詐欺師
俺の名前はフランコ。
とある会社で働いている。
有名大学をトップで卒業、
この会社でも同期では出世頭だ。
今、またでかい取引をまとめているところだ。
まとまるのも時間の問題。今週中には取引成立するだろう。
会社も取引がまとまり次第、重役のポストを用意してくれるそうだ。
順風満帆。
もちろん、そのための努力はおしまない。
そんな人生だ。
俺は高層ビルの50階の一角、そこを買い取って住んでいる。
この大都市の夜景を見ながら飲む酒はいつも美味い。仕事が上手くいっていれば尚更だ。
グラスをかたむけていると
そいつは唐突にあらわれた。
「な、なんだ!誰だお前は!」
「これは失礼。詐欺師です。」
「さ、詐欺師?それよりもどうやって部屋にはいった!?」
「いいじゃないですか。そんなこと。プロには朝飯前です。」
「詐欺師といったな?何しにきた!」
なるほど、確かに俺は金も名声も持っている
詐欺師のような職業のリストに名前が載るのも不思議はないだろう。
少し興味がわいてきた。
が、男からは予想外の返答が返ってきた。
「あなたを殺しにきました。」
そういって懐から銃をとりだす。
「この部屋、防音ですよね」
良く調べている…
俺はパニックになりながらも打開策を必死に考えた。
まともに戦っても奴の体つきをみるかぎり勝ち目はない。ましてや銃を持っている
とりあえず会話して時間をかせごう、
それにしても…詐欺師じゃなく、殺し屋の間違いじゃないか!
「待て!一体…一体だれに頼まれたんだ!?」
とりあえず会話の糸口を、と思い、問いただす。
もちろん、プロが口を割るとは思っていない。
--が
「○○会社のマルコスさんです。」
あっさり言いやがった…
そして、○○会社の…マルコス…あいつか…!
○○会社は、今回の取引がまとまると大ダメージをうけるであろう、我が社のライバル会社だ
そしてマルコスは、大学の同期で、それからずっとライバル関係である。
と言ってもお互い会話したことも数えるくらいしかないが…
「詳しくは知りませんが、マルコスさんも出世の大事な時期らしくて」
「現金で200万、全額前払いで受け取っています。」
…あいつめ!やり方が汚い!その上、俺の命が200万だと…!
…ん?全額前払いだと!?
「わたしはその世界では信用と実績がありますから」
「そうでないと私も依頼を受けないことにしていますしね」
俺は裏の世界のことなど詳しくは知らないが、この部屋にあっさり侵入してくる奴の手際をみるかぎり、腕に間違いはなさそうだ。
きっとそうなのだろう。
「じゃあ、そろそろ死んで下さい」
まったくの無表情で銃口を俺に向ける
嫌だ、死にたくない!
「ま、待て!」
「取引だ!300万払う!だから、マルコスを殺してくれ!」
無駄とは思いながらも俺は足掻いた。
すると、
「良いですよ」
……?
ええっ!?
「引き受けましょう。ただし、現金で全額前払い、それが条件です」
以前、銃口を突きつけられてはいるものの、交渉…できるのか!?
「…は、払う!」
「良いでしょう。今、お持ちですか?」
「い、今はカードしか持っていない。明日午後二時までには払う!払うからっ!」
「…どうだ?」
「よろしいでしょう。
ただ、時間と場所はこちらで決めます」
「明日、この部屋、この時間に。」
「準備できなかったら殺します。あと、一応忠告しますが、警察には…話せないでしょうね。あなたは」
本当に良く調べている。
俺も出世のために、いろいろあくどいことや、法律スレスレのことをやっている。
なるべく警察には関わりたくない。
「分かった」
奴が去った後、全身の力が抜ける。
どうやら助かったらしい。300万などはした金だ。
翌日、殺し屋は昨日と同じように同じ時間にやってきた。
俺は金を渡す。
「…確かに。では。」
それにしても、カルロスめ…自分の雇った殺し屋に逆に殺されるなど…!
想像して、少し愉快な気分になった。ざまあみろ。汚い手を使ったむくいだ…
翌日から俺は、インターネットや新聞、ニュースで、カルロス死亡の話題がないか、目を配った
だが、二日目もそんなニュースは見つからなかった…
そういえば殺す日時なんか聞いてなかったな…
まあプロだし、金だけ持って逃げることはないだろう。
それに、損はしたが、何もないならそれに越したことはない
だが、三日目の夜--
「あなたを殺しに来ました」
「ど、どういうことだ!お前には金を払っただろう!マルコスは始末したのか!?」
例の殺し屋が、無表情でまた俺の前にあらわれた
「いえ、実は…」
どうやらマルコスの奴、更に金を上積みして、もう一度俺を殺すよう命じたようだ…
「……いくらだ?」
「最初契約した額より更に倍、いただきましたので」
殺し屋は悪びれずもせずあっさりいってのけた
「…分かった。五倍だす。明日現金でわたす。そのかわり必ず奴を殺してくれ」
結論からいうと、俺もマルコスも殺されなかった。
無事昇進し、今も仕事に忙殺される日々を送っている。
あの後、何回か戻ってきては金を上積みしてやったが、俺の出せるぎりぎりの金額(貯金、だ。もうなくなった)を渡してやったのを最後に姿を見せなくなった…
最後に金を渡してから二週間後、ふいにマルコスから電話があった。
「…マルコス、か?久しぶりだな」
「ああ、元気、みたいだな。カルロス」
俺はその時、気づいた。
受話器のむこうでカルロスが「俺たち、まんまと騙されたな…」
「そのようだな」
やはりあいつは殺し屋ではなく、詐欺師、だった。
俺たちのことを調べ上げてきたのだろう。俺とマルコスの関係、仕事ぶり、そして会社、業績、…
もちろん俺たちが出せる金の額まで……
そういえば、あいつ、確かに「殺し屋」とは言ってなかったな…
俺は、デスクの上のコーヒーを飲みながら、そのにがさを味わった…
-FIN-