骨折り
とあるフリーゲームに影響されて書いてみました。上手く書けていると良いな。
骨折で入院したら、俺と同い年くらいの若い子が入院していた。
共同の休憩室で見た子。脚にギブスを嵌めている。まぁ、俺もギブスを嵌めているんだけれども。
その子は肩から流した黒髪で、目元がくっきりとしていて。
一目で吸い寄せられる。目が離せなくなる。そして鼓動が早くなった。
なにこれ。もしかして、俺……恋してる? 恋……しちゃった?
俺は缶コーヒーを買う。二本買った。『あたたか~い』だ。
なけなしの勇気を振り絞り、話しかける。
「何か用?」
そっけない返事。だけど、そこがまた良い。俺は缶コーヒーをその子に差し出す。
「なにこれ?」
またもつれない返事。だけど、やはりそこがまた良い。
「コーヒー。お話しない?」
「ナンパ?」
化石のような会話。乾いた風の吹く砂漠のような、それでいて暗い深海の底のような。
「暇、なんだろ?」
「……」
返事は無い。
「俺、翔太。柊翔太」
「あたしも名乗らなきゃいけないわけ?」
できればお願いします。と、俺は思うのだけど。……ダメかな?
視線は相変わらずキツイ。まるでゴミ虫を見下す感じ。
「あ、アイスの方が良かった?」
「……」
視線が氷点下。
そうか、この子はアイスコーヒーが好みか。
せっかく奢ってやったのに。このままじゃ、せっかくの『あったか~い』が『つめた~い』になってしまう。
「俺、大学生なんだ。二年生。君は?」
「そこの大学」
「何年生?」
「あんたも大学生二年なんだ?」
興味を引けた! やった、成功! 成功だ!!
「そ、そう。……俺もそこの大学に通ってるんだ!」
「意外。あたし、あんだなんて見たことなかったけど」
すみませんね、どうせ俺は目立ちませんよ。
「俺、いつもボッチだから」
「言えてる。あんた空気読めなさそう」
笑った! 笑ってくれた。いける。本当にいけるかもしれない。
「あたしは空。晴海空だよ。学部が違うのかな。私、経済学部」
「お、俺は文学部!」
「なんだ、だから知らないんだ?」
「あはは、そうかもね!」
「ええと……あんた……」
「翔太だよ。柊翔太」
「ああ、翔太ね。おっけー。あたしも空で良いよ?」
な、なんと! ここまでお近づきになれました!
だけど、これだけ可愛い子なんだ。……当然彼氏持ちだよね?
「で、でも名前呼びなんて……彼氏さんに悪くない?」
「え? そんなの居ないし」
真顔。
なんという幸運。なんという事実。俺は骨折入院の凶事に感謝したね!