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召喚、輪廻、そして世界最強  作者: 赤見 煌
最弱の召喚者は死後最強の英雄に成り上がる
7/27

復活

階段を上り切り、神殿の外まで行くと、少し長めの綺麗な青色の髪が目立つ者がいた。ラファルだ。



ハクタとミカルは近づいていく。ミカルが歩くのが速いため、ハクタは早足で後ろをついて行く。


踏みしめる地面は雲海だが、歩いている限りは普通の大地と何も変わらない。




「ミカルから、大体の話は聞いたようだな」


ラファルがハクタに話しかける。



「魂と肉体、個性についてはよく分かった」


「今君は魂だけで天界にいる、ということもか?」



ハクタは軽く頷き、

「聞いた」

と短く返事をする。



「なら、話が早い。実はな、私は今下界に降りて君の死体を回収してきたんだ。それを、また君の肉体にしようと思ってな。だが、一つ問題が発生した。」


「と言うと」


「死体の損傷が激しすぎた」


そう言ってラファルは、足元に肉塊を出現させた。


それは、幾つかの部分に別れ、血みどろで原型の名残を全く残していなかった。



ーーこれが、俺?



ハクタの胃から苦く酸っぱいものが込み上げてくる。喉で無理矢理に押し戻そうとしたが、無理だった。



見てくれも何もない。その場で膝まづきハクタは思い切り吐露した。



それをみて、ミカルは呆れたように、


「強くなって、あの街を守るんじゃなかったのか?今度は、貴様がこれを作り出す側になるかもしれないんだぞ」


と醜い肉塊を指さす。



「まぁいい。話を進めるぞ」


ラファルが言う。



「本当は、貴様の死体をそのまま修復して魂を降ろそうと考えていた。だが、見てわかると思うが、色々と足りない部分がある。そこで、一部は我々が適当に補い、肉体を創ることにするが、異論はないな?」


「それでいいから、早くしてくれ。」



ハクタが苦しげに返事をする。



ラファルは軽く頷き、両手を肉塊にかざした。その手から、淡く半透明の蒼色の光が柔らかく出る。


それは、醜い塊を、見る見るうちに人型へと変えていく。


これはこれでグロテスクな光景だったが、目の前で繰り広げられる奇跡に、ハクタは目を離せない。



やがて。


「出来たぞ」

とラファルが言った時には、足元にハクタが寝ていた。


背格好や肌の色までが再現されているその身体には、もちろん傷跡や穴などはない。



「すげぇ……」


目を見開き、信じられないという表情をするハクタ。



それもそうだろう。目の前でぐちゃぐちゃの死体が、綺麗な肉体に再生されたのだ。まるで、早送りのビデオを見ているかのように。


もちろん、指をふって机とイスを出したりしまったりするのも凄かったが。



「では、貴様の魂をこちらに移すぞ。」


ラファルはそう言って、ハクタの頭をガッと鷲掴みにする。


「えっ、ちょまっ……」


ーー心の準備とか気持ちの整理とか、そういうものがまだなんですけどぉぉぉ…



ハクタの中で懸命に叫ばれた声は、もちろん届かなく。



次の瞬間、ハクタは寝ていた。



「終わったぞ。異常はないか?」


ラファルがこちらを覗き込むようにして聞く。



「特になしだ。」


そう言いながら、ハクタは自分の身体を見て触る。


触感的には出過ぎた所も足りないところもない。小さい頃にやった傷跡や、ホクロの位置までもが完璧に再現されている。股間の形やサイズまでが一部の狂いなく復活していた。



ーー神様、恐るべし


自分の大切な息子を抑えながら、ハクタは戦々恐々とする。



ラファルはやり切った満足感も出し尽くした疲労感も顔に浮かべず、ただただ無表情で

「そうか」

とだけ短く呟き、


「じゃあ、立ち上がってみろ」


と言う。



ハクタは身体を起こして、ゆっくりと立った。身体のどこかがぱっくりと割れて血が吹き出したり、久しぶりに動いた関節が錆び付いてギシギシとなったりすることも無い。


ただ一つだけ、違和感を覚えた。


「身体がやけに重くないか?」


ラファルに疑問をぶつける。



「ここの重力は下界の三倍だからな。そう思うのも当然だ」


「三倍!」


ハクタは驚きの声を上げ、三倍ってこんなもんかぁとこぼしながら跳ねたり腕を降ったりする。



そのハクタを、ミカルとラファルがじっと見ていることには、気づかずに。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







