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夏 1

 夏休み初日、早朝にメールが入った。送信主は鷹尾たかおかける

 寝ぼけ眼で送り主だけをチェックして、スマホを握ったまま二度寝。

 ああ、幸せ。


 ブロロロとエンジン音が家の前の道を通り過ぎて、すぐにとまった。

 早朝の新聞配達御苦労さま、と心の中で労う。


 ピンポーンとインターフォンが微かに聞こえた。

 そして既に起きていたらしい母に起こされる。母は少し興奮した様子で私の部屋のドアを開けるとこう言った。


「由紀ちゃん、お友達が誘いに来てくれたわよ」

「お友達ぃ?」


 遊ぶなら昼前から夜にかけてが定石な私の友達の中で、こんなに朝早くから出掛けるような人はいただろうか、いや、いない。


「人違いじゃないかな、ん?」


 タオルケットを引っ張り上げて三度寝を決め込もうとして、タオルケットが付いて来ないことに気付いた。


「由紀、出掛けるぞ」


 母のものではない声に驚いてみれば、すでにカケルになっている鷹尾が私のピンクのタオルケットを掴んでいた。


「きゃあ! 鷹尾、アンタよくも寝起きの乙女の部屋に○※▼◇~!!」


 しどけない寝姿を見られてしまったかとパジャマの襟首を掴んで掻き寄せたが、鷹尾は眉間に皺を寄せただけだった。


「あと3分で準備しろ。あ、三泊分くらいの着替えも用意しろよ」


 それだけ言うと、部屋を出ていった。

 

「なんなの、あいつ」


 全国ツアーに連れ回すとか言っていたの本気だったの?

 そういえば今日の大阪ドームから初日だったっけ。

 脳みその混乱が落ち着くまでベッドの上に座っていたら、母がクローゼットから私のピンクのキャリーバックを引っ張り出した。


「由紀ちゃんの彼氏かっこいいわね。由紀ちゃんの好きな芸能人のK’sの……何て言ったかしら。黒髪の男の子にそっくりね」


 母がうふうふしながら、タンスから服を引っ張り出しては勝手に詰めていく。どうした、何があった母、今にも踊りだしそうで怖い。


「お父さんには内緒にしておいてあげるからね。いってらっしゃい」


 語尾にハートが飛んでいるような口調でキャリーバックを押し付けられ、私は外へ追い出された。


 私の明日はどっちだ!?

 

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