とある弟の異世界学園生活 その②
「どこで聞いてたの?!俺達、たった今教室でその話して、たった今、学園長室に来たんだけど!聞かれるような時間無かったんだけど!!」
「レンブラント様?それで、学園長の許可は?」
「ああ、それなら問題ない。大変にお喜びでね。すぐに許可がおりましたよ。」
「それはよかったです!みなさんは、何かやりたい事はあるんですか?」
「俺は騎士団志望の奴らを集めて模擬戦をやりたいと思っている。」
「なるほど!ステキです!それなら、校庭にその時間を確保しなければですね。えっと、2日に分けて、トーナメント戦、なんていかがです?」
「おお!いいな!」
「ねーねー、僕、演奏会したいと思ってるんだけど。」
「わあ!ジーノ様は音楽がお得意なんですね!演奏会は学園祭の花形です!早速、講堂を押さえましょう!そうですね。ハルディア様の模擬戦と時間をずらして、どちらも見れるようにすると喜ばれるかと。」
「すごい!ぜひそうして欲しいよ!」
ちょっと。
なにこれ?
なんでこんなに盛り上がってるの?
だいたい、ついこの前まで、3人ともマナミちゃんの事、苦手にしてたよね?
「マナミ嬢。ユウリから聞いたのですが、各クラスの出し物というものがあるとか。どのようなものがあるか、ぜひ相談させていただきたい。」
「任せてください!メイド喫茶に執事喫茶、射的なんかもいいですねぇ。あ!クイズ!クイズはいかがです?例えば、この世界の歴史なんかを題材にして、正解数に応じて景品を出すようにすると盛り上がると思います!」
「素晴らしい!!見直しましたよ!マナミ嬢!」
・・・・・。
俺、実行委員長、やめていいかな?
マナミちゃんの方が向いてるよね?
それから、最初にした、俺の質問聞いてた?
マナミちゃん、どこからかぎつけてきたの?
「ほらほら!ユウリ君もぼさっとしてないで!レンブラント様、どこか空き教室はありませんか?学園祭運営部の部屋が欲しいです!」
「すぐに用意しましょう。」
「あ!私、学園祭実行委員やりたいです!副委員長!」
「もちろんだよ!ぜひ!」
「ああ!こちらから頼みたい!」
レンブラントが空き教室を確保するため、教員室へ向かい、ジーノとハルディアが二つ返事でマナミちゃんを実行委員に迎える。
確かにね。
マナミちゃんも向こうの世界出身だし、実行委員になってくれたら心強いんだけど。
「ねえ、マナミちゃん?学園祭の事、いつ聞いてたの?」
あらためて聞いてみれば、マナミちゃんはキョトンとした顔になった。
「そりゃ、推しのユウリ君が学園祭なんて乙女ゲームのメインイベントみたいな事するとなったら、地獄の底からでも察知しますよ?当たり前じゃないですか。」
聞いた俺がバカだった・・・!!
色々と腑に落ちない、おかしいところもあるけど、俺はすっかり脱力して、盛り上がって話しながら進むマナミちゃんとハルディア、ジーノの後ろをトボトボとついていった。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
それから、俺達は頑張った。
なにしろ初めての学園祭。
そしてその学園祭がどういうものかもわからない人達。
そりゃあ、大変だった。
まず、先生方への説明。
学園祭を行う目的と、どのような行事か。必要日程、進め方、費用などなどなどなど。
資料の作成をして、それを配布。
その資料をもとに説明。
超、頑張った。
・・・・・マナミちゃんが。
もちろん、資料作成もしたし、費用の算出、必要な施設の割り出しと割り当て、それもやったけど。
いやぁ、壇上に立って先生方へ説明をするマナミちゃんの威風堂々とした、佇まいたるや。
政治家の演説もかくや、という感じ。
「ねえ、なんでそんなに入れ込んでるの?そりゃ、俺も学園祭はやりたいよ?だけどさ、その、熱の入れようが、すごいというか。」
あまりにも鬼気迫る勢いで準備を進めるマナミちゃんに聞いてみると、マナミちゃんはキョトンとした顔になる。
そして。
「推しのユウリ君が執事喫茶でウエイターをやっているところを見るためには、この命も差し出しますが。んもー、そんな常識、今更聞かないでくださいよー。」
・・・聞いた俺がバカだった。
そしてなぜ俺が執事喫茶をやることになっている?
カラカラと笑うマナミちゃんに、ため息しか出ない。
なんだかマナミちゃん、ねーちゃんと話した後あたりからキャラ変わってるよね?
どうしたの?はっちゃけたの?
それとも、うちの斗季子が何か良からぬ影響を?
「さ!ユウリ君!次は保護者の方々へのお手紙作成ですよ!向こうの世界と違って、こちらの保護者のみなさんは色々と準備に時間がかかるんですから、早めに作らないと!」
張り切って机に向かうマナミちゃん。
まあ、これだけ頑張ってくれてるし、いいか。
気にするのはやめて、俺も頑張ろう。
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