第5話 最初で最後の闘い 後編
「みんな、いくよ(いくか)!」
「こちらこそ!」
ホワイトクロスとレジスタンスは人数の差を気にしながら互いの顔を見回している。
その時、レジスタンス側に何人かのメンバーが「遅くなってすまない」と言いながら駆けつけてきた。
「やっと、傭兵がきたか……」
「多分、俺達……負けるオチ?」
「おそらくそうだろうな」
「ホワイトクロス、いっぱい人がいるんだもん」
「勝てっこないしな」
彼らは作戦会議に入ったであろうホワイトクロスの方を向いていたが、「俺達も作戦会議に入ろうぜ」とディオネが作戦会議を促してきたため、しぶしぶと作戦会議を始めるのであった。
*
あれから、数分が経ったあと……。
「そろそろ始めますか!」
「早くしないと夜明けがきてしまうからな」
他のメンバーがわっと闘い始めるが、少し離れたところでエーブは緊張して動けないのかもしれない。
そんな彼女を見かけたアルヌワは彼女にそっと近づく。
「エーブ、緊張してる?」
「……ハ、ハイ……」
「思いっきりやっちゃっていいわよ! ただし、さっきも言った通りになっちゃうけど、今まで修行してきたことを思い出してね!」
「師匠、ありがとうございます! できる限り、頑張ります!」
「そう、その意気よ」
彼女ら以外はすでに闘い始めていた。
他のホワイトクロスのメンバーはもちろん、エーブは武器と魔術を上手く使って相手を倒していき、ホロは伸縮性の能力を駆使しながら相手の背後から攻めていく。
あれから数時間が経過。
ホワイトクロスより人数が少ないレジスタンスは全滅し、彼らの圧倒的な強さで勝利したのであった。
*
戦いが終わり、数日後――。
「エーブ、何してるの?」
セレスがエーブに問う。
彼女が言ったあとにはホワイトクロスのメンバーが揃っていた。
彼女は寂しそうに口を開く。
「セレスにみんな……ごめんね……」
「「ごめんね……」ってどういうこと?」
カノンがエーブに問いかけると、他のメンバーが顔を見合わしていた。
「じ、実はね……私、未来に戻らないとならないの。本当はみんなとずっとここにいたかった……最初の頃に私はセレスとクラウドにこう言ったよね? 「短い間で大切な何かを探すために……」って……」
エーブは泣き始めてしまった。
それを見たメンバーは複雑そうな表情を浮かべている。
「ええ、言っていたわね」
「この期間でそれは見つけることができたのか?」
セレスとクラウドが彼女に訊いてみる。
「うん。このわずかな時間の中で「大切な何か」というのは個性的なメンバーとともに過ごすことができたことと仲間っていいねということ」
「ホロさんも?」
「ああ」
そして、エーブとホロは荷物の整理を終え、「みんな、元気でね」「みなさん、お元気で」と別れの言葉を告げた。
「またね!」
「2人とも、元気でね!」
「また、この世界に遊びに来てね!」
「……うん……」
こうして、エーブ達はその世界から未来である現代に戻ったのであった。
しかし、あのあとこの世界のこれからのことは彼女らには知らされていないことが起きているのかもしれない――。
2017/03/18 本投稿