二章 3 『笑顔にする仕事』
浄化槽の設置を終えた進藤は次にトイレの建設を始めた。一坪ほどの広さの小屋を建てることにした。
ここで進藤はトイレ全体を想像したら一発で作れるんじゃないかと試みたがそれは出来なかった。色々と同時に作成するのは難しいようだ。一つ一つの物をしっかりイメージしなければならないようだ。
なんとも謎の多い能力だが、それでも便利は良い。部品ごとの作成なら寸分違わず具現化することが出来る。これなら材料の加工も必要ないので無駄なく作成することが出来る。
まずは小屋の床の部分を作成する。ここは見た目豪華に大理石を使うことにしよう。進藤たちの目の前にピカピカの床が出来上がる。
そして壁は家の雰囲気に合わせてレンガ調の壁を用意した。しかし見た目はレンガ調だが壁の断熱性能はしっかり施している。これでどんな寒さが来てもトイレの中が寒くなることはない。そして天井にはセンサー式のライトを用意した。これでもう夜中でも蝋燭などを灯す必要もない。トイレの入り口を開ければ人の体温を感知して点灯する仕組みだ。
そして肝心のトイレだが進藤が用意したのは白い陶器のトイレだ。見た目すっきりのタンクレスタイプのトイレ。そして最新式のウォシュレットを備えている。
トイレにもセンサーが備えられており人が入ってきた瞬間トイレの蓋が自動で開くようになっている。さらにお尻が触れる部分には暖房が備えられており座った瞬間にひんやり感じることもない。そしておしり洗浄機能に乾燥機能も備わっており用を終え立ち上がれば自動で流してくれると言った品物だ。まさにトイレのフル装備状態である。
進藤の能力のおかげでここまで丸一日かからず建設出来た。夕方には完成したのでシルバたちを集めトイレのお披露目とした。
「これを一日で作ったのかい・・・!?」
我が家の庭に突然現れた小屋を見て驚くシルバ。
「まだ驚くのは早いよ。大事なのは中なんだからね!さあ中に入ってみてくれ」
「あ、ああ・・・」
シルバが少し緊張した様子でトイレの入り口を開けた。それを感知して中のライトが明るく照らす。同時にトイレの蓋が開きシルバを迎え入れる。
「うわっ!なんだこれ!?明かり・・・?蝋燭も無いのに明るいのか!?それになんだこれ!?急に動き出して口を開けだぞ!?食べられたりしないだろうな!?」
トイレの中の情報量の多さにパニック気味のシルバ。あたふたと動揺しているのが可笑しかった。
「ハハハ、大丈夫だよシルバ。それは別に人を襲ったりしないから。そこに座って今度からトイレをすればいいんだよ。実際に今やってみてくれ!」
「ほ、ほんとか?」
まだ進藤の言葉を信用しきれないシルバ。とりあえず入り口を閉め、ズボンをおろしトイレにゆっくり腰かけた。
「・・・っ!?温かい!?おしりがほんのり暖かいぞ!?」
「いつでもその温かさだからね!気持ちいいだろ?」
「ああ!なんだかとても居心地がいい気分だ。これが本当にトイレなんて信じられないよ。本当にここで用を足してもいいのかい!?」
「もちろんだとも!そのために作ったんだからね!用を足したら壁にボタンがついてるリモコンが見えると思うけどそこの『おしり』って書いてあるボタンを押してくれないか?」
「ああ、これかわかった・・・。よし、じゃあ押すぞ?」
用を終えたシルバが壁に取り付けてあるウォシュレットのリモコンのおしりのボタンを軽く押した。
ウィイイイン・・・・
便器の中でノズルが伸びてきてシルバのお尻に狙いを定めている。
「なんだこの音は・・・?何か動き出したのか・・・?」
ウォシュレットの動作音を聞いてシルバが周りをキョロキョロする。しかし次の瞬間伸びたノズルから勢いよく洗浄液がシルバのお尻に吹き出された。
「・・・っ!?ひゃぁ!!なんだこれは!?水が噴き出したぞ!?」
今まで感じたことのない感覚に驚くシルバ。
「大丈夫、それでシルバのお尻を洗っているんだよ。最初はビックリするかもしれないけど慣れれば気持ちの良いものだよ!」
「ま、まあ確かに・・・。最初は驚いたが、なんだか癖になりそうだ」
「でしょ?そして次は『乾燥』のボタンを押してくれ!」
「乾燥・・・?ああ、これか」
進藤に言われるままシルバは乾燥のボタンを押す。
ブォオオン・・・
心地いい温風がシルバのお尻を乾かしていく。
「おぉ・・・!なんということだ!暖かい風が吹いているぞ!」
「それでシルバの洗ったお尻を乾かしているんだよ!濡れた感覚がなくなればもう大丈夫だよ!」
「これもこれで気持ちがいいな!!最高だよ!」
トイレの中からシルバの興奮した声が聞こえてくる。
「この中で一体何が起きてるのシルバは今トイレをしているのよね?」
「お父さん大丈夫なの・・・!?」
シルバの声を聞いていたセリカとアイリスが不思議そうな表情をしている。
たしかに会話の内容だけ聞けばこの部屋の中で水が噴き出して暖かい風が吹き出しているのである。今までのボットントイレしか知らなければ想像もつかないだろう。
「大丈夫だよ!アイリス達も実際にこのトイレを使ってみればシルバの言っている意味がわかるさ」
「そ、そうなの・・??」
トイレの中から流れる音が聞こえた。感想を終えたシルバが立ち上がったのだろう。
「進藤・・・!トイレの中身がどこかに消えてしまったぞ!?これで良いのか!?」
「ああ、ちゃんと流れたんだね。それで大丈夫だよ!」
「そうか・・・」
少ししてトイレのドアが開いた。そこにはご満悦な様子のシルバがいた。
「いやーすっきりしたよ!まさかトイレをしただけでこんな気持ちのいい気分になるとは思いもしなかったよ!ハハハ!」
「お父さん大丈夫・・・?」
「ああ!もちろんだとも!アイリスもセリカも早く使ってみると良いよ!」
「進藤お兄ちゃんの言った通りだね!トイレを終わった人がこんな気持ちよさそうな顔をしてるなんてそれだけでビックリだよ!」
アイリスがシルバの反応を見て嬉しそうに進藤に言った。
「だから言っただろ?トイレをリラックスできる空間にして見せるって。それにこれは俺だけの力じゃないよ」
「え・・・?」
「このシルバの笑顔は俺とアイリスで作ったものだよ。アイリスも手伝ってくれたんだからこのシルバの笑顔が見れたんだよ」
「私・・・?私がお父さんを笑顔に出来たの?」
「そうかアイリスも進藤と一緒に頑張ってくれたんだな!ありがとうな!」
シルバは嬉しそうにアイリスに礼を言った。
「ううん!喜んでもらえて良かったよ!えへへ!」
礼を言われたアイリスも嬉しそうに返した。




