No title
目覚めたのは広い食堂。
明かりはなく、埃もない。ただただ広いその部屋に、長大なテーブルが一つ。真っ白なクロスが敷かれ、皺ひとつない。
周りに並べられた椅子。主賓席のみ、テーブルに背を向けているが、他はきちんとテーブルを向いて座れるように並べられていた。その椅子に腰かけ、机に突っ伏していた少年少女たちは、暗闇の中、互いを確認し合う。
全員似たような年頃の男女数名。しかし、ぱっと見たところ共通点はない。
男女、なので性別は関係ない。
全員年頃は似ているが、着ている制服は全て違う物。
記憶にかすりもしない顔ぶれに、誰もが押し黙る。しかし、そうしていても何かが解決することもなく、やがて黙っていることに疲れてきた彼らは、一人の提案で自己紹介を始めた。
向かい合うように座っていた少年少女たちの自己紹介が済んでなお、喋らぬ主賓席の存在。初めからテーブルに背を向けていた椅子に、確かに人影がある。声をかけても反応はなく、やがて痺れを切らした、上座の二人が回りこんだ。そこには――。
座る主賓席の主。
その手に握られた、差出人不明の白い封筒。
一人が隠し持っていたライターの明かりを頼りに、中身を確認する。
出てきたのは二枚の手紙。
『ようこそいらっしゃいました、皆様。
わたくしはこの館の主人。
皆様には、わたくしの主催するゲームへと参加いただきます。
これはお願いではなく、強制です。
ルールは簡単単純明快。
皆様はこの館に囚われた羊。
羊は一週間に一度、一人間引かれます。
それは羊の中に一人、狼が潜んでいるからです。
皆様には狼を探していただきます。
一週間に一度、羊が間引かれる日の正午、こちらの用意した紙に狼の名を書き、玄関のポストにお入れください。
正午までにお入れいただけない場合、または、皆様以外の名前を書かれた場合は無回答と判断させていただきます。
その場合、羊は必ず間引かれますこと、ゆめゆめお忘れないようお願いいたします。』
読み上げられる不気味な文章。
未だ一枚目だというのに狂気のにじむ内容に、誰もが驚愕し、震え上がる。
手紙を読んでいた者が、今すぐにでもその手紙を破り捨てようとするも、二枚目の存在を思い出した。
何か希望はないかと目を走らせる。けれども淡い期待はあっさりと裏切られた。
そこに書かれていたのは、全員の殺害予告。
それは、どの日に、誰が死ぬのかを記された紙だった――。