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召喚、輪廻、そして世界最強  作者: 赤見 煌
最弱の召喚者は死後最強の英雄に成り上がる
11/27

師弟対決



ハクタの黒い結界がついに限界を迎えたようだ。ピシリとヒビが入り、一泊置いて粉々に砕けた。



だが、黒い檻は、充分に役割を果たしたと言えるだろう。何せ、残敵が一人になるまで牢獄していたのだから。



檻を四苦八苦しながらも破ったガブリルは、ゆっくりとその場で首を左右に振る。その目は、自分達三神の内の二人を一方的な展開で屠った少年を捕らえる。緑の綺麗な双眸の奥底から、隠しきれない激情が覗いている。それは一体、怒りか、驚愕か、それとも別の何かなのか。



「なぁガブリル」


ハクタは、普通の人間ならその場で崩れ落ちてしまうほどの強烈な殺気を濃密に受けるが、飄々と話しかける。



「魔法と翼、使えよ。でないと、さっきと同じように殺られて終わりだ」



ハクタは、あろう事か。神に情けをかけた。だが、その言葉は傲慢でも過信でも無い。事実だ。



ガブリル自身もそのことは分かっていた。


ミカルは、近接戦闘をし、パワー、スピード両方で圧倒された。


ラファルは、魔法による遠距離戦闘で、一撃どころか近づくことさえも許されなかった。



ガブリルもどう策を凝らそうとも、彼らの二の舞になるのは確かだ。



「……人間相手に容赦されるのは遺憾だが、甘えさせてもらおう」



ガブリルが苦渋の判断を下す。その背から、光り輝く白い翼が現れる。両翼合わせて二メートルはあるだろうか。



「行くぞ」



先程とは段違いの凄絶な殺気がハクタに叩きつけられる。物理的重ささえも感じさせるそれに、ハクタの肌は粟立つ。



初撃は、ガブリルの横なぎの拳だった。ハクタの意識の隙間を縫うように接近して来て、その顔を狙う。



ーーはぇぇっ!!



振り抜く拳撃の速さはさっきまでの神々と変わらない。だが、移動速度が桁違いだった。その背中から顔を覗かせる逞しい翼が、ガブリルの起動力を格段に上げているのだ。



ハクタも負けじと応戦する。次々と繰り出される嵐のような攻撃を魔法の盾でいなしながら、相手の肉体を抉りとるように剣を捻り込む。



ガブリルはそれを腕で下からカチ上げ、空いたみぞおちに下段蹴りを叩き込む。ハクタは咄嗟に脛で受け流す。間髪入れずに、額に拳が迫る。寸でのところで、その間に黒剣を入れてその腹で受け止める。



互いに譲らない息を呑む攻防が続く。



先に距離を置いたのは、ガブリルだった。翼を強く一振りし、遥か上空に舞い上がったのだ。その余風で地上には力を抜けば攫われそうな程の強風が吹き荒れる。



足を強く踏ん張り耐えたハクタは、首を上げ、上空から雨あられのように白く輝く魔法弾が飛来してくるのを確認した。



咄嗟に魔法の盾で防御。その場を飛び退き、魔法弾で迎撃する。



漆黒と光白の閃光が入り交じり、幾条もの軌跡を残し、互いを撃ち落とす。相手を穿つために全力を尽くす怒涛の物量と物量の押し合いが天空を彩る。



コンマ一秒のミスさえも許されない極限の死闘。その一撃を、その刹那を生き抜く度に戦況は激化の一途を辿り、全ての動きがさらに加速していく。



ここでハクタが動く。自らが操る弾幕を追い越す勢いで、上空へと飛び出したのだ。



「血迷ったか」


ガブリルの無機質な瞳が僅かだが見開かれる。そこには、ハクタの正気を疑う色が宿っていた。



それもそうだろう。翼のあるガブリルと空中での自由が限られるハクタでは、どちらに地の利があるかは一目瞭然。



ガブリルは、一陣の風となり突貫してくるハクタに、神の象徴であり、この場での圧倒的アドバンテージである翼を存分に使い、間合いを自分のものとする。



「はぁぁぁぁぁ!!」



感情的な声がガブリルから迸る。それほどまでに、ハクタとの闘いに本気なのだ。



烈帛の気合いの声と共に、ガブリルがかかと落としをハクタの頭天目掛けてたたき落とす。ハクタは、漆黒の盾で防御を試みるが、神の一撃は難なくそれを突き破った。



「なぁァっ!?」



ハクタの目が驚きに見開かれる。左手の手の平を割り込ませることで頭への直撃は避けたが、それでもダメージは大きい。



脳を直接揺さぶられているような衝撃に平衡感覚が失われる。空中でのそれは、ハクタに決定的な隙を作らせた。



(不味いっ!!)



