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召喚、輪廻、そして世界最強  作者: 赤見 煌
アフターストーリー
22/27

再び、天界

お久しぶりです。人によっては蛇足のアフターです。



ーーここは、どこだ?



意識が、目覚める。



少年は寝そべっていた体をぐっと起こした。



踏みしめる大地は、どこまでも続く雲海。全てを覆う黄金の天空は、あまりの雄大さ故に、孤高さえも感じさせる。




それらとてもこの世の景色とは思えぬ情景に囲まれ、呆然と佇む少年は、徐々に記憶を取り戻していく。



(俺の名前はシンザキハクタ。ここは、確か天界だ。てことは俺は……)



ーー俺は、ちゃんと死ねたのか



ハクタはホッと息を付く。酷く間違った安堵かもしれないが、心の底からの感情だった。



(まずするべくは、状況確認だな)



ハクタは自分の肉体を点検する。生まれた時の姿、すなわち全裸なのは前に天界に来た時と同じ。左腕に嵌められていた黒い義手も外されていた。アダ グロサの紅い宝石も手元に無い。装備品はゼロのようだ。


立ち上がって、軽く屈伸運動。首をグルグルと回し、心持ち血流を良くする。体が妙に重いのは、重力が三倍だからだろう。


ーーということは、これは見せかけじゃなくて俺の肉体なのか



また下界に降りて、神様が取ってきてくれたのだろうか。



聞きたいことが沢山ある。まずは、自分が死んだあとの下界のこと。それから、自分のこと。



「とりあえず、神様御三方を探しますか」



目指すは、遠くに小さく見えるもの。初めてここに来た時、何も分からずに目指した、入口が巨大な三本柱に支えられ、大理石が豪勢に使われた神殿だ。



ハクタは、ゆっくりと歩き出す。




























「意外と、遠いぜ」


ハクタは神殿に到着した。小一時間ほどかかっただろうか。かなりスローペースで歩いたこともひとつの要因だ。だが、最大の原因は他にある。



それは、ハクタが鼻歌交じりに歩き出して約半時の事だった。見覚えのある、ハクタが愛して止まない日本人のソウル文化、


ーー「温泉」があったのだ。



ハクタは、道中急ぐことも無い、これ幸い、とじっくりと湯浴みした。上がってからバスタオルがないことに気がついたが、「風操」をドライヤー代わりにして全身を乾かした。



その時に、個性の確認もした。「模倣」は使う対象がいなかったため、試せなかったが、「黒魔」以外の個性は問題なく使えた。




そんなこんなで、神殿到着にそれなりの時間を要した訳だ。




「失礼しま〜す」



ハクタは一声かけて、神殿に入っていく。そのこだまする自分の声が、ぺたぺたと響く足音が、ひんやりとした大理石の感覚が懐かしい。



そして、彼らは、ふっと現れた。



「……その登場の仕方、心臓に悪いから辞めてくれよ。俺が瞬きしてる時わざと狙ってんのか?」



「勇んで下界に戻り、本当に全てを救いあげたと思えば、すぐに他を守るために自己犠牲とは、貴様にはつくづく驚かされる」



「その全くこっちの話を聞かないで話題ぶっ込んでくるのも、初めて話した時を思い出すよ」




忘れもしない、神様三人が、ハクタの前で堂々と立っていた。
















「服、ありがとうな」


「礼を言うようなことではない」




ハクタと三人の神々は、今テーブルを囲んで椅子に座って話していた。



長方形のテーブルは、その大きさ縦五メートル横三メートル程だろうか。椅子は、背もたれが頭の上まで伸びているのが嬉しい。どちらも木製で出来ているように見える。この神殿の中の部屋に、とてもマッチしている、とハクタは思った。




「んで、俺の状況はどういう感じなんだ?まずこの肉体は、下界から取ってきたのか?」



ガブリルが、答える。


「いや、そうではない。複製の魔術を使って、貴様の死体を複製して持ってきた。そして、魂を埋め込み直したのだ」



「そんな魔術まであるのか。」



ふーんという納得顔でハクタはうなづく。そして、質問を丁寧に続けていく。



「俺が死んだ後、下界はどうなったんだ?」



「まず、あの場にいた四人が、貴様の死体を夜のうちに教会の地下に埋葬した。そして、次の日の朝、貴様は夜のうちに旅だった、行く先は誰も知らない、と金髪の娘から発表された。」



「なるほど。ちなみに、俺が死んでから今何日経ってんだ?」



「一週間だ。」



ハクタは、また、ふーんと聞き流そうとした。だが、



「おいちょっと待て、一週間だと?」



「そうだが、何か問題があるのか?」



「問題はあるよ、大ありだよ!」



ハクタが顔色を変える。そして、勢いよく立ち上がり、一番近くにいたラファルに詰め寄った。



「人の魂が、天界に居られるのは、一週間なんだろ!?今日でアウトじゃねぇか!」



「落ち着け。そんなに取り乱して、貴様らしくもない。貴様の魂は、人ではなく我々神と同等のものにした。」



「今サラッととんでもないことが聞こえたのは、俺の耳がまだ上手く機能してないからなのか?」



このくだり前もやったなぁ、とハクタは思う。



「その事も含め、貴様には今後のことで話がある。」



「聞こうじゃないの」



ハクタは椅子に深く座り直し、背筋を伸ばした。



一泊置いて、ガブリルが口を開く。



「貴様は、地獄行きが決まった状態で下界に戻った。だが、それはあの街を度重なる災厄から守り抜いたことで帳消しとなった」



「それは予想してた。大事な話はここからなんだろ?」



「そうだ。貴様は、自身の左腕に魔女が憑依している事に気が付き、死ぬ事で道連れにしたな」



「良かれと思ってたんだが、もしかしてまずかったか?地獄に行けと言うなら、行くけど……」



「逆だ」



「逆?」




へっ?という疑問符がハクタの顔に張り付く。ガブリルは、話を進めた。




「魔女は、七百年前に剣聖に体を六つに切り裂かれても死ななかった。そして、その分離した身の一つ一つでで自らの個性『支依』を発動させ、生きながらえていた」




「『支依』ってのは、具体的にどんな個性なんだ?」



「魂を持つ生物に、自らの魂が触れた時、その生物に憑依出来るという個性だ。憑依された対象は、魔女がその身にいる限り不老不死だ。また、個人差はあるが憑依の時間が長くなれば、魔女は憑依対象の存在そのものを乗っ取ることさえも出来る」




「それってつまり、半永久的に生きられるってことか」




「そうだ。そして厄介なことに、剣聖が斬り裂いた時、魔女は恐るべき生命力で生き残って、バラバラの体全てを魂を六分割して蘇らせたのだ。結果として、魔女は当時の自分の最も優秀だった部下六人に憑依し、生き残った。憑依したのは、妖精に巨人、龍に大蛇、魔人に人。彼らはそれぞれ自分の種族で、魔女に忠誠を誓った者同士で集まっていた。そして、時には実力至上主義で世代交代も繰り返しながら、現在まで破壊活動をしてきた」




ガブリルが一気に話す。




「そうして七つに分かれた災厄は、七百年もの間、破壊と略奪と殺戮を繰り返してきた。だが、貴様はその一つを討ったのだ」



「これは、およそ下界で成せる最高の功績と言える」



「よって、貴様のどんな望みでも一つ叶えることを決定済みだ」





ーーどんな、ことでも?



ハクタは、想像にもしなかった展開に目を白黒させた。



「どんなことでもってのは、なんだっていいのか?」


とりあえず何か言わなくては、と口を開く。



「我々三神にできる範囲なら、どんな望みにも応える」




小さい頃から、どんなことでも叶うならどうする?

という想像はすることが多かった。


だが、実際にどんなことでも叶うとなると、悩んでしまう。




なんてことは、なかった。





「なら、俺を、元いた世界に戻してくれないか?空間魔術とやらでさ」




ハクタは、大して時間もかけずにすぐに結論を出した。


この異世界で、楽しいことも苦しいこともあった。やり残したことがないと言えば、嘘になる。


だが、今は、家族に会いたかった。きっと心配もしているだろう。




しかし、そうは上手く問屋が下ろさない。



「無理だ」



ミカルが、淡白な口調で否定した。



「空間魔術は、術者が知っている場所への転移のみが可能だ。我々は、貴様の元いた世界のことは、残念だが知らない」



ハクタが疑問の声を投げる間もなく、理論的な説明がなされる。



「じゃ、じゃあ俺はもう戻れないのか?」



焦った声が出る。一度表に出したことで、戻りたい、という自分の気持ちの大きさを自覚したのだ。



「方法が、ないことは無い」



対象的な落ち着いた声での返答は、希望をもたらす。



「どうすれば、いいんだ」


「貴様が、空間魔術を習得すればいい」


気ままに更新なので、時々覗いてくれると嬉しいです。

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