「実際の戦闘訓練をするのは、ガブリルだ」


ラファルが言う。


「今貴様の武器を造っているが、そろそろ着くはずだ」


「俺の武器?」


ミカルが答える。


「我々が見立てた所、標準的な剣が一番貴様には合うはずだ。ガブリルが一級品を鍛えてくるから、期待していろ」



心無しか、神様達の言葉使いがどことなく優しくなった気がする。



「その間に、貴様には魔法を使えるようになってもらう」



「今とんでもないことが聞こえたのは、まだ俺の耳が上手く機能していないからか?」



「ある程度の適合性があれば、魔法は難しくない。ただ、魔法で創り出したい何かを、集中して強く想えばいいだけだ。無論、作るものの大きさや強さによって有する時間は変わるがな」



「レアは何だか色々と詠唱していたような覚えがあるんだが」


「ああするのが彼女にとって一番集中出来るのだろう」


「続々と出現していた魔法陣は?」


「あれは、自分の身体の中で収まりきらない魔力を溜める時に自然と発生する。ため池みたいなものだ。」


そんなもんなのかぁと少し落胆するハクタ。自分の中で魔法とは、「闇より深き黒に染められし〜」みたいなのを期待していた。


「言っておくが、魔法陣が発生する程に魔法との適合性が高いのは今だとあの少女のみだ」


「マジですか」


「あの少女は、あの街の騎士団団長であり、王を設けないという政治体制を掲げるあの街でリーダー的存在を担う文武両道の人だ。人間の中では間違いなく極めてあらゆる面で優れている」


「俺の初恋さよならァ!」



そんな人相手に恋なんて実る訳ない。



ガックリと首を折るハクタ。「今は魔法の練習をしろ」 という感情の一切がない神様の声で、気が引き締まる。





「創りたいものを、集中して強く想う……」


ハクタは目を閉じ、頭の中で直径50センチ程の丸い盾を想像した。静かに両手を前に突き出し、脳裏には成功のイメージを強く持つ。



すると。



ブワッと身体の中で何かが動き、音もなくそこに想像通りの盾が生まれた。何故か見た目が真っ黒だったが。


盾はあっという間に消えてしまったが、確かにそこに生まれた。



驚きに目を剥くハクタ。自分の両手を食い入るように見るが、何も変わってはいない。



「繰り返し練習すれば、もっと大きいものや強度のあるものも素早く創れるようになる」


ラファルが無機質な声で言う。


「創ったものを永続的にすることは出来ないのか?」


「創り出したものを保つのは、魔力の消費が激しすぎて無理だろう。その点、貴様が模倣した個性、超結界は、一度も結界陣を作ってしまえば、二度日が沈むか、結界のダメージが限界を超えるか、超結界の個性を持つ者が解除しない限り永久にもつ」


「二度日が沈むまではってのは何故なんだ?」


「そういう個性だからだ。」


「溜めるのにかかる時間は?」


「創る大きさや強度による。たしか、少女が教会を覆うのにかかった時間は5分弱。」


「割とかかるんだな」


「強度がとてつもなく高かったからな。」


「そんだけ守りたいって気持ちが強かったってことか……」



ーー次は、絶対に誰も傷つけさせねぇ



瞳に強烈な炎が映る。死という劇的な経験が産ませた炎だった。



「ガブリルが来たようだな」


ミカルが言う。次の瞬間には目の前にガブリルがいるが、もう驚かない。



「わざわざ俺の武器を造って貰ったみたいで、申し訳ない」


ハクタが軽い口調で続ける。だが、期待と不安感と緊張感がごちゃ混ぜになり、心臓は高々と脈打つ。


「でもって、俺の武器を見せてもらってもいいですか?」


「無論。貴様のために打ったのだからな」


そう言ってガブリルが差し出して来たのは。



血のような紅一色に芯まで染まった、手のひらサイズの美しい宝石だった。

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