶を・・・ふぅ。」
「シンシア様!しっかりなさって!!」
気を失いそうになる女子生徒を周りの友人が叩き起こす。
「シンシア様!耐えるのです!このために今日まで頑張ってきたのでしょう?」
「そうですわ!しっかりなさって!」
「こっ・・・こっこっこっ、紅茶を!いただきますぅ!!」
ダラダラと汗をかきながら必死の形相で注文をするシンシアちゃん。
「かしこまりました。」
笑顔で了承して紅茶の準備をする俺。
そしてワゴンで紅茶とお菓子を運んで、給仕を始めると、シンシアちゃんはコヒーコヒーと奇妙な音を立てて息をしだした。
大丈夫なのか・・・?
「どうぞ、お嬢様。熱いのでお気をつけくださいませ。」
「ユ・・・ユ・・・ユウリ、様が!!私の、ために!!ユ・・・ゆ・・・湯・・・湯ぅり・・・サ魔・・・蛾・・・!!」
ちょっと?!
本当に大丈夫?!
言葉になってないけど?!
心配になってシンシアちゃんを見ていると、少し離れたテーブルから「ぎゃああああ!!」と悲鳴が上がった。
見ればレンブラントが倒れかかった女子生徒を抱き止めている。
「お嬢様、どうぞお気を確かに。どうか私めの入れたお茶をご賞味ください。執事の身で恐縮ですが、貴女のために心を込めて入れたのです。」
切なげな顔でそんなことを囁けば。
ブッフゥゥ!!
あ、鼻血吹いた。
バッターン!!
あ、気絶した。
すげぇな!レンブラント!
執事というよりホストに見えるよ!
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