そう思った時には時すでに遅し。ゼロ距離でガブリルが渾身の魔法光線を放つ。純白が問答無用にハクタを呑み込み、大地を盛大に巻き上げながら轟音と共にキノコ雲を上げた。



「やったか」



ガブリルは確信する。あの砲撃は絶対に避けられないし、受けたが最後身体が散り散りになる程の絶大な威力を持たせた。




だが、その期待は裏切られる。全ての粉塵が晴れ、視界が明瞭になった時、ハクタはそこで立ち上がっていたのだ。



ハクタの全身は血飛沫を上げ、紅蓮だ。左腕は肩口から先が消し飛んでいる。内臓にも相当な衝撃があったようで、盛大に吐血した。


満身創痍という言葉でも軽く感じられるほどボロボロの状態。だが、確かにそこにハクタは立ち、その残された隻腕は剣を握りしめ、目は勝利に飢えてギラついた光を宿す。




ーー馬鹿な



ガブリルは我が目を疑う。どうやってあの超威力の嵐の中を生き抜いたのか分からない。



それを可能にしたのは、ハクタの生存本能だ。何十、何百という死線を辛くも生き残り続け、磨き抜かれたそれは、あの状況下で出来るベストを尽くした。既に使えなくなった左腕を犠牲にしながら、僅かな希望を引き寄せるために魔法で迎撃と防御をしたのだ。



その結果生み出された僅かな空間にハクタは身体を滑り込ませることで、五体満足とはいかなくとも命は取り留めたのだ。





そして、手に入れたのは、生存本能だけではない。





敵を殺し、自分が生き残る、という殺戮本能もまたハクタは得ていた。




ハクタは再び何十もの黒き弾丸で反撃の狼煙を上げる。その威力や速さ、量や精密さが先程と変わらないことにガブリルは感心を通り越して呆れる。



ガブリルは上空から魔法で真っ向勝負で受けて立つ。戦場を白と黒が駆け抜け、ガキィンという金属と金属がぶつかったような音が何十奏にも響き渡る。




そして。ハクタは失敗した時と全く同じようにはるか天空にいる神目掛けて飛び出した。一度不首尾に終わったことを繰り返した少年に、ガブリルは厳しい視線を向ける。



「愚行を繰り返す者は、好きではない」



ガブリルは小さく呟き、一直線で突っ込んでくるハクタを冷たい目で見る。凄まじい量の互いの弾丸の中を一撃も当たらずにいるのは褒められる点だ。だが、闘いというものは勝たなくてはなんの意味もない。



「うぉぉぉおお!!」


ハクタは雄叫びを上げて剣を引く。


「無駄だ」




ガブリルは無情の声と共に、迫る少年を大地に叩き落とそうとした。



だが、ハクタは策を練っていた。




自分の右側に魔法で盾を出現。それを即席の足場として蹴りつけ、角度を急変更したのだ。



完全に直線で来るものと決めつけていたガブリルは、虚を取られる。ハクタはさらに二度三度と忍者のように自由自在に宙を舞い、勢いを付けてガブリルを強襲する。



片腕になったのにも関わらず、完璧なバランス感覚。ガブリルの首を刎ねようと振り抜かれる隻腕はあまりの速さに三重にも四重にもぶれる。



ガブリルも最初こそ虚を取られたものの、その後は文字通りの神速を持って受けて立つ。




一歩も引かない超高等戦闘。その間も途切れることなく魔法による防御、攻撃は続く。



永遠にも続きそうな互角の演舞は、二人の間に魔法弾が割り込んだことで休止符が打たれる。



ガブリルから目を離さずに素早く距離をとるハクタ。その頬は赤く上気し、髪からは汗が滴り落ちる。息も荒れ、相当疲弊しているのが人目で分かる。



ガブリルと違い空を飛べないハクタは、小さな足場を創り続けて上空百メートル程の位置をキープしていた。軽く跳ねるように揺れる様は、まるでボクサーだ。


「大したものだ」



ガブリルは本心からの賞賛を送る。


ハクタへの肉体的ダメージはとっくに限界を超えているはずだ。今すぐに意識を失って全くおかしくない。だが、動きは鈍るどころかますます俊敏になっている。


吹き飛ばされた左腕を筆頭に、全身が痛みに悲鳴を上げているはずだが、それも表情に出すことがない。



何よりも、ここまで窮地に追いやられているのにも関わらず、闘争心が欠片も衰えないことがガブリルを感心させていた。



「まだ何も終わっちゃいねぇよ」



ハクタが歯を剥き出しにして、吐血しながら唸るように言い放つ。凄絶なまでの殺気と戦意が燃え上がった。人と言うよりも、獣のような覇気に、思わずガブリルは唾を呑み込む。




