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「…ん?」

目を覚ましたら夜だった。

どれだけ寝てたんだ私。

ぼんやりする頭でこれまでのおさらいをする。

思い起こせばことの発端はあの地震だった。

変だと思ったんだよ。

縦揺れでもなく横揺れでもなく、ぐるりぐるりと揺れるなんて。

それからあの巨豚。

どうやら美味しいらしいけど、あの後どうしたんだろう?

そして両親が重度の厨二病患者だったという事実。そしてそれがどうやら現実であるという惨劇。

いかん。また気を失いそうだ。

カチャリと遠慮がちにドアが開く。

顔を覗かせたのは侑李だった。

「ねーちゃん、大丈夫か?」

心配そうにこちらを伺っている。

優しい弟だ。

「…ありがとう。ユリウス。」

「その名で呼ぶんじゃねぇ。」

即座に拒否される。

「次呼んだらリリアンフィアお姉様って言うからな!」

「大変申し訳ございませんでした!!」

それだけは嫌だ。

侑李はおずおずと部屋に入ってきて、ベッドの傍に腰を下ろした。

「…どうなるんだろうな。俺たち。」

どこか不安げな声でぼそりと呟く。

「それな。」

ぼそりと返せば、なんだそれと薄く笑った。

「もうさ、なるようになるとしか、言いようがないよね。常識の範疇を超えすぎてるよ。

どうやらお父さんは元々この世界の住人らしいし、お母さんもなんだかこの状況に理解があるみたいだし。2人に任せて流されるしかない!」

ポン、と膝を打てば、侑李は苦笑した。

「楽観的だなぁ。ねーちゃんは。」

「とりあえず、目標は元の世界に帰ること!来れたんだから、帰れるはず!」

「来れたけど帰れねぇってのが異世界転移のセオリーなんだぜ?」

「とりあえず目標は、衣食住を確保すること!住むところと着る物は確保出来てるから、食うに困らないようにする!」

「目標変わってやがる。」

よし!

なんだか見えてきた!

そして元気が出てきたぞ!

ヤケになってるだけかもだけど、悲観的になるよりいい!と、思う。

ベッドからのそのそと起きて、リビングへと向かう。

これからどうすればいいのか、お父さんとお母さんに聞かなくちゃ。

それに、世界樹の葉とやらの話も途中になったままだ。

トントンと階段を降りて、リビングのドアを開けると。

「おう!目が覚めたか!」

ホッとしたようなお父さんの声…の持ち主のアナタ誰かですか?!

ピキリと固まる私の身体。

我が家のソファに、銀髪のイケメンがおる!

腰までのサラサラとした銀の髪に、瑠璃色の瞳。北欧の人も真っ青な白い肌。

顔つきはたしかに我が父なんだけど、色素をリニューアルするだけでこうも人って変わるんですね?!

固まったまま動かない私にお父さんらしきイケメンは、ん?と首を傾げた。

やだ、かわいい。

いやいやいや!父だ!父だから!

なんだか若返ったような気もするが

これは父だ!

「あー、なんだ、その。こっちに戻って、身体もこっちに合わせて変わっちまってな。もともと、こっちが本来の姿なんだ。」

居心地が悪そうに視線を彷徨わせる。

「こっちって…」

あまりの事に言葉が出ない。

助けを求めるように振り返れば。

「ゆっゆうり?!」

後ろから付いてきた弟もなんだか様子がおかしい。

真っ黒だったはずの髪は濃いめの灰色っぽい色味になり、その瞳は濃い紺色だ。

そして色が白い!

黄色人種のはずなのに、色が白い!

大事なことなので二回言いました!

なんという事だ!さっきは寝起きでぼーっとしてたのと部屋が暗かったのとで気が付かなかった!

「驚いてるけどさ。ねーちゃんも鏡見てみなよ。」

侑李は困ったように髪を掴んでいじっている。

鏡ですと?

ま…まさか?!

ワタクシも銀髪に?!

ダダダダダと廊下を走って、洗面所へ向かう。

乱暴にあかりをつけて、鏡の前に立つと。

「な…な…なんと?!」

そこに写っていたのは、少し赤の入った金に近い栗色の髪に金色と言っても差し支えない琥珀色の瞳だった。

そして色が白い!!

お父さんも侑李も大概白かったけど、さらに白い!むしろ透明!

透明感溢れ過ぎててむしろ見えぬ!

輝くような自分の肌の白さに思わず鏡越しでない腕を眺める。

白い!!

驚愕でガクブルしていると、後ろからお父さんが顔を覗かせた。

「俺の親父、お前のじいさんと同じ色だな。隔世遺伝ってやつか。」

1人だけ違う!と思っていたが、どうやらそういう事らしい。

いやいやいや!

こんな唐突にコスプレイヤーも裸足で逃げ出す出立ちになるとは…。

鏡の中の自分を食い入るように見てしまう。

控えめに言って、美少女だ。

とても20歳と思えぬ肌艶だ。まるで赤子のよう。

お肌のトラブルに悩む世の女子達よ。刮目せよ!

これならリリアンフィアと言っても充分通用するであろう。

いや通用したくないけどね!

しばらく呆然と鏡を見ていたけど、そのうちに外からの喧騒が耳に入る。

今しばらく自分と父、弟の変貌に驚いていたいけど、ザワザワとしたその音は少しずつ大きくなってきているようだ。

なにか、こっちに向かって来てる?

お父さんも途端に鋭い目になり、素早くその場を去っていった。


ありがとうございました。

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