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一章 5 『これが異世界召喚ですか? A,違います』


 異世界での生活にも慣れてきた進藤。始めはアイリス達に迷惑をかけまいとがむしゃらに日々を送っていたが慣れてくると色々と気づいてくることもある。


 まず第一に日々の水の確保だ。これについては毎日午前と午後にアイリス家の近くの川まで水を汲みに出かけていた。近くと言っても数キロは離れているだろう。馬に荷台を引かせ川に行き、複数の20リットルほどの容量の桶に水を入れそれを持ち帰る毎日。それを飲料水や生活用水として使う毎日だった。


 桶を満水にして持ち帰るのだが馬で引いて帰るので結構揺れたりする。おかげで家に到着する時には水は減っていた。今はアイリスと一緒に進藤の仕事の一つになっていた。


 川で水を汲みそれを荷台に乗せる・・・これでも結構な重労働だ。これを今までアイリス一人で行って来たというから感服する。大人の進藤でもきついと感じる作業だ。


 「アイリスはこれを毎日していたのかい!?」


 初めて水汲みに行ったときに進藤はアイリスに尋ねた。


 「うん!水がないと大変だからね!毎日欠かさずしてるの!」


 曇り一つない満点の笑顔。ああ間違いないこの子やっぱり天使だ・・・そう進藤は思った。


 蛇口をひねれば水が出てくる・・・これがいかにありがたいことなのか改めて実感させられた。 


 これからは自分が行くからアイリスはゆっくりしてくれとも進言した。しかしアイリスはこれを拒んだ。


 「ううん!私も一緒に行くよ!二人で行った方が楽でしょ!」


 だってさ・・・・何度でも言おう!この子は天使だ!間違いない!


 それからはアイリスと共に水汲みに出かける日々が続いている。

 

 しかし今日は水汲みは中止になってしまった。


 なぜなら今日の天候は最悪。台風でも来たかのような横殴りの風と雨、これではとても外には出られない・・・外の作業は中止して家の中でじっとしていた。


 窓ガラスが突風でガタガタ音を立てて揺れている。これでは下手したら割れてしまうかもしれないほどだ。


 「進藤!窓を木の板で補強しよう!!」

 「はいっ!!」


 危険を感じたシルバと共に進藤は外に出て窓ガラスが割れないように補強作業を行った。木の板を窓の枠部分に釘を金づちで打ち込んでいく。


 暴風雨の中の作業は思った以上に進まない。木を抜けば木の板が飛ばされそうになる。しかし釘を一本一本地道に止めていくしかない・・・釘を打ち込んでいくシルバを見て進藤は思った。


 くそっ・・・!こんな時に電動ドライバーがあればサクッと固定できるのに!!


 電動ドライバーとはモーターの回転を利用してネジを打ち込んでいく工具のことである。これがあれば一瞬でネジを打ち込んでいくことが出来る。進藤が前の世界で仕事をいていた時の日必需品の工具の一つであった。


 板を押さえながらシルバが金づちで釘を固定していく姿を見て進藤はもどかしくなった。


 ドンッ・・・・


 進藤の足に何かが落ちて来た。何か風で飛ばされたのかと思って足元を確認する。


  「・・・なんだ?」 

 

 ・・・ん?


 ・・・・・・んん?


 ・・・・・・・・・んんん!?


 ・・・・・・・・・・・・・ある。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・電動ドライバーある。


 え?え!?えぇーーーーーー!?


 驚く進藤。なんと足元にはさっき進藤の脳内で思い描いたものと全く同じ電動ドライバーが落ちていた。しかもご丁寧にネジまで箱に入った状態で落ちている。どう見ても新品状態だ。ネジの長さも太さもまさに今必要としているサイズだ。


 進藤は足元に落ちていた電動ドライバーを手に取った。そしてスイッチであるトリガーに人差し指をかけ引く。


 ウィイイイイイン・・・・・


 電動ドライバーは軽快にモーターを回転させる。バッテリーも問題なさそうだ、うん。


 違う、そうじゃない・・・これはどう考えてもおかしい。こんなものがここにあるはずない。


 この前のペンチの時とは明らかに違う。どう考えてもこの時代の文明レベルでこんな電動ドライバーなんてものがあるはずない。でもそれは確かに今進藤の手の中にあった。


 あまりの出来事に呆気にとられる進藤。


 「おい!進藤!どうしたんだ!?しっかり板を押さえてくれないと固定できないじゃないか!!」

 

 雨の中の作業で少し機嫌の悪いのかシルバが進藤にきつめに声をかけた。


 「あ、あー・・・ごめんシルバ。えっーと・・・悪いけど少し見ていてくれないか?」

 「は?何を言っているんだ!?今は一刻も早くこれを終わらせて家の中に戻りたいんだが!?」

 「うん・・・それはわかる。俺も同じ考えだよ。とにかく今は俺のすることを見ていてくれないか?」

 「あ、ああ・・・そこまで言うのなら良いだろう」


 いつもと様子の違う進藤の様子に気づいたシルバ。言われた通りに進藤のすることを見守った。


 進藤は手に持って電動ドライバーで木の板を次々と手際よくネジで固定していった。その速さは先ほどまでのシルバの比ではない。


 あっという間に進藤はアイリス家の全ての窓の保護を完了させた。


 これにはシルバも目を見開きビックリした様子だ。


 「すごい!進藤!一体どういうことだ!何をしたんだ!?」

 「えっーと・・・なんでこんなことになったのかわからないんだけどこれは俺が依然愛用していた工具の一つなんだ」


 そう言って進藤は手に持っていた電動ドライバーを見せた。シルバはそれをまじまじと観察した。


 「なんだこれは・・・?形は銃のような気がするが、こんなもの見たこともないぞ?」

 「それを使えば簡単にネジを止めていけるんだよ・・・こんな風に」


 シルバの前で実演してみせた。


 「おう・・・なんということだ。こんな道具があるなんて知らなかったよ!俺にも使わせてもらっていいか!?」

 「ああ、もちろんいいよ」


 進藤はシルバに電動ドライバーを渡し使い方を教えた。シルバがさっそくネジを木の板に打ち込もうとした。しかし様子がおかしい


 「・・・あれ?おかしいな?このトリガーが硬くて動かないぞ?」


 苦戦している様子のシルバ。どうにも電動ドライバーが動かないらしい。


 「え?そんなはずは・・・さっきはちゃんと動いたんだけどな。ちょっと貸してくれ」

 

 進藤が電動ドライバーを受け取るとそれは正常に作動した。


 「あれ・・・?なんでだ?」


 それから何回か試したがどうしてもシルバが使おうとすると機械は作動しなかった。どうやら電動工具は進藤にしか使えないようだった。



 


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