おしゃべりの時間は終わりだと言わんばかりに、ハクタは再び跳躍してガブリルに迫る。



白黒の弾丸の隙間を縫いながら、緩急を付けることで読みずらい動きで攻撃するハクタ。空中戦にもだいぶ慣れてきたようで、上手く自由落下なども使いながら攻め込む。




だが、神はそう甘くない。




突然、ガブリルの右手がカッと光り輝いた。世界を白亜が支配する。思わず目を閉じるハクタ。再び目を開けた時、ガブリルの手には二メートルはあろうかと言う巨大な光剣が握られていた。




「武器の使用は許した覚えはないんだが?」


「これは魔法だ。魔法で固形物を顕現させ続けるのは確かに厳しい。だが、不可能ではない。」



チッ、と舌打ちするハクタ。武器を創られたことに苛立っているのではない。自分との保有魔力の歴然たる差を見せつけられたことに、自分では出来ないことに苛立っているのだ。



「まぁいい。やることは変わんねえ」




ハクタは超速の一閃でガブリルの首を狙う。とても手負いとは思えない動きだ。ガブリルは光剣でしっかりと受け止める。黒と白がぶつかり合い、金属音を響かせた。



ここで、ハクタの予期せぬことが起こった。ガブリルの白剣が、ハクタの黒剣とぶつかった部分でぐにゃりと曲がり、ハクタの頬を斬りさこうとしたのだ。



反射的に顔を逸らし、文字通りの目と鼻の先で避ける。ガブリルは剣を下からハクタの脇腹を狙って抉りとるように振りだす。それをハクタは剣で弾き返すが、やはりうねるようにして光剣は二段攻撃でハクタの肘を打ち付けた。




「厄介なもん創りやがってっ」



思わず悪態をつくハクタ。ぶつかってから巻き付くように曲がるせいで、防御だけでなく攻撃も遅れる。



左腕があれば、剣を持つ右手が使えなくても攻撃を続けられるのだが、ないものねだりをしても仕方ない。ハクタは回復能力こそあるものの、一から再生する力はないので、左肩の傷は塞がり始めているが、生えてきたりはしないのだ。




ーー腕がねぇなら、足だ




そう思い、蹴撃による追討を試みるが、常に足場を使って跳んでいなければならないのでそれも思うようにいかない。




予測がなんの意味を持たない超高速戦闘。互いに本能と勘と経験のみを頼りにして進む決闘の旗色は、ガブリルに良い色を見せ始めていた。




このままではジリ貧だと焦るハクタ。ガブリルの背後へと飛び上がり、魔法壁を蹴りつけ、クルクルと回転することで遠心力をたっぷりと載せた重い一刀を繰り出す。



ガブリルはこれを額の目の前で跳ね返す。また二段目がくる、と身構えるハクタ。だが、ここでハクタの頭にない動きがきた。



「!!」



いままでは剣に巻き付くような角度で曲がっていた光剣が、今度はハクタの黒刀とぶつかった部分で反射するように折れ曲がったのだ。




頭を焦りが支配していたことも相まって、反応が遅れる。マズいと思った時には、ハクタの右肺にドンという衝撃と共に光剣が深々と突き立っていた。




ガブリルは情け容赦一切無し。光剣を真直にするようにして一気にハクタの身体を貫通させた。




今度こそ殺った、とガブリルは思った。心肺機能への直接の深撃は相当効くはずだ。




しかし、今までその成長速度や強靭な精神、底なしの魔力や驚異的な肉体で何度も神の予想を超えてきたハクタは、再び、ガブリルを、常識を、限界を凌駕して見せる。




「うぉぉぉおお!!」



雄叫びを上げたのは、ハクタだ。その右肺に剣を貫通させたまま、歯を食いしばって剣を大きく振り上げる!




ガブリルの表情は驚愕に凍りつく。今目の前にいる少年には、想像を絶する程の痛みが胸を貫いているはずなのだ。仮にそれを全て耐えたとしても、呼吸がままならなくなって、身体が言うことを聞くはずもない。



(一体何がどうなっている!?)



剣が振り下ろされるまでの時間が、妙に引き伸ばされる。だが、回避行動はもう間に合わない。ガブリルの頭をこの死闘が走馬灯のように駆ける。



魔力砲。疲弊した少年。吐血。凄絶な殺気。



ガブリルの中で、バラバラだったピースが一つに固まる。そのたった一つの可能性は、非現実的だ。だが、本当にそうならば、肺への攻撃をもろともしない少年の行動にも説明がつく。



ーーまぁどっちにせよ。



私は負けた。






ハクタは烈帛の気合と共に、愛剣アダ グロサを袈裟に振り下ろす。その一太刀は、ガブリルを問答無用に一刀両断し、大地に叩き落とした。



紛れもなき致命傷。土煙を巻き上げて地上に激突したガブリルを上空からハクタは見下ろす。



ーー俺は、勝ったのか



まだ実感がないが、神を相手にハクタは勝利を納めた。




非力であり、脆弱であった少年が、力と強さへの渇望の果てに、最強となった瞬間だった。

次回更新は明日の十九時です


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