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幻想  作者: 場合 照美
12/18

くまもんティーシャツを買った夜

 その商店街が閑散としているのを見たのは初めてだったような気がする。普段は人が溢れかえっているのが、夜になるといなくなるんだと思った。確かに、この時間帯にここに来たことがなかった。ライヴが跳ねた後だった。その劇場がなくなるということで、最後の興行のシリーズの一つを聴きに来たのだった。それなのに、その劇場に来たのは初めてだったのかも知れない。前を通ったことは何回もあった。昼間に映画を観に来たことくらいはあったのかも知れない。でも、夜は来たことがなかったのだろう。

 よく来るのは、大通りから少し入ったところにある小屋で、大通りには飲食店も並んでいて、夜になっても人が絶えなかったし、少し横丁に入るとわりとディープな繁華街もあった。その日もライヴの前にその中の一軒でワインでも飲んだのだっただろうか。二晩続けてライヴに来ていて、そのうちのどちらがどちらだったか今では憶えていない。ゴジラだったかノイズだったか。どちらも大音響で聴こうという企画だった。

 ノイズの大編成をライヴで聴くのは初めてだった。音源とかで聴いたことはあったけれど、ライヴの方がやはり愉しかった。終わったあと、物販でシーディーを買っていたら、バンドのリーダーが入り口の階段を上がってくるのに出会ったので、幸運にもサインをもらうことができた。いま手元にあるそのジャケットのサインを見てみると、英語で日付が書いてある。八年前の西暦と日付は読めるのだけれど、月名はジュライだかオーガストだか読み取れない。

 やはり夏だったんだな。

 人気のない商店街の、アパレルショップがまだ開いていて、通路にはみ出した陳列に、くまもんティーシャツがぶら下げられていた。欲しいなと思ったのだけれど、サイズが小さすぎるようだった。他にサイズはないのかと訊いたら、中にあるというので入っていった。見たら、それもまだ小さいと思ったけれど、これなら着れるかもと思い、それに安かったので買うことにした。そのときかったものは、いまも持っていて、一昨日も着たっけ。小さな綻びがあるのだけれど。

 そのあと、また呑みに行ったのだろうか。電車で一駅先のホテルに戻ったのだろうか。どちらかの駅の近くで、何か食べたとは思うんだけれど、憶えていない。歩いて帰るなら途中に当時好きだったハンバーガ屋もあったけれど、もう閉まっていただろう。さっきワインを飲んだ店にもう一度行ったような気がする。今度はビールを飲んだような気がする。

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