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あれから私たちはエレンダールさんとラウムさんとも合流し、マーヤさんを招いて私たちに今まで何が起きたかを説明。


マーヤさんはとても驚いた様子だったけど、希望が持てたような顔をしていて、私へのプレッシャーが半端ない。


ううう……

神っていっても、見習いなのに。


私自身がまだ、神の肩書きを受け止めきれていないのに。


「それにしても、トキコ姫が神となられるなんて……ああ、それならば今までのように気安く接するのは失礼ですわね。申し訳ありません。」


「や…‥やめてください!今まで通りで!!どうか今まで通りで!!」


畏まるマーヤさんを必死で止めて、なんとか納得してもらう。


せっかく仲良くなったのに、距離をおかれるなんて寂しすぎる!

特にマーヤさんは私の癒しなのだ!


「ところでマーヤちゃん、リグロが囚われてるってことは、今、ニフラはどんな状況なの?」


エレンダールさんがたずねると、マーヤさんは顔をこわばらせた。


「今は、土神様が長としてニフラを取り仕切っている状況です。とはいえ、実際に実務を行っているのはお父様ですわ。」


マーヤさんの声は沈んでいる。

そのことからも、あまり良くない状況だということが伺えた。


「……おかしいのです。土神様は本来ニフラの痩せた土地に加護を与えてくれる神。なのに、毎日供物を捧げさせ、見目の美しい竜族の若いもの達を男女問わず周囲に侍らせ、無理な要望ばかり。竜族の民からも不満が上がっていますが、少しでもそれが耳に入れば、ひどくお怒りになります。」


マーヤさんの話は、眉を顰めるようなものだったけど、私や侑李にはそれがどんなにおかしいことか、よくわからない。


この世界の神様というのがどういうものなのか、わからないからね。


そもそも、神様なんて、元いた世界ではその存在を実際に見ることなんてできなかった。


しかしエレンダールさんとリーズレットさんは愕然とした顔をしていた。


「なによ、それ。」

「……ありえぬな。」


「せっかくトキコ姫とユージル様に豊かにしていただいたニフラですが、民は怯え、笑顔を失っています。これが我々を見守る神の所業かと、今ではユージル様にまで猜疑心を持つものまで現れています。」

マーヤさんがそう続けて、私達は視線を落とす。


私は、神様がどのようなものか、今ひとつピンときていないけれど、緑に包まれたニフラで、嬉しそうに笑っていたニフラの人達の顔が思い出されて居た堪れなくなる。


綺麗事なのかもしれないけど、出来たらみんなが幸せそうに笑っていてほしいと、そう思う。


楽しく仕事をして、そして仕事の後には温泉にでも入って、汗をながして、満足して欲しいと思う。


今まで、痩せた土地で大変な思いをしてきたというニフラの人たち。

そのニフラに温泉も湧いて、とても嬉しそうにしてくれてたのに。


「…‥許せん。」

自分でも思っても見なかった低い声が出てハッとする。


ハッとしたのは私だけでなく、気がつけば私に視線が集まっている。


「……やるか?トキコよ。」


ニヤリとリーズレットさんが好戦的な笑みを見せた。


その笑みに私はしばらく考えてからうなずいた。


ここで土神とやり合ってしまったら、もう後退りは出来ないだろう。


しかし神を相手に私の事を考えて意見してくれたリグロさんはどうしても助けたい。


「…‥私は、とても平和な場所で育ちました。だから、いきなり争いを仕掛けるような事はしたくありません。」


「じゃが!」


「ですが!…‥この状況をこのままにも出来ません。まずは、その土神に会って話をします。」


リーズレットさんは私の言葉に不満そうな顔になる。


エレンダールさんも、何か言いたげだ。


「そしてもし、お話をしても通じないようならば。」


私は周りを見回してグッと拳を握った。


「おしおきです。」


私がそう言うと、リーズレットさんは満足そうに笑い、エレンダールさんも深くうなずいた。


「共に4大公爵としてこのユグドラニアを守ってきたリグロをこのままには出来ぬな。妾もなんとしてもリグロを救いたい。」


「そうね。リグロもトキコちゃんの事を考えていたみたいだし、出来たら《湯けむり連合軍》に加わってもらいましょう!」


2人の言葉にマーヤさんはそっと目尻を拭う。


「ありがとうございます…!よろしくお願いいたします!」


マーヤさんのそばに寄り添っていたミカドちゃんも、決意を込めた目で私を見た。


「姐御!本当に感謝する!俺たち『ハコネ隊』に、なんでも言ってくれ!」


私はやる気をみなぎらせるミカドちゃんにも頷きを返して、もう一度みんなの顔を見る。


「さあ!行きましょう!」






お読みくださりありがとうございます。

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