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召喚、輪廻、そして世界最強  作者: 赤見 煌
最弱の召喚者は死後最強の英雄に成り上がる
14/27

逆襲



ーークソッタレが


ハクタは心の中で毒づく。



一回目の生での襲撃が召喚から三時間だったので、今回もそうだと勝手に思い込んでいた。


だが、蓋を開けてみればどうだ。一時間ちょっとで始まった。だいたい、一回目も二回目も同じだ、という保証はどこにもないのだ。



ーークソッタレが


ハクタは再び毒づく。それは、理不尽な現実を恨んでいるのではない。油断をしていた自分に対する怒りだ。



これで間に合わなくて死者が一人でも出れば、どうするというのだ?やり直しはもう終わっているのだぞ?


そんなマイナスの声がハクタの頭をこだまする。







ハクタは現在、全力で家の屋根を、文字通りに飛ぶように駆けていた。こちらの方が視界が広がるし、何より地上は混雑しているからだ。



土煙を上げる不穏な空気の城壁付近まではあと少し。だが、戦いがどこで起こっているのかが分からない。



どうするどうする、と焦るハクタ。その時、白い半円球状の物が、右手側に突然現れたのを見た。



ーーあれは、レアの結界か!?



進路を右三十度急変更。踏みこらえた屋根がミシリと言ってヒビが入るが、気にしてられない。



そして、結界に迫った時。



ハクタは、見た。




狂ったように嗤いながら、淡白い美しい結界に、ナイフを連打する男を。


一度目の生で、レアを殺めた男を。自分を嬲り殺した男を。





ハクタは思い切り屋根の上からジャンプする。男との約十メートルの距離を一瞬で詰める。



「どきやがれーーっ!!!!!」



腹の底から咆哮し、土色の顔で振り向く男のその顔を、思い切り右拳で殴り飛ばす。男は、二十メートル程吹き飛び、城壁に埋まった。ハクタは容赦ない。左手を一振し、何十という魔法弾で追撃する。それらは一発たりとも目標を外さずに、あらゆる角度から標的を強襲した。



そのあまりの威力と弾量に、城壁は崩落する。ゴゴゴゴゴッという音と共に、憎き敵は瓦礫に埋まった。



普通なら間違いなく命はないが、ハクタは気を緩めない。自分ならば、生き残る自信があるからだ。



右手にアダ グロサを召喚する。そして、索敵の気配を研ぎ澄ませたまま、ゆっくりと後ろを振り返った。



そこには、結界を隔て、夢にまで見た、守ると誓った彼女の姿が有った。



溢れ出る太陽の金髪。薔薇のつぼみの唇。朱に染まる頬。湖を映した煌めく水色の瞳。



「レア……」



ハクタは、噛み締めるように、彼女の名前を呼ぶ。



レアは一つ息を飲む。緊張と困惑でかなり混乱しているようだ。可憐で震える唇をおそるおそる、という様子で開く。



「あなたは、助けてくれたのね?ありがとう」



ーーやっと、会話出来た



一度目の生の時、この鈴が鳴るような声の伝えるものを知りたいと、何度願ったことだろう。



ハクタの胸に、万感の想いがじんわりと浸透していく。と同時に、これを何としても守るのだ、という堅い決意がさらに強固になった。



だが、その前に聞くべきことがあった。



「レア。今のところ、死傷者は……?」


「軽傷した衛兵はいるけど、皆無事よ」


「よかった」



ハクタはホッと胸を撫で下ろす。これでも死人でも出ていたら、今すぐにでも自分の首を切っていたかもしれない。



「よしレア。今すぐにこの場の全員で街に行くんだ。ここは俺が見張るから」


「いいえ。二度もあなたに迷惑はかけられない。私達もここに残ります。」


「いや、大丈夫だ。街でもレアを呼んでくるって言っちゃったし……」



結界越しで、堂々巡りの予感の会話が始まった。互いに相手を案じているからこそ、正解なんてものは見つかりそうにない。



だが、結果的には、会話は直ぐに止まる。なぜなら、ゴオオオンという爆音と共に、瓦礫の城壁の中から男が立ち上がったからだ。



恐るべきことに、男は服こそボロボロになっているものの、肉体には擦り傷かすり傷の負傷とも呼べない程度の戦傷しかない。ハクタに思い切り殴られた顔も、普通なら首からねじれ切れ吹き飛ぶところだか、骨が折れることも無く愉悦そうに嗤っていた。



「いやいやいやいや。久しいよボクが殴られるなんてできればもっ……」


「ーー死ねぇ!!」



男が不気味に嗤い話しているのを遮るように、ハクタが魔法弾で一斉攻撃を仕掛ける。何十発もの弾幕は、目標へ到達する前に互いに何回もぶつかり弾け合うことで、予測不能の動きで敵に迫る。



だが、


「ーーその殺意。本当にすぅばらぁしい!!!」



男は避けることも無く、さらに愉しそうに奇声を上げながら、全てを両手に一本ずつ握られた二本のナイフで斬り落としていく。その腕の動きは柔軟で鋭く、その細い腕のどこにそんな力が、と問いたくなるような腕力があった。




ーーレアと戦ってた時は、使ってたのは一本だったはず



あの時は、まだ遊び半分だったのかと、苦々しくハクタは唇を噛む。



男はニヤニヤ嗤いに磨きがかかり、今では見ているだけで死にたくなるような不気味さと狂乱があった。男はその細々と節くれだった長い人差し指を、ハクタに向かって伸ばす。



「ボクはね!そこのね!キミとふたりだけで遊びたいよ!殺し合いたいよ!だから!はやく虫けらは消えてよ!じゃないと、殺すよ!」



「ーーレア。今すぐここから全員で逃げろ。言っちゃ悪いが、レア達じゃ太刀打ち出来ねえ」


「そんなことはできない!あなたがそしたら……」


ハクタは、レアの言葉を遮るように、無言で黒コートの懐からアビリティ・プレートを取り出す。そして、その能力値のみを表示させ、レアにずいと見せた。



「えっ……?」




レアの元々大きな目が、さらに丸く大きく見開かれる。顔に驚愕が張り付き、畏怖の念を持っているのが見て取れる。



レアは、ハクタの人外のアビリティの高さを目にし、その強さを理解した。同時に、ハクタの拳襲をまともに食らって、平然と嗤う男が、化け物であることもまた。



「……悔しいですが、この場はあなたに任せます。」



レアの背後がざわつく。何人かは異を唱えようとしたようだ。しかし、レアの横顔に張り付く強烈な無念に、誰もが息を飲み口を噤む。



「話はついたかな?ついたとも!ついたよね!じゃあ早く消えてよ!」



男がケタケタと嗤う。その口から見える犬歯は異常に長く見え、黄ばんでいた。



「あなたに、剣聖の御加護があらんことを。どうか、ご無事で!」



レアはハクタに一声かけて、結界を解き、街に撤退していく。きっと後ろ髪を引かれる想いなのだろう。何度も振り返っては、悔しそうに駆けていく。




「ーーこれでいいんだろう?この化け物が」



ハクタが怒りに震える声で男を威圧する。真っ直ぐに向けた剣先は、明確な敵意と冷酷なまでの凄絶な殺気で黒く煌めく。



「化け物とはいうよね!ボクにはちゃんと肩書きも名前もあるのに!ボクはね……」



ここで男は一度言葉を切った。そして、先程までのどこかふざけたような雰囲気は一変させ、



「魔女軍序列第六位、タナトス・ハデルネロス」



と、名乗ったのであった。








殺伐とした空気。今にも始まりそうな闘いに、互いがベットするのはその命。



空気は互いの殺気に震え、普通の人間ならそれだけで卒倒してしまうほどの濃密さで体に絡みつく。




ーー殺してやる



ハクタは口の中で自分の感情を噛み砕く。精神は集中の弓が引き絞られ、矢が放つのを今か今かと待ち構えている。




死闘の火蓋は、切られようとしていた。

次回更新は明日の十九時。


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