一章 2 『天使が迎えに来た!?』
・・・う・・・うん?あれ?なんだ?体の感覚が戻ってきた?
「わぁ!」
進藤は慌てて起き上がった。目の前に広がるのは草原。空は快晴、白い雲がゆっくりと風に流されていく。
「なんだ・・・ここ?俺はたしか鉄筋の下敷きになったような・・・っ!?」
自身に起きた出来事を思い出して進藤は慌てて自分の体を確かめた。服装は緑色の作業着に頭にはヘルメットを着けたままだった。
「どこも怪我してない・・・?いや確かに凄い激痛だった気がするんだけど・・・」
隅々まで確認したがどこにも怪我をしたような跡はなかった。とりあえず進藤はヘルメットを脱いだ。
ヘルメットを尻に敷きその上に腰かける進藤。自身の状況を整理する。
「確かに俺はさっきまで現場にいたよな?そして鉄筋の下敷きになった気がしたんだけど・・・ここは一体どこだ?」
広い草原の中にポツリと進藤の姿があるだけだった。
「うーん・・・わかんねぇ。どこの田舎だ?」
訳の分からない状況に頭を抱える進藤。ふとある可能性が頭をよぎった。
「はっ!?まさか・・・ここが天国ってやつなのか?」
穏やかな風景。心地いい風が進藤を包み込む。うるさい現場の音も罵声も全く聞こえてこない。仕事ばかりでこんなゆっくりした時間を過ごすのは久しぶりだった。
「この平穏さ・・・そうかこれが天国ってやつなのか。思ったより現実と変わりないんだな」
ここが天国と思ったら進藤は変に納得してしまった。そう思ったら進藤は再び緑に生い茂った草原に大の字に寝そべった。
「あーあ、まさかこんな形で死んでしまうとはなぁ・・・呆気ない人生だったな。あとはここで生まれ変わるまでゆっくりしとけばいいのかな?まあ今はどうでもいいや・・・久しぶりにゆっくり寝れそうだ」
進藤は体を横に寝転がり目をつぶった。快適な気候も手伝いあっさりと深い眠りについた。
------------------------
「あ、あの・・・・」
「・・・ん?」
しばらくして体を揺さぶらるような感覚で進藤は目を覚ました。目を開けると不安そうな表情で進藤を覗き込んでいる少女がいた。
麦わら帽子をかぶった少女。赤毛が麦わら帽子の下から伸びている。瞳も赤色混じりの大きな瞳をしている。顔立ちは整っていたが日本人離れしていて西洋生まれのようだった。一見して10代前半くらいの子供だろうか。まさに美少女といった成り立ちだ。
「あの・・・大丈夫ですか?」
少女はおどおどしながら声をかけて来た。
「え?・・・あっ・・・大丈夫・・・ですが?」
突然起こされた進藤。目の前には見慣れない日本人離れした美少女の姿。
「もしかして・・・天使の方ですか?」
進藤は寝ぼけながらも少女に問いただした。
「え!?天使?誰がですか?まさか私・・・!?」
進藤の言葉に慌てふためく少女。その様子は見ていてなんだかほのぼのした。
進藤はゆっくり起き上がった。
「あれ?ここって天国・・・じゃないの?」
「その・・・何を言ってるのかよくわかりませんが、ここ私の家の牧場の中なんですが・・・」
少女は申し訳なさそうに言った。
「え!?牧場!?」
進藤が少女の言葉を聞き慌てて辺りを見渡すとさっきは見当たらなかった牛や馬の姿があった。どうやら放牧してあるらしい。
進藤は家畜を放牧していた敷地の中で眠っていたらしい。
「これは申し訳ない!!まさか人様の敷地だったとは!すいません!」
進藤は慌てて謝罪した。しかし少女は怒る様子もなく答えた。
「あ、いえいえ!そんなにお気になさらずとも大丈夫ですよ。人が倒れていたのでびっくりしただけなので無事で良かったです!」
少女は笑顔で答えた。その笑顔はまさに天使といっても過言ではないものだった。