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幻想  作者: 場合 照美
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百万円

 世界は元素記号で書かれている、という。例えばダイアモンドは炭素だからC。そういえば、私はダイアモンドを触った記憶がない。もしかしたら、親が持っていてそれに触れたことがあったのかも知れないが憶えていない。ダイアの指輪なんかを持っていたかどうかも憶えていない。誕生石が真珠だったので、真珠の装身具をいくつか持っていたのは憶えているが、その形状なんかはすべて忘れた。

 私自身は装身具の類はほとんど持っていない。少しは持っているが日常的に使うことはない。ダイアモンドにしても、手に入れることは経済的に無理だとしても、触る機会ぐらいは、そうしようと思えばできなくはないだろう。これが百万円だと言って、親が銀行の封をした札束を持って帰ってきたことがあったっけ。何の金だったか。素通りする金だったには違いない。商売で金を扱うことはあっても、現金というのは珍しかった。だからいまでも百万円はどれくらいの大きさかわかる、と思っていたが、あの頃と今では紙幣が変わっている。そして、またもう少ししたら変わるのだよね。

 私は銀行などを全く信用していないので、資金はすべて箪笥預金になっている。百万円手元にあるかどうかが、商売が続けられるかどうかの基準でもあった。だから枕の下に札束を入れて寝ていたのだ。廊下が騒がしいと思った。多分実際に廊下で喋るものがあったのだろう。このマンションでは珍しい。独り者が多いからだろうか。学生時代なんかは、騒がしくするのは私の方だった。友人たちを呼んで、夜っぴて呑んで騒いだものだった。

 そう、これは夢の話なのだけれど、廊下の様子を探ろうとして玄関に来たら、ドアが少し開いていた。そういうことはちょくちょくある。鍵をかけ忘れたのだ。昔はこんなことはなかったな。やはり老化しているのだな。しかし、今回はそうではないようだった。廊下にいる不審な人物の一人は、なにか金属の道具を持っていた。ピッキングをされたようだ。ここに住んでいるものはみんな貧乏だから、盗むものなんてないよ。そうかな。

 ふと見ると、百万円を入れていた封筒が玄関に置いてあって、中身が減っていた。泊めてやっていた老人が、彼らにその存在を密告したのだという。いろいろ不用意な話だね。老人は突然美女に変わって、稼いで返すという。しばらく経って美女の鞄の中を見たら、百万円どころか、四五百万円の札が入っていた。私はそこからもちろん百万円だけ返してもらえばいいわけだ。

 だが大体その辺りで目が覚めた。勿論うちに、百万円の現金なんてあるわけがないのだ。貯金だってありはしない。ということは、今やっている商売も潰れかけているということだ。

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