朝
起きる夢を何度か見た。最近あまり見ていなかったから珍しい。起きる夢はたいてい自分の部屋に起きるので、それだけでは区別がつかない。いつの間にかまた別の夢を見ているので、さっきのは起きる夢だったのだとわかるのだ。一度は、自分の部屋とは似ても似つかない、おしゃれなデザイナーズ商品の天井や家具の部屋だったので、あれっと思って瞬きしたら、いつもの自分の部屋に変わったので、これはどこから夢なのか、単なる見間違いだったのかわからない。
そこは確かに自分の部屋なのだが、隣に友人が寝ているというのも見た。数十年前の若いときならば、そんなことも確かにあったのだし、誰かと暮らしていたこともあるけれど、今は一人暮らしだし泊りに来るような友人もいない。いとこか何かと暮らしていて、そいつが、私の荷物を勝手に持ち出そうとしていた。それは単なる間違いで、すぐに返してくれたのだが、スーツのズボンが一本見当たらない。私は弁償するように言う。いくらがいいのだろうかと、金額を考えているうちに目が覚めた。
そう言えば別の夢の中で、道端でコンクリートの壁などに絵が飾ってあったので、近づいて見たら、好きな漫画家の原画だったので見て回った。すると、呼び込みがやっていて、私は中に入った。小さな映画館のようになっていて、スクリーンに上映が始まった。未来の観光地のような内容だったが、見る気が失せたので帰ろうとする。やたら警備が厳重で、何人もの警備員が出入り口のところにいたが、別に咎められることはなかった。どうしたんだと言われたら、申し込みもしたしお金も払ったんだが、何の催しか把握していなかったと言おうと思ったのだが。払ったのは千五百円だった。帰りにロッカーを開けると、中が濡れている。誰かが後ろから水を撒いたらしい。そういう小さな穴が開いていたのだ。損害賠償、と私が言った。それはできません。気持ちでいいよ。ティッシュとか。主催者はポケットからティッシュの塊を出してくる。ビニール袋には入っていなかった。そんなところで夢から覚めたのだ。どうやらお金のことを考えると夢から覚めるようだ。
一回か二回は実際にトイレに起きたし、胃薬を飲んだのも実際に起きたのだろう。でもそれ以外に数回起きる夢を見ていた。そしてまたいつの間にか眠っているのだ。起きる夢の中の一つでは、時計がもうだいぶ遅い時間を示していた。もうゴミを出すのに間に合わないような時刻だった。でも、実際はそのあとまだ烏が鳴いていたので、そんな時刻ではなかったのだ。きょうは燃やさないごみの日だ。月一回なので忘れないようにしたい。
起きようと決めて起きた。コーヒー豆を電気で挽いて、薄いコーヒーを数杯容れる。パソコンを見ながらゆっくり飲んで、身支度をして出かけた。パンデミック中なのでマスクをした。猫は数年前に死んだので、餌をやる必要はない。昨夜は鰹を買ったので、一切れお供えにしたっけ。そのとき水も代えてやった。初めのうちは毎日水をやっていたが、このごろは気が付いたときしか上げない。月命日に刺身を買ってくるのも忘れるようになっていた。
スーツを着て、電車に載り、職場に行った。午前中だけのアルバイトだ。昔は満員電車で通ったこともあった。それは、中学校の産休講師だったのだが、あそこの給食は酷かった。主食がパンでおかずが焼きそばだったりした。しかも焼きそばの具はほとんどなかった。キャベツと肉片がほんのひとかけら入っているか入っていないか。テレヴィで日本の給食はアメリカに比べてバランスが取れているなどと言っているが嘘だ。地域によって異なることを、国のこととしてひとまとめにしていいわけがない。テレヴィはそういうのが多い。カフェテリア方式だと、嫌いなものは取らないだろう、などという憶測を語っていたりする。私は、カフェテリア方式にしたおかげで嫌いなものも食べるようになった例を知っている。
今の仕事は午前中におわるので、帰ってくる途中で買い物をして帰ってきてから食べる。そして昼寝をしてから、別の仕事に行く。
起きる夢は何度か見たが、寝ようとする夢というのはあまり見ない。一度も見たことがないかもしれない。また実際に寝た記憶がないこともある。それは、酔いつぶれて寝てしまうからで、寝る前に見ていた映画のラストを覚えていないこともある。そう言えば、朝起きたときに、テーブルの上に昨夜の食器が出しっぱなしになっていただろうか。鰹を食べたので醤油皿も出しっぱなしだったはずだ。出ていなかったとすればこれもまた夢ということになる。
あなたが毎日仕事に行って帰ってくる。あるいは学校に行って勉強して帰ってくる。そうした毎日は確かに現実のものと言えるだろうか。起きる夢の続きではないと言い切れるだろうか。




