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「ご……ごめんね?アルベ君。まさか、手から温泉が吹き出すとは……」


召喚したバスタオルでアルベ君を包んで、びっしゃんこになってしまったアルベ君の髪を拭いながら私は平謝り。


ちなみにびっしゃんこになったのはアルベ君だけではなく、部屋中に撒き散らされたお湯をメイドさん達がお掃除してくれてる。


本当に申し訳ない。


「本っっ当にアナタって子は!!どうなるかぐらい考えて行動しなさいよ!!王太子殿下にいきなり温泉ぶっかけるとか、ありえないわ!!」


私の隣ではオカマが絶賛激オコ状態だ。


いつもならとりなしてくれるリーズレットさんも流石に苦笑いを浮かべてこちらを見ているに止まっている。


ううう……

言い訳のしようもない。


アルベ君は大きくため息をついた。


「………もう、いいです。なんか、もう、諦めました。」

何かを悟ったような顔になってしまったアルベ君にますます心配がつのる。


それって、もしかして、私の「どうにかなるさ」的な思考が移ったってこと?!


「それで?トキコの加護はついたのかの?」

リーズレットさんに聞かれてアルベ君は自分の両手を眺める。


「よく、わかりません。しかし、何かとてもスッキリとしています。」


それは温泉を浴びて、お風呂に入った気分になったからでは?と、ちょっと思ったけど、黙っておこう。


「トキコ姫。」

リグロさんに促されてアルベ君にスマホを向けてみる。


アルベルト=マクシミリアン

称号 湯goodラニアの為政者

   人族の王

   温泉神の尻拭い


…………んん?


私はスマホを二度見した。


湯goodラニアの為政者。

これはいい。

私の希望通りだ、しめしめ。


しかし。


「どうした?トキコ姫?」

リグロさんが心配そうに声をかけてくれる。


いや、うん。

これはちょっと、見せられないなぁ。


などと思っていると。


「なんじゃ?!これは?!」

リーズレットさんが声をひっくり返した。


ゴン!


「痛ぁ!」

エレンダールさんのゲンコツが頭に落とされる。


「何するんですか!痛い!」

「こっちのセリフよ!!このおバカ!」

「おバ……!ひどい!エレンダールさん!私、いちおう神様なんですけど!!」


どう考えても神様に対する態度じゃないよね?!


私が怒るとエレンダールさんはハン、と鼻を鳴らした。


「少しは神様らしくなってみなさいな。」

「キィィィ!!くやしぃぃ!!」


私は手拭いを召喚して噛み付いた。


「実にくだらない事に神の力を使うのぅ。」

召喚された手拭いを見てリーズレットさんは呆れた声を出した。


「あの、私の鑑定はどうだったのでしょう?トキコ姫の加護は得られていたのですか?」

アルベ君に話しかけられて、ハッとする。


オカマと喧嘩してる場合じゃなかった!


「あ、うん、えっと。うん!大丈夫!ちゃんとついてた!湯goodラニアの為政者って称号があったよ!」

私はスマホを後ろに隠してニッコリと笑う。


「……本当ですか?」


疑いの目を向けるアルベ君に、私は何度も頷く。


嘘はついてないぞ!


「…‥見せては、くれないのですか?」

アルベ君に詰め寄られて、私は視線を逸らした。


「トキコちゃん、誤魔化さないで見せた方が、今後のためよ。」

エレンダールさんに睨まれて、私は渋々スマホをアルベ君に差し出す。


「あぁ、たしかに為政者とありますね。つまりはこの世界を政治的に治める事が私の努めという事になるのですね。人族の王、というのはおそらく為政者たる為に必要な称号なのでしょう。それか……ら……」


アルベ君の動きが止まり、じっとスマホを凝視している。


「…‥尻拭い?」

ボソッと呟いて、ぎゅっと眉間に皺を寄せるアルベ君。


「王太子殿下!本当にこんな神で申し訳ないわ!トキコちゃんに代わり、私が謝罪します!」

エレンダールさんが頭を下げた。


「おそらく、トキコがこの調子で何も考えずに行動した後の、後始末役、ということじゃ。国を治める事も大義じゃというのに、王太子殿下には苦労をかける事になるの。」

リーズレットさんに言われてアルベくんがザッと青ざめた。


「そんな……!」


そのまま固まってしまった。


「我も、トキコ姫の保護者役として、姫が突飛な事をせぬよう、尽力するとしよう。」 

リグロさんがそう言って、とりあえずその場はおさまった。


うん、固まってるアルベ君をのぞいて。


なんだかアルベ君が大変そうだから、何か対策を考えよう。

お手伝いを作るとか。


あ!そういえば、前に侑李の友達の鑑定した時、ちょうどいい感じの称号がなかった?


たしか、『ユグドラニアを担う者』だっけ?


あれ、湯goodラニアにも引き継げないかなー。


私がそんな事を考えていると、バタン!と大きな音と共に扉が開かれる。


公爵達と、固まっていたアルベ君は即座に表情を変え、緊張した顔になった。


「何事だ。」

アルベ君の低い声が扉の方へと向けられる。


そこには、息を切らせた兵の姿。


「も……申し上げます!ただ今、オルガスタより、レイドック様が火急の要件にてお目通りをと……!傷を負っていらして、手当を受けていらっしゃいます!」


その言葉に一瞬で空気が変わる。


「案内せよ!」

リグロさんが立ち上がり、兵の元へと進む。


「ハッ!」

踵を返し、走り出す兵にリグロさんが続く。


アルベ君も足早に部屋を出た。


レイドックおじさんが、怪我?


不穏な報告にザワザワと胸が騒ぐ。


おじさんももちろん心配だけど、お父さんやお母さんの顔がよぎり、力が抜けていく。


「ねーちゃん!!」

リグロさん達と入れ替わるように、侑李とミカドちゃんが部屋に入ってきた。


「侑李……!」


呆然としたまま動けないである私の手を侑李が掴む。


「しっかりしろよ!行くぞ!」

侑李に引きずられ、私はなんとか足を動かし、部屋を出た。




お読みくださりありがとうございます